【MM2H関連情報】論説 中国碧桂園のデフォルト問題で新たな動き

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2月28日に、Reuters、BBC、日経、等各紙が大きく報じている中国「碧桂園」に関する法的措置に関する債権者の動き、そして今後について実態を紐解いてみましょう。

中国の不動産大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は28日、債権者が香港高等法院(高裁)に同社の法的整理を申し立てたと発表した。香港取引所の開示で明らかにした。約16億香港ドル(約300億円)のローンや利息の支払いを求めていた。最初の審理は5月17日に開かれる。碧桂園は、申し立てに強く反対する。対抗するとコメントした。

2月28日、日本経済新聞 抜粋

各紙の報道は、「法的整理の申し立て」(英語では liquidation petition あるいは winding-up petition)という公式な表現を使っているため、我々一般人には何のことかよくわかりません。

実際に何が起きていて、借金の支払いはどうなるのか?

筆 者
筆 者

筆者の43年のビジネス経験が充分とは言いませんが、これに似たような局面は何度も見聞きしていますので、漠とした新聞表現よりは具体的な話ができると思います。ご興味があれば、少しだけお付き合いください。

碧桂園が関与している「森林城市」については、こちらを参照ください。

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法的整理の申請( liquidation petition ) とは?

誰の申請?

読 者
読 者

新聞報道では、「碧桂園」が発表したようなことが書いてあるけど、自分で自分が訴えられたことをわざわざ発表するのはおかしくないですか?

筆 者
筆 者

日本の金商法にも規定されていますが、証券市場に上場している会社は、自社を相手取った訴訟や法的措置がある場合は、自ら金融市場にその内容を発表する義務があるんです。

新聞社の方は、訴えている会社を主語にして報道することもありますが、この場合は、碧桂園の名前の方が読者を惹きつけるので、碧桂園が発表したことを強調したんでしょう。

香港の司法当局に「法的整理」を申請しているのは、Kingboard Holdings 傘下のEver Credit Ltdという会社です。この会社が、16億香港ドル (約2億ドル)の債務不履行を訴えています。

法的整理とは?

読 者
読 者

「法的整理」っていうけど、要するに裁判所が被告に「借金を払え」って命令するだけなんじゃないの?

要するに、碧桂園さんは破産状態なんだから、有形無形の財産を処分して借金を返しなさいという「命令」を司法当局から出してくれということです。もちろん、そのためには、まず、負債が本当に負債として存在することが証明されなければなりません。それから、現金がない場合に、財産の処分もしなければなりませんから、複雑です。

大きな意味で「デフォルト」裁定が下ると、碧桂園は、処分できる全ての財産を現金にして、それを原資に債権者に平等に返済することを強制されます。

Ever Credit Ltdが単独で法的整理を申請している背景は、彼らの個別の債権規模が、碧桂園の債務全体から見て「ごく一部」であることです。まだ、大規模なデフォルト清算にならないないうちに、碧桂園の一部の資産の取り崩しで充分解決できるだろうから、未払い分を「全額回収してしまおう」という考えなんだろうと思います。2億ドルであれば、法的整理が始まる前に、碧桂園はEver Credit Ltdに未払い額を精算してしまうというシナリヲも考えられます。

筆 者
筆 者

悪く言えば「抜け駆け」申請ということになりますな。

あるいは債権者のグループに秘密裏に依頼されているのかもしれません。

碧桂園が「法的措置に反対」した?

読 者
読 者

なんで「反対」出来るの? 負債があることは事実なんだから、抗弁できないんじゃないんですか? よくわからない発言ですね。

碧桂園が反対しているのは、「法的整理」です。つまり「法的整理をされるような義務は無いし、申請は不当だ」と言っているのです。

言い換えれば、「我々は破産していないし、借金は返せる状態にある。だから話合いで解決すべきであり、法的整理は不当だ。」と言いたいのです。「不当だ」というだけならいくらでも言えます。

勿論、碧桂園はこの件について「賛成」するわけにはいきません。

賛成するということは、「どうぞ法廷で審議して、必要なら私たちの財産を処分して債権者への返済に充ててください。」と司法当局に対して無条件降伏することを意味するからです。

他の債権者は法的整理を申請しないの?

読 者
読 者

債権者はグループを作ったりして強力し合ってるんでしょ?じゃあいっそのこと全員で「法的整理」を申請しちゃえばいいんじゃないの? なにをためらってるのかな??

