【がちで起業】 退職金と自家用車

自営業主

本編「がちで起業してみた」のぶらさがり記事です。話の発端は本編を参照下さい。

退職金が自家用車に化けた

1999年秋に古巣の経営者から勤続19年相当の退職金を受け取りました。

20年以上前の40歳代前半の企業退職金は約700万円でした(自己都合退職)。

当初はこの現金を馬国でのスタートアップの資本金に充てる計画をしていたのですが、家族会議の結論、この金は馬国生活に使う自家用車(しかも日本車)の購入にあてることになりました。

仕事仲間はこの判断について首を傾げました。馬国の日本車の価格は(輸入税の関係で)日本国内定価の2倍。それだけの現金があるなら新会社の事務所開設、会計士の採用、事業の営業費用、広告等々、いくらでも使い道があっただろうと。

馬国の日本車は新車でなくとも高く売れます。不動産取引と同じで運用チャンスのある固定資産です。筆者も馬国滞在中に、数年前に取引された外車が同じ価格で売れたという話をしょっちゅう耳にしました。

損はしないだろうが、しかし、「今起業しよう」というときに外車を買うのはいかがなものか・・・

妙案

2004年ごろでした。筆者の会社は従業員10名近くにまで拡大していましたが、資金繰りが非常に苦しくなっていました。今振り返れば基本的な運用計画に無理があったのです。

直ぐにでも10万リンギットレベルの資金を調達しないと従業員への給与も払えなくなる状態でした。

すると、雇っていた会計係が妙案を持ってきました。筆者は思いもつかなかったのですが、例の日本車を取引することで銀行ローンを組んで現金を入手できるというのです。馬国ではよくある事例のようです。

どういうことかというと。

  • 筆者の会社が筆者から日本車を購入する売買契約を建てる
  • 会社は購入資金がないので、売買契約を根拠に市中銀行に車の購入のためのローンを申請
  • ローンが成立するとまとまった現金が会社に振り込まれる(日本車は借金の担保)
  • 筆者は売却した日本車の代金を受け取らない代わりに、現金を別の債権者への返済に充てる
  • 日本車の所有権は筆者から会社名義に移り、会社は月々のローンの返済を行う
  • 日本車は今まで通り筆者と筆者の家族が共有可能。

銀行は金利分が確実に回収できることを前提に、このアレンジを容認しました。車の売買の当事者ははっきりしているので、ローン返済が無い場合の日本車の処分が容易なのでしょう。表立ってYESと言ったわけではないが、売る側と買う側が同じ人物であることを知っていてローンを承認してくれたのです。

写真は筆者家族が住んでいたアパートの上層階からみたワインレッドの自家用車。20年間大きな故障ひとつなく本当によく働いでくれました。

自家用車が自営業を救った

もし、自家用車が無かったら、他人や他社への負債を増やしてまとまった現金を調達することは不可能でした。

この日本車は、筆者の家族全員が馬国を離れるまで、20年間ほとんど問題無く動いてくれました。「会社の資本」という位置付けではなかったけれども、この車は筆者家族の馬国での活動のための本質的な「資本」であり続けたのです。そして、移住当初に家内が強く提案した退職金の使い道は大正解だったのです。

開業当時、個人事業者1年生の筆者は資本金として現金を持っておきたかったので、退職金で日本車を購入することについては反対でした。家内は自家用車の購入は全てに優先するとして譲りませんでした。家内は100%正しかった。思慮不足だったのは筆者だったのです。

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