【馬国体験】マレーシアの異世界 大規模現場

馬国

これまで、お話すべきことが山のようにありましたので、筆者の本当の専門分野については、あえてこの場所での記事にしてきませんでした。

そこで、

今後のお話は、筆者が身をもって体験してきた、「異世界」的な大規模プロジェクトの衣食住と泣き笑いの教訓集を紹介していきます。

「異世界」というのは、もちろん、日本を離れたマレーシア(馬国)で実施する、日本では体験しえない仕事現場のことです。

秩序ある日本国内で「普通に」働いている限り、絶対に経験しえない「異世界」の仕事とはどんなものかを皆さんに知っていただき、ある意味では笑っていただき、

またある意味では、十分な準備と心構えを持って、同じような体験に挑戦していただければ、という思いです。

そして、「大規模プロジェクト」というと、何か漠然として「自分とは無関係」と思われるかもしれませんが、それほど規模が大きくなくとも、日本人が関わる同じようなお仕事はマレーシアには沢山あります。

筆者の場合は、たまたま規模の大きなプロジェクト(単純化して具体的に言ってしまえば「建設工事」)に関わって、それを通してマレーシアの衣食住と起承転結を体験したわけですが、

これを読まれるみなさまは、それぞれの専門分野を通して同じ体験と向き合っている、と言えると思います。

つまり、「異世界」だった出来事のひとつひとつを取り上げてみれば、これらは、皆さんのマレーシア生活、あるいはマレーシア旅行においても充分有り得ることなのだと思うのです。

どういった分野のプロジェクトだったのか

筆者が紹介する大規模プロジェクト(または建設工事)については、それらが実施されたのが今から25年以上前の1996年~2005年ごろまでのお話です。

そのころ起きていた、想像を超える出来事の数々は、殆どはもう「昔話」の範疇に入ってきていますし、当時の私の上司や客先や、経営レベルのお偉方も、殆どはもう亡くなったり、引退されたりされていて、現役の方はおりません。

当時何をしていたかというと、それは、海の底から湧き出る「重油」という地下資源から、日常生活に欠かせないガソリン(別名ペトロ―ル)、プラスチック製品、化学製品、ガスなどを精製するリファイナリー(製油所)の設計と建設の仕事であり、

同じく海底から抽出する天然ガスを扱って、冷たく圧縮した液化天然ガスを製品として作り出す複合プラント施設を創ったり、

あるいは、そういうエネルギー資源を燃やして電力を生み出す、大規模な発電所の建設作業であったりしました。

単に建設プロジェクトとは言え、出来上がった設備が、設計どおりの商業価値のある製品を作り出すことを保証するためには、様々な職種の専門職や専門家が「寄って、たかって」頑張らないと完了しません。

いわゆる「工事」以外にも、契約実務、貿易実務、雇用、安全管理、輸送、品質管理、許認可の取得、試運転・テスト、保証が伴います。

筆者の場合は、どのような設備であれ、必ず必要になる「機械」と「資材」を集めて品質管理をしてお客様に引き渡す仕事が専門でした。

取り扱う機械には、中高生が体験する理科の実験室にある、試験管やビーカーやフラスコを「超特大サイズ」にして鋼鉄で作り上げた容器類や、一般の家庭にある「湯沸かし」の大規模な設備(ボイラー)や、自動車のエンジンの数倍の大きさの駆動機械、があり、

資材といえば、数えきれない鉄製の管やバルブ(大型の蛇口)、数百キロの長さで、切断面がスイカの輪切りほどの大きさの電気ケーブル、「電材」とよばれる、さまざまな電気部品、等々でした。

こういった仕事は、個人ではなく企業が大勢の社員や協力会社と契約して運営するわけですから、「量をこなす」という意味では、過去40年以上の事業ノウハウがあるわけです。

どんな世界観なのか

本日は、ちょっとご紹介する程度の話として、

日本では、まず起きない類(たぐい)のトラブル(1990年代のマレーシア)は

  • 突然消息不明になる現地のサプライ系の協力会社
  • 日常のように発生する「盗難」と「取引詐欺」
  • 約束通り現場に到着しない資材
  • 抜き打ちで実施される移民局によるパスポートチェック
  • 雨などを理由に、突然帰宅してしまう数百人規模の労働者

といったところです。

筆者が現地で耳にした不祥事の例では、ある欧州の建設業者は、化学プラントの建設に必要な鋼管類(鉄製の管や、バルブや「継ぎ手」と呼ばれる接続部品)を大量に盗まれたため、予定した物量の2倍の資材を購入せざるをえなかった。

建設現場にいる責任者はほ、とんど全員が予想だにしなかったトラブルに巻き込まれて苦しんでいました。

また、あるガス生成設備の建設工事では、不祥事があいついで工事が大幅に遅れてしまい、責任を負い切れなくなった外国人の現場主任が自ら命を絶ったというニュースもありました。

建設現場ですから、事故や災害も起きます。充分安全対策を打っておかないと、建設中の不慮の事故で人が亡くなったり重傷を負うことになります。

総じていえば、異国での大規模施設の建設プロジェクトは「戦場」であり、失敗のゆるされない、極めて困難なチャレンジでした。

最も恐ろしいことは、殆どの外国企業は、こういった大規模プロジェクトを受注した際に、「なんどか出来るだろう」という、とても安易な意識で仕事を始めるという事実です。

「できるだろう」というのは、彼ら日本人や外国人の尺度での人間の信頼性や、現地事情の安全性に基づいています。しかし、それは、あまりに安易だったと言わざるを得ません。

大規模プロジェクトは儲かるのか

結論から申し上げますと、馬国に外国の企業が入って来て大規模プロジェクトを請け負って完成させた場合、その設備がちゃんと動いで目的を達成することは「可能」です。でも、利益などは1円も残りません。

場所が馬国でも世界の技術を導入すれば、大規模なプロジェクトや建設工事は「完成」できます。

その証拠は、今やだれでも知っているペトロナスのツインタワーであり、トレンガヌやマラッカやサラワクにある大規模は石化プラントです。

でも、これらを手掛けた外国企業は、ほとんど儲かっていません。むしろ赤字で終わるのが普通です。

高層ビルを建設する日本のゼネコンと言われる大企業も、マレーシアで大規模プロジェクトをやって儲かったという話はひとつもありません。

写真は素材サイト envato element 提供のイメージ素材 (all rights reserved)

筆者の専門の石化系プラントでも、企業が儲かって終わったという話は聞いたことがありません。

誰が悪いということはありません。馬国という環境での大規模プロジェクトが、予想通りの費用と手間で終わるということは無いと言っていいのだろうと思います。

それでも、馬国の大型案件に参加しようとする世界の企業が後を絶たないのは、人間が持っているチャレンジ精神であり、前例のない快挙を成し遂げようとする「やり甲斐」のあくなき追及、たゆまない自己肯定への意欲なのでしょう。

そして、マレーシアが組する自由主義社会においては、絶対に無くならない「競争環境」が全ての経済基盤になっていることも、「儲からない」原因なのだと思います。


最後まで参照いただいてありがとうございます。

今回は、これからご紹介する馬国での事業リスクについて、非常に雑駁ですが、筆者の体験を総括するような内容になりました。

次回からは、もっと具体的な事例をご紹介してみたいと思います。

このシリーズの次の記事はこちらです。

以下の経験談もお時間があれば参照下さい。

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