【MM2H最新】続編:東マレーシア型MM2H新条件

MM2H

この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。

昨日から7月5日のシンガポール c n a の論説記事(長編)を読み込んで、筆者の不勉強であれこれと不可解な点の答えが見つかってきました。

本日も引き続き、この論説の後編を紹介します。

前編はこちらです。念の為

後編では、次の3つの段落を並べて、西馬(半島マレーシア)と東馬(サバ・サラワク)の2つの地域に分断された MM2H の現状を深堀りしています。

この記事(後半)から、西側の連邦政府の観光大臣が、富裕層目線の条件改定に動いた背景がみえてきました。

そして、サバ州の観光大臣と連邦側の張大臣との不協和音に原因が明らかになりました。

最後に、c n a のレポーターがハードルの低いサラワク州のMM2Hを利用中の米国人家族から体験談を引き出し、さらに、サラワク州クチンの現地の飲食店経営者からも意見を聞くことで、 MM2Hプログラムや、利用者の動きについて現地の国民がどのような考えを持って見ているか解明されています。

これらは、あくまで全体の中の一例ですが、それでも馬国 MM2H の現状の傾向と課題を浮き彫りにしてくれています。

州政府と連邦側の足並みの問題など、馬国の全国紙が取り上げない「内情」をはっきり公開している c n a には、いつもながら関心します。

今回の内容は、以下のオンラインの論説記事に基づいています。

As West Malaysia woos wealthy foreigners for its MM2H residency visa, Sarawak and Sabah emerge as popular alternatives

05 Jul 2024 06:00AM  c n a  online

詳しい内容は、オンラインの論説内容を参照ください。

西マレーシアのMM2Hにも勝算がある説

西マレーシアのMM2Hの申請を扱う某代理店の社長は、サラワク版MM2Hの利用者でも、財政的余裕さえあれば半島版の最新バージョンに切り替えるかもしれないと考えています。なぜなら、多くの人が、(サラワク版MM2Hの承認条件に)西マレーシアに居住することを禁止する条項が含まれていることを知っており、それが将来的に施行される可能性があることを認識しているからです。(Chng Toh Ghee, managing director of Alter Domus, a leading agent that handles West Malaysia MM2H applications)

同社長は、最新の不動産購入要件にもかかわらず、プログラムへの問い合わせが増加したと話しています。つまり、多くの申請者は富裕層であり、そもそも西マレーシアで家を買う予定を持っていた利用者集団だといいます。

将来的にペナン、クアラルンプール、ジョホールバルの不動産市場の活況をサラワク州が認めたなら、サラワク州も当然自分たちのMM2H保持者にサラワクの不動産の購入を求めるだろうと言うのです。

「50歳以上の申請者に不動産購入を義務付けない」という現在のサラワク版MM2Hの条件は、「賃貸」生活を好む欧米の退職者に人気があります。彼らは、年金収入が有るものの貯蓄が少ないのです。

プトラジャヤが6月15日に最新の連邦版MM2Hの改定条件を発表した後、張慶信大臣は、西マレーシアの代理店が1日あたり約4~5件の問い合わせを受けている事実を根拠に、今後は月平均4~5件のMM2H申請につながるだろうと推定しています。改訂版の発表前は月3件の申請だったようです。(federal Minister of Tourism, Arts and Culture Tiong King Sing、張慶信)

張大臣は、問い合わせのほとんどがシンガポール人や海外移住を計画している経済的に強い人々からのものであると述べています。

張慶信大臣のMM2H市場分析は以下の通り:

・多くの高齢シンガポール人は、ジョホールあたりに移住を決めないと、70歳を超える頃までに数百万ドルの財産を使い果たしてしまうことを知っている

・ジョホール、クアラルンプール、ペナンに移り住んでここで「スターバックス生活」を続けるほうが、経済的に有利である

2024年1月31日時点で西マレーシアには56,000人以上のMM2H保持者(主申請者およびその扶養家族)が滞在しています。

中国人(24,765人)は参加者の44%を占め、次いで豪州(9,265人)、韓国(4,940人)、日本(4,733人)、バングラデシュ(3,604人)、英国(2,234人)と続きます。

それでも、ケポン選挙区の下院議員(国会議員)は声明の中で、かつて外国退職者に対する「広告塔」だったMM2Hが、新たに課された厳しい規制のために効果を失っていると述べています。(Kepong Member of Parliament Lim Lip Eng)

最低10年間の保持期間を伴う不動産購入の義務や、銀行預金の増加となると、隣国のタイやインドネシアの長期滞在条件と比較して競争力を失うというわけです。

同下院議員は、ある程度低い申請条件で多様な退職者や外国人駐在員を引き付けてきた以前のMM2Hスキームが、17年間で半島マレーシアの経済にRM580億の貢献をした(ことを忘れるべきではない)と述べています。

