この投稿は、本編「修行体験」の詳細記事です。
ゼロから年商2000万ドル(20億円)の電材商社を興したビンセント社長(仮名)が脱サラ個人事業主の筆者を雇った理由
日本の潜在顧客で難攻不落のD社(仮名)向けの売り上げを伸ばしたい。
何故なら筆者は元はD社に在籍していたから・・・
というのは当初の説明だったのですが、
筆者の営業マンとしての修行が始まると、もうひとつの理由が見えてきます。
それは、日本のお客様の接待役です
この部分でもビンセント社長の営業ノウハウは冴えわたっていました。
今回は
天才とも言われた華人の商人の営業ノウハウの一面をご紹介します。
情報をもらえるのは正式な場面だけではない
日本の大手企業の発注契約窓口や担当エンジニアと意志疎通してきたビンセント社長
彼が人づきあいに於いて徹底したことは、
「アフターファイブでの意思疎通を深める」
でした。
毎回の日本出張での手土産にも非常に気をつかいましたが、
それ以上にアフターファイブの食事のアポイントを重要視していました。
ターゲットの客先の関係者と食事のアポイントが取れないということは
彼にとっては「失敗」でした。
彼が常に狙っていたのは、次のような印象を持ってもらうこと
■ ビンセントに発注した後、あれこれと細かく指示・コメントしても最後までついてきてくれそう
■ この会社なら、トラブルが起きても上手く話し合って解決できそう
■ 日本的にちゃんと「謝る」ことができるので、わが社のエンジニアと付きあわせても良さそう
■ 同業他社もビンセントの会社を相当活用しているようだ
■ この会社は、馬国の現地情報を豊富に提供してくれている
■ 場合によっては、特別価格を提示してくれそう
■ 問題が起きた時、即座に隠さず報告してくれそう
こういった意思疎通の「感覚」は、会社の会議室の中で、静まり返った空間で話し合っているだけではつかめません。
筆者の場合、企業に入社して最初に配属された場所が営業でしたから日本のお客さん相手の食事会は全く苦になりません。
ビンセントから見て筆者の接待役としての費用対効果は予想以上だったようです。
日本人の「酒の席」
それだけではありません。
ビンセント社長が筆者に期待したのは、単に客先とうちとけるだけでなく、日本人特有の「酒の席」の会話の中から客先の本意を探ることでした。
客先と食事会をした後、客先との話のなかで筆者が何を感じ取ったか?
これを詳しく聞くことで、次の一手の参考にするのです。
ですから、彼は筆者が客先と日本語で会話することを妨げませんでした。
日本の客先が馬国に出張に来るようば場面も多々あります。
グループで出張してくると、企業のマネジメントは、何とかして社員のストレス解消をアレンジすべく頭をひねっています。
そういう場合は筆者とビンセントの出番でした。
日本版の旅行ガイドに載っていないレストランを紹介します。
お客さんが馬国で夕食の場所に困るようなことはありませんでした。
交際費を惜しまない営業
彼の年商が20億円規模として、商品の値段と費用を除けば恐らく利益は5~10%程度。
これは1億円強ぐらいの純利になったのだろうと思います。
ここから捻出される交際費は数千万円でした。これは大変な金額です。
しかし、ビンセントはこのコストを使うことを躊躇していませんでした。
金額の大きさや、当時の税法を思うと
内容によっては損金への参入ができない部分も出て来るリスクもあったでしょう。
しかし、彼は一度も交際費がかかりすぎると指摘したことはありません。
それほど、アフターファイブの客先との交流を重要視していたのです。
筆者単独で客先と社外にでて、遅くまで懇談しても、全て交際費になりました。
結果として、2005年以降、筆者は酒の飲みすぎで高血圧症になっていたのですが、それも今となっては40歳代後半の懐かしい思い出です。
お酒を飲まない接待も
日本の客先のオフィスに馬国籍の要人が駐在しているような場合、
ビンセントは私に命令して、これらの馬国人への接待をさせていました。
馬国人といっても、華人ではなくマレー系のエンジニアの場合が多く、筆者は次の条件で馬国人の接待に取り組みました。
■ 酒は一切飲まない
■ 食事には肉類は一切ダメ
この場合の筆者の接待戦略は次のとおり
1. 食事は日系の「海鮮料理」に的を絞る。(魚とエビ類はOK)
2. 酒を飲まずに楽しめる余興を紹介する
イスラム系であるからといって、回教徒専門のレストランに案内していては営業になりません。逆にお客さんが気を使うことになります。お客様は日常から離れた経験を希望するものです。
日本の海鮮料理のレストランに事前に電話して「肉料理を混ぜない」ことを確認します。当日は魚と野菜中心の食事にすれば問題ありません。
特に喜ばれるのは、海老と蟹の料理でした。
日本のタラバ蟹や伊勢海老の料理は馬国ではめったに食べられないので大変喜ばれます。