この記事は、本編「修行体験」の詳細記事です。
天才華人商人であるビンセント社長(仮名)に雇われて1年半の歳月が過ぎた頃の挿話です。
筆者が設営した横浜市内の営業出張所の効果もあり、日本の顧客からの受注が順調に伸びていました。
出張所は潤沢な資金を背景に、昼夜の区別なく忙しい日々。
ある日、社長から新たな提案が来ました。
「日本人のアシスタントを雇って出張所に勤務させよう」
「女性がいいだろう。 Japanese Girl だ! 候補者を探してくれ」
さて、馬国の会社に雇われた筆者の頭の中には「日本人を雇う」という発想はありませんでした。
ですから少し戸惑いました・・・
その後・・・ 雇うには雇ったのですが、結果として良い面と悪い面がありました。
筆者の不倫疑惑にまで発展してしまったのです。
今回はそのお話です。
日本人のアルバイトを雇ってみる
なるほど筆者も日本向け営業部長として忙しいし、事務手続きも増えてきました。アシスタントの女性が居れば助かります。
税理士さんも付いてくれたので、アルバイト給与の経理処理や源泉税のことも心配無用でした。
条件としては、全く無名の馬国の電材商社で、日本語が使えない職場。
アパートを改造しただけの事務所にアルバイトが来てくれるだろうか?
当初は不安でしたが、ネットに求人を流して見ました。
すぐに2名の申し込みがあり、さっそく近くの喫茶店で面談。
このうちひとりが真面目そうでポジティブな若い女性で、馬国にも強い興味があり、いつかはクアラルンプルに行きたいという希望をお持ちでした。この記事の「アイ・キャッチ・画像」にあるイメージ写真のようなタイプです。
英語も充分堪能だったのでアルバイトとして来てもらうことにしました。
リクルートが容易だったのは、馬国という国が日本人に好まれていたからでした。
うまくいかない
馬国の会社が日本に事務所を持って、日本人を雇った。
その結果として、良い影響と悪い影響がありました。まとめてみます。
良い影響
■ 庶務的な作業を下請けできたので営業する時間が増えた
■ 電話の応答ができる人間がひとり増えた
■ 経理処理の手間が減った
悪い影響
■ アパートを事務所にしている環境に違和感を持たれた
■ 日本的にネガティブな発想が仕事に影響した
■ 馬国からの出張者と日本人スタッフとの調整に疲れた
出張所は小綺麗なマンションではなく、一般のアパートでしたから、雇われた女性は、事務所に入った時点で違和感を感じたようです。
ただし、内装はしっかり会社のオフィスなので、当初はある程度落ち着いて机にむかって仕事をこなしていました。
慣れて来ると、やはり事務所の中に「バスタブのある風呂場」が在ることや、オフィススペースに人が寝泊まりする和室が隣接していることで、アルバイトの女性は、次第に「居ずらさ」を感じ始めます。
日本のアパートについて馬国人の男女はまったく違和感なく仕事をしていましたが、日本人が持つ「アパート」の印象はちょっと違います。
次第に「こんな場所」に違和感を示す発言がでるようになり、筆者も「やりづらさ」を感じるようになりました。
しかし、この場面でも、天才商人のビンセントの才覚が光ります。
ビンセント本人が日本に出張した際に、充分時間をとってアシスタントと2人でじっくり話し合って調整してくれたのです。
このあたりのビンセントの処世術には頭が下がります。
「日本の女がいる」ことの弊害
筆者は家族を残して横浜の事務所に住み込んでいました。
当然ですが、日本には筆者と家内の両親が住んでいます。義理の両親にも筆者が横浜で働くことになったことは説明してありました。
当然連絡先も伝えるわけです。
筆者の配慮が足りなかった事
それは、ビンセントの指示で女性のアルバイトを雇っていることを義理の母親には伝えていなかったことです。
ある日、筆者の義母が用事で事務所に電話をしてきた際、件(くだん)の女性アルバイトが電話に出ました。
アルバイトは極めて事務的に筆者への取次をしたのですが、
驚いたのは義母のほうです。
「横浜のアパート事務所に女が居る!」
このニュースが馬国にいる筆者の家内に伝わりました。
幸い、家内はこの話を真に受けませんでした。
大事にはならなかったものの、小さなオフィスで女性を雇うことの難しさを痛感する結果になりました。
少なくともアパート兼事務所の環境で女性アルバイトを雇うのはNGです。
忙しいことが全てを解決した
しかし、それでもアルバイトの女性は続けてくれました。
その理由としては
やはり、並みいる日本の大企業と金額の大きな商売が動いている事実や、ビンセント社長の超人的な客先訪問、
そして、何より、「日々忙しい」という就業環境が彼女のモチベーションを維持したのです。
会社社員も筆者も馬車馬のように働いていました。
その姿勢が、アルバイトの女性が持った事務所への「違和感」を吹き飛ばしたのです。
まっとうな商売を続けていて、そして誠実に忙しく働く人の集まりがあるときに、
その集団を見て「変な集団」と思う人はいないというわけです。