もちろん、他の債権者が集団で「法的整理」を申請することは可能です。

しかし、その場合、債権者全員が覚悟しなければならないリスクがあります。

司法が入って、碧桂園をデフォルト処理して、有形無形の資産が全て清算された場合、各債権者が「未払い額の100%を受け取れない」可能性が高いのです。

碧桂園側は、このような清算方法は「債権者にとって良くない結果になる」という立場を取ります。そうすることで事態の収拾に向けて時間を稼げます。

ある意味では、「全員でデフォルトに持っていくなら、どうぞ、やってみてください。その代わり回収額が少なくなっても知りませんよ」と言うわけです。

Reutersの記事のなかで、CreditSightsの有識者のコメントが紹介されています。

By filing liquidation petitions, creditors are “applying pressure” on the defaulted developers to come up with meaningful restructuring plans or risk being liquidated, said Nicholas Chen, an analyst with CreditSights.
“Having said that, even if (Country Garden) was liquidated, we doubt that offshore creditors would receive much recovery proceeds given the structural subordination of offshore bondholders and that most of the developer’s assets are onshore.”

法的整理の申し立てることは、債権者が(デフォルト状態の)不動産デベロッパーに対して、倒産手続きになるか、実行可能な再建計画を出すかの2択を迫る手段となりえます。ただ、そうは言っても、(碧桂園が)倒産手続きを受けることになった場合、オフショアの債権者にとって充分な資金回収になるかどうか疑問です。なぜなら、デベロッパーの資産は殆ど中国国内にあるし、オフショア債権というのは清算時の優先度が(オンショア債権に比べて)劣後しますからね。 CreditSightsアナリストの Nocholas Chen氏

Reuters, Country Garden liquidation petition adds to China’s property woes, dated 28 February 2024.

いつまでも決着しないのは何故か?

読 者
読 者

碧桂園がデフォルトになってから、ずいぶん時間が経ってますけど、これって延々と続くんですか? 碧桂園はどの程度猶予を与えられるの?

碧桂園は外国の債権者に対して「返済計画を提案する」としていながら、もその提案を出さないでいます。

昨年の報道では、2023年末には「返済計画を明らかにする」というのが碧桂園の説明でしたが、未だに具体的な計画発表がありません。決まったのはコンサル会社(KPMGと Sidley)だけです。

なぜ、このようにズルズルと解決を遅らせられるのか? もうアウトなんじゃないのか?

と皆が思うはずです。それはそのとおりです。

Country Garden has taken way too long, messing around with switching advisers and wasting time, so it’s no surprise people lose their patience and would rather liquidate them,” a Country Garden dollar bond investor told Reuters.
ドル建て債券に投資した債権者(匿名)によると、「碧桂園は、コンサルを使ってお茶を濁しながら、延々と解決を先延ばしにしてますからね。債権者団体が、いっそのこと倒産手続きに持っていっても不思議じゃないですよ。」

Reuters, Country Garden liquidation petition adds to China’s property woes, dated 28 February 2024.
今回もロイターが最も詳細に的確な解説報道をしています。

例えば米国の「チャプター・イレブン」のような企業清算の手続きになると、司法が出てきて管財人が入って長い時間がかかります。

ここまで大きな規模の債務不履行となると、どの国で司法手続きをとるにせよ、かなり時間がかかるんです。(筆者の感覚では最低でも2年?)そのことは目に見えています。

碧桂園側の立場としては、彼らの事業規模は「常人ができる規模じゃない事」は明らかであり、法的な手続きにかなりの時間がかかるような話なんだから、それを数か月で「何とかしろ」と言われても無理だという理屈になります。

既にノミネートしたコンサル(弁護側)のKPMGとSidleyとの準備だけでも、半年はかかるような内容です。

債権者側も、碧桂園が夜逃げでもしないかぎり、焦ってつまらない動きをせずに、時間がかかっても、できるだけ有利に債権回収したいと考えます。

結果として、延々と時間だけが過ぎていくわけです。

結論として、碧桂園は一刻の猶予すら与えられていません。速やかに負債を解消する義務があります。しかし、それが遅いからと言って経営者を逮捕して牢屋に入れてしまうわけにもいきません。そんなことになれば、債権者が投資額を回収することが困難になるからです。

ジョホールの森林城市はどうなる?

右から左に別のデベロッパーを持ってくることは不可能ですし、碧桂園としても、今やマレーシアの国王となったイブラヒム・イスカンダル陛下の顔に泥を塗るようなことは出来ません。

結果は単純です。「森林城市」の完成は延々と先送りになります。

筆者は大型プロジェクトの専門なので、断言しますが、こういうメガ(ギガ)クラスのプロジェクトにかかる運用コストは莫大です。

遅れれば遅れる程「総工費(消費されるお金)」は膨れ上がります。

完成が1か月遅れるだけで、最低でも十数億円の追加費用がかかります。そういった追加費用はプロジェクトが進行している間は、全く目立ちません。完成に近づいて初めて明確になってくるものです。開発途上で清算する場合も同じです。

森林城市が遅れることは、誰の目にも明らかですが、この事業が遅れて困る人はそれ程いません。現状で犠牲になっているのは、完成前のコンドミニアムのユニットを契約したテナントだけで、パレスチナのように戦争になっているわけではありません。マレーシアも中国も、国家レベルとしては関わらないように、遠巻きに見ているような状態です。

現在の関係者が全員亡くなっても終わらないのかもしれません。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

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