「新しいスキームが高所得者層をターゲットにするという政策転換を示している一方で、その厳しい要件が申請者のプールを大幅に狭めている」

代議員はプログラムへの関心を再活性化するために10年間の不動産保有要件を再評価するよう政府に求めました。

筆 者
筆 者

この意見に強く賛同しているのは、筆者だけではないと思います。

結論

西側のMM2Hスキームは高所得者層を引き付ける目的と、マレーシアを魅力的な退職地とするための柔軟性を提供する目的の2つをバランスよく運営するべきである。

CNAは西マレーシアのMM2Hの魅力とサラワク版との比較について張慶信大臣にコメントを求めています。

筆 者
筆 者

もとより、張大臣はMM2Hの申請資格をプラチナ・ゴールド・シルバーの3階層に分けて、富裕層でない利用者にも(シルバーの)入り口を設けたと説明していたのですが、このシルバー階層の条件が、いつの間にか不動産購入と10年保有の絶対条件付きに変貌してしまったために、シルバーグレードとしての本来の意義付けを失ってしまったのだと思います。

ただし、以前の条件だった法外な出身地での収入証明が不要になったようなので、この点は大きな前進だと言えます。

サバ州の MM2H は有望なのか?

サバ州については、筆者も全く把握していなかった政府内の不協和音があったようです。MM2Hの申請条件よりも、申請代理店のライセンスに関わる条件設定が原因でした。

張大臣は、6月初めに全てのMM2H申請代理店を対象に新たなライセンス導入を発表。これが原因で、サバ州観光文化環境大臣のクリスティーナ・リュー氏との対立を誘発したのです。

(Sabah’s Tourism, Culture and Environment Minister Christina Liew、劉靜芝)

代理店各社は5月末に連邦名義のメモを受け取り、これらの変更を事前に知らされていたようです。つまり、代理店はライセンス取得のため、最低資本金を5万リンギットから20万リンギットに引き上げ、有効な事業住所を持つことが要求されたのです。(偽造文書を提供する詐欺的な代理店行為を抑止することが目的)

代理店のライセンスに関する新しい要件は、サラワク版MM2Hを担当する小規模な代理店各社や、新たなMM2Hプログラムを準備していたサバ州のMM2H関係者に直接影響しました。

新要件を満たさなければ新しい申請を受け付けることができなくなったのです。

サラワクの観光大臣アブドゥル・カリム氏は、事前にサラワク州側との折衝が無かったことを連邦省に陳情。さらに、サバ州からの反応は特に厳しいものだったようです。

原文:While Sarawak’s tourism minister Mr Abdul Karim criticised the federal ministry for not consulting his department first, the response from Sabah was particularly scathing.

地元メディアによると、サバ州の劉大臣はサバ州が6月1日に独自のMM2Hプログラムを立ち上げる予定だったが、連邦の指令によって不必要に妨害されたと発言。そして、「サバ州は連邦の干渉に関わらずプログラムを進める」と発表したのだそうです。

張大臣は劉大臣がサバのMM2Hについて議論するための連邦レベルの会議に出席しなかったと非難しましたが、劉大臣はこれを否認しています。

しかし、その後になって、連邦観光省MOTACは立場を和らげたようで、張大臣が、サラワクとサバに独自のMM2Hプログラムに対する権限を委譲する意向を示しました。現在、両州は、MM2Hの申請代理店または代表者に対する独自のライセンス要件を導入することを推進しています。

これを受けて、劉大臣は6月30日にサバ州のMM2Hを立ち上げ、翌日から申請を受け付けると発表。彼女はCNAへの書面での回答で、サバのバージョンは西マレーシアのものほど「厳格ではない」としています。要点は以下の通り

source : 05 Jul 2024 06:00AM  c n a  online  素晴らしい要約テーブルです。

しかし、MOTACは7月4日の声明で、サバ州MM2Hの条件と基準を連邦は受け取っておらず承認していないと述べ、サバ州の観光文化環境省がプトラジャヤと相談せずに「一方的」に行動していると非難しています。

現状について尋ねられた劉大臣は、現時点ではコメントを出していません。

c n a の取材に応じる劉大臣は同じ中国系マレーシア人である張慶信大臣とうまく意思疎通できていなかった。

サバMM2Hは5年間のビザを提供し、さらに5年間更新可能で、個別の申請者には最低RM15万の定期預金と月額RM1万の海外収入が必要です。

サラワクMM2Hとは異なり、サバは年齢に関係なく、州内で最低RM60万の高層物件を購入することを申請者に要求しています。

ある申請代理店は、サバの強制的な不動産購入要件がMM2Hプログラムを困難にするので、賢明な投資家は、むしろ西マレーシアで不動産を購入することを好むだろうと示唆しています。

