【馬国情報】不正取引口座の摘発に人工知能

馬国

アイキャッチ画像はイメージ素材です。 image photo by envato elements (all rights reserved)

馬国で活動している詐欺集団の手口については、これまでたくさんの事例を紹介してきました。初めて耳にする方はこちらを参照ください。

ネット詐欺などで常に悪用されるのが銀行口座です。

誰でも簡単に開設できて、電子的に金銭を動かせる銀行口座は、詐欺集団にとっては、悪事の隠蔽のために無くてはならない便利なツールです。

その数は星の数ほど運用されているわけですから、善良な市民は、充分注意していないと騙されて大金を失います。

政府機関が新たなツールを開発したといっても、騙し取られた資産が簡単に手元に戻るということはありません。

今回開発されたAI搭載の追跡ポータルは、これまで不可能だった、不正取引の被害額を「回収」することも視野に実装されているそうです。その成果が見えてくるのはおそらく半年から一年ぐらいかかるとは思います。

馬国の長期滞在組としては、必要な現地情報の一つです。以前から政府が推奨している「不正口座特定ポータル」である Semak Mule 2.0 についても、この記事の最後に掲載してあります。

登場:詐欺犯罪の追跡強化ツール

専門家が指摘「新ポータルがマネーロンダリングの迅速な検出を可能にする」

サイバー犯罪の専門家によると、(最近開発された)人工知能(AI)を活用した国家詐欺検出ポータル(NFP)は、マネーロンダリングアカウントが関与する潜在的なオンライン詐欺を特定する捜査時間を大幅に短縮する。

金融法科学 (financial forensics expert) の専門家であるレイモン・ラム氏は、8月20日に実装開始されたNFP (National Fraud Portal)  は、金融業界全体からのデータを集約することで、マネーロンダリングに使われた銀行口座(マネーロンダリングアカウント)の正確な特定・評価・監視に効果的であると述べた。Artificial Intelligence (AI)-driven National Fraud Portal (NFP), financial forensics expert Raymon Ram

ラム氏によれば、マネーロンダリングアカウントは不正資金を(追跡困難にするために)洗浄するために使用されることが多いが、NFPの活用により、容易に追跡できるようになった。

NFPは詐欺対策のための包囲網全体を補完するバックエンドシステムであるという。(a back-end system which complements the overall approach to fighting scams)

マレーシア警察の商業犯罪捜査部(CCID)が保持するブラックリストとの明確な関連性は言及されていないが、一般市民が「Semak Mule」ポータルを使用して最初の確認を行うために有効なインターフェースを提供するものだという。

(中略)

NFP実装当初のレポートでは、盗難された資金の追跡に必要な時間を最大75%削減し、従来の手動プロセスで最大45日程度かかっていた追跡捜査を大幅に改善している。以下はラム氏の説明:

「このプラットフォームは、疑わしい取引パターンやマネーロンダリング活動に特有の指標をリアルタイムで分析し、異常な口座を効率的に特定・凍結することができる」

「NFPは、不正報告の処理プロセス全体を自動化・統合するよう設計されており、(違法アカウントの)検出から資金追跡・回収までを一貫して行うことができる」

「不正行為が国家詐欺対策センター(NSRC)に報告されると、NFPはさまざまな金融機関からのデータを集約し、先進的なアルゴリズムを用いてリアルタイムでこれらの情報を照合・検証する。この自動化システムにより、不正取引を追跡し、対応するために必要な時間が劇的に短縮される」National Scam Response Centre (NSRC)

+++

マレーシア科学アカデミーの情報技術・計算機科学部門のモハメド・リザ・ワヒディン教授は、NFPはAIを活用して、潜在的なオンライン詐欺やマネーロンダリングアカウントの特定プロセスを大幅に高速化しているようだと述べた。(Prof Dr Mohamed Ridza Wahiddin, chair of the Information Technology & Computer Science Discipline, Malaysia Academy of Sciences)

「AI、特に機械学習は、過去の取引や潜在的な詐欺から結びつきを学習し、アラームを発生させるだろう。これにより、自動的にNSRCを支援するための報告書が生成される」

このため、捜査チームが詐欺やマネーロンダリングアカウントの疑いに対処するために必要な時間が自然と短縮されると指摘した。

リザ氏は、NFPが処理するデータの一部は地元の銀行機関と共有されると付け加えた。

「すべてのデータが共有されるわけではないが、関係者が(違法取引の)潜在的脅威を検知するために必要なデータは共有される」と述べた。

詐欺防止アプリ Semak Mule 2.0

Semak Muleはスマホ等で活用する犯罪防止アプリ。Semak はマレー語で「チェック、確かめる、調べる」を意味する。

警察当局の「商業犯罪調査部」が、詐欺行為を阻止するために開発し、2020年から馬国内で広く利用されている。2024年3月4日のThe Star onlineの報道の一部として紹介されてる。

Mule は、マネーロンダリングのような違法行為のために利用される銀行口座(Mule Account)で、このアプリは、詐欺目的で悪用されている「銀行口座」と「電話番号」を、警察当局が管理してネット上にアップロードすることで、利用者が疑わしい口座や電話番号をリアルタイムでチェックできるもの。

Version 2.0 では、口座と電話番号に加え、100社を超える詐欺目的の shell companies の社名も検索できるようにした。shell companies とは架空の会社や会社名である。

商業犯罪調査部の発表によれば、2024年3月までの4年間にアップされた詐欺目的の口座番号 (mule account )は193,000件、詐欺行為に利用された電話番号は164,000件。

マレーシアが抱える悩ましい問題は、このアプリでミュール口座を特定できても、被害者のお金が返ってこないことや、新しいミュールがたくさんアップされて、詐欺犯罪がいっこうに減っていないという問題です。NFP が期待されています。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

タイトルとURLをコピーしました