それにもかかわらず、サバ州の劉大臣は高齢者や就学期の子供を持つ家族がサバに住むことに「強い興味を持つ」と予想しているようです。

曰く、サバMM2Hに関する問い合わせが電子メールや電話を通じて「大量に」寄せられており、その大部分が中国、香港、台湾、シンガポールからのものだそうです。

注意すべき潜在的な障害は、今回のサバ州のMM2Hが西マレーシアへの旅行に対してより厳格な要件を持っていることです。サバ州での最低年間30日滞在要件はサラワク版と同じなのに、西マレーシアへの旅行には承認が必要となっています。

CNAから質問に対し、劉大臣はサバMM2H保持者が西マレーシアに旅行する前に「承認」を得る必要があると述べています。MM2H利用者は、サバの移民当局に承認を申請する必要があるというのです。

東マレーシアから西マレーシアへの国内旅行は、一般的には何ら制限されていません、これがどのように施行されるのかは今のところ不明なのです。

サラワクMM2H利用者の証言

現在サラワク版MM2Hプログラムを利用中の元米国政府職員であるアメリカ市民のBさんは、サラワクを選んだ理由として、コストが低く、半島マレーシア(西側)に住むことができる点を挙げました。

Bさんは、2023年11月にMM2Hの承認を受け、現在はペナンに拠点を置いています。

彼はCNAに対し、西マレーシアの方が生活のペースが速く、より活気のある外国人コミュニティがあり、ビーガン食に適した選択肢が多いことから、そちらに住むことを好むのだと語りました。

すべてが順調だったわけではありません。Bさんは、2022年8月にサラワク版MM2Hの基準が厳格化された際に驚いたこと、そしてクチンに到着して申請を完了する1ヶ月前にその変更が行われ、その後13ヶ月も承認を待つことになったそうです。

彼はまた、サラワク移民局の職員とのやり取りを思い出し、その職員がサラワクMM2Hが悪用されていることに不満を持っているように見えたそうです。

クチンに入国する際、移民局の職員は彼のサラワクMM2Hの資格を見て、彼がどこに住む予定かを尋ねました。彼がペナンの方が快適だと答えると、その職員は彼が「サラワクを利用してペナンに住んでいる」と非難したそうです。つまり、移民局は、良い印象を持っていないということになります。

Bさんは将来的にサラワク-MM2Hの要件がさらに厳しくなる可能性について懸念を示しながらも、現在のビザをキャンセルして西マレーシアのバージョンに切り替える予定はないそうです。

c n a の取材に答えてくれたBさん(このブログでは氏名を伏せます)

Bさんは最低滞在要件を満たすために年に4回サラワクに飛ぶことについて「特別な心配はしていない」と述べ、クチンは安全で「非常に親切」な人々がいて、自分をよく扱ってくれる場所だと言います。「サラワクが合理的で、MM2Hの要件を過度に厳しくしていないことについては、非常に感謝してます」

「そしてそれは彼らにとってもウィンウィンの関係です。私の預金はサラワクにあり、年に30日間滞在する際には散財しています。私は自分の望む生活を送っている、それがたまたまサラワクの外であるというだけです。」

サラワク州のローカル反応

クチン在住でカフェを持つ経営者は、サラワクMM2Hプログラムは、地元のビジネスを支援して観光収入をもたらす「良い施策」だと考えています。

36歳の彼女は、新しい客が店に来るのを嬉しく感じています。サラワクMM2Hの利用者の中には店の常連客となっている人もいると言います。

しかし、少し不公平感も感じているようです。

マレーシア市民の外国人配偶者が永住権(PR)を取得するのが難しい一方で、サラワクのMM2H保持者が比較的簡単に長期ビザを取得しているのを見ると不公平感を感じるそうです。

事実、現地の非営利団体が、サバ州政府に対し、PR申請の承認方法を見直すよう求めています。PR申請者の中には、4年以上待っている人もいると指摘しています。

カフェを持つ経営者も、シリア人の夫が2年前にPRステータスを申請したが、まだ承認されておらず、その過程で困難や差別に直面しているといいます。

「MM2Hプログラムはお金を持っている人に利益をもたらしますが、外国人と結婚した私たちにとっては不公平だと感じます」

サラワクMM2H保持者がほとんどの時間を西マレーシアで過ごしていることについては、違和感を禁じ得ないけれど、最低滞在日数を満たしていれば、仕方ないでしょうという反応です。

「MM2H利用者が抜け道を利用しているようにも感じますが、それでも彼らはここに戻ってきます。あちこち旅行しますが、サラワクの方がリラックスできると言っています」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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