この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
フォレストフォレストシティー(森林城市)に関する前回の記事はこちらの2件
中国不動産会の碧桂園とジョホール州政府・イブラヒム国王陛下が共同出資しているジョホール南東の巨大都市計画「フォレストシティー」については、馬国のみならず海外のメディアからの注目も浴びて、今後の行く末が不透明になっています。
我々MM2H愛好家としては、客観的な情報として、この都市計画が「ゴーストタウン化」しているという話は何度も耳にしてきましたが、実際にこの場所のコンドミニアムに滞在した外国人の体験については、殆ど情報がありません。今ひとつ情報不足です。
そんな中、2024年の3月に、マレーシア国外のジャーナリストがこの「フォレストシティー」に一泊する体験取材を試みました。
この方は、ニューヨークに本拠を置く技術・ビジネス系報道ウェブサイトの Business Insiderに所属するMarielle Descalsota さんという女性記者です。彼女の鋭い観察眼と分析力に富んだ記事が4月3日のBusiness Insiderにアップされていたので、その内容を要約しました。
今回のオンライン報道の出典
次のタイトルと原典のURL(2024年5月13日現在)
I spent a night in one of the empty apartments in Malaysia’s $100 billion ghost town, and I can see why very few people want to live there
Marielle Descalsota Apr 3, 2024, Business Insider
Marielle Descalsota さんは Junior Visual Features Reporter というポジションでBusiness Insider に多くの記事をアップしています。
Marielle Descalsota はBusiness Insider のシンガポール支局に所属するフォトジャーナリスト兼レポーター。
専門はアジア圏の旅行体験。2022年に visual feature fellow という肩書でシンガポール支局に所属。これまで、6つの異なる国から記事を投稿してきた実績を持つ。
シンガポールの南洋工科大学( Nanyang Technological Univ.) 卒(英文学・コミュニケイションの学位)、アジア研究の分野でS. Rajaratnam School of International Studies 修士号。
このサイトでたびたび紹介している香港のSouth China Morning Post(南華早報)にも記事を投稿しています。
Busisnes Insisder の著作権の関係で、記事の画像は掲載できません。気になる方は上のURLから直接参照ください。ジャーナリストが掲載している写真も見れます。
ジャーナリスト目線で体験するフォレストシティー
ここから本編です。Business Insider に投稿された記事から抽出しました。
訪問のきっかけと経緯
私(Marielle Descalsota)が最初にForest Cityを体験したのは2022年5月。見た目は、まるでゴーストタウン。夜になると、ずらりと並ぶ数百のアパートの窓は暗く、道路はほとんど車がなく、ビーチにもわずかな人がいるだけ。6年間で70万人住むことになると予測されていたが、約9,000人の住民しかいない状態。当時のコンドミニアムの警備員によれば、担当するコンプレックスに住んでいるのは20人がだけ。こんなアパートで一泊するのはどんな気分なんだろうかと思った・・・
8年後の2024年3月に一泊体験を実行した。Forest Cityの関係者を通じて70 Singapore Doller(約52ドル、約7,500円)で某コンドミニアムの Home Stay を予約。Airbnbには、1泊38ドルからの類似のユニットが数十件有った。ユニットの所有者(匿名)は中国に拠点を置いており、この記事へのコメントは辞退。
いよいよForest Cityの無数の「空き」アパートの内部を探訪できることになった。
探訪に先立ち、Business Insiderは中国不動産会社「碧桂園」にコメントを依頼したが、碧桂園は応じていない。
コンドミニアムは外国人向けの「高級物件」
Forest Cityのマンション・コンプレックスは、高級物件として売り出されている。
3月の某日午後、Forest Cityに到着。コンドミニアムまでの道路には、家具店や火鍋レストランなど、さまざまな店舗が並ぶ。匿名の店舗オーナーは、2023年10月に開業したと話す。
このあたりは、2年前に初めて訪れた時よりもかなり賑やか。以前はほとんど人がいなかったが、この日は数10人が街を歩き、店を利用していた。
Forest Cityは当初から「高級物件」としてブランド化されていたので、コンドミニアムに対しても期待が高かった。2022年7月のプレスリリースによると、Forest Cityは”luxury high-rise waterfront apartments”(高級高層水辺マンション?)として売り出されていた。
このプレスリリースによると、Forest Cityのユニット価格は510,000RM(約$108,000、1,600万円)からのラインナップ。これは、マレーシア・ジョホール州の市況としては高額物件。
ジョホール州の物件は通常300,000RM以下で販売されていて、これが州の中間所得者世帯にとっての手頃な価格だ。(マレーシア工科大学の不動産学、ムハンマド・ナジブ・ラザリ教授)
従い、地元住民は Forest City の高級コンドミニアムの顧客にはならない。
事実、Forest Cityで販売されたユニットの98%が外国人によって購入されている(出典:マレーシアの国際貿易産業副大臣を務めたフルブライト奨学生であるオン・キアン・ミン氏による2017年の論文)
2017年6月、碧桂園はブルームバーグに対して1万6,000ユニットを売却したと述べた。
いよいよ建物の中に入っていく
外観は清潔で、39階建ての建物は緑で覆われている。ところが、ロビーに入ると、その保守管理状態は雑駁。
エレベーター内部にはForest Cityのロゴと、剥がれかかった壁紙。壁紙には中国語と英語で(奇妙な)キャッチフレーズ
“Going home is the beginning of a new life.” 「帰郷は新しい生活の始まり」
Forest City を諦めて早く母国に帰ろうといいたいのか?(笑)
予約したアパートの7階フロアに到着。ほとんどのユニットは空っぽに見える。
同じ階に約20のユニットがある。各ユニットには廊下に面した窓。そこからのぞき込んでみると、ほとんどのユニットの中は、無造作に家具が置かれていたり、まったく空き家だとわかる状態。
このうち、2つのユニットだけについて、このコンドミニアムのスタッフが入居しており、制服姿の男性が出入りしているのを見かけた。
やはり売れ行きは良くない
2022年当時、Forest Cityの代表者とのインタビューでは、2万以上の住居ユニットが売却されたという話だった。
今見てみると、多くのユニットが空き家のようだ。住人情報では、おしなべて1つのフロアに平均1世帯の住人しかいない。
前述のナジブ・ラザリ教授によれば、多くのユニットが空き家なのは、人々が物件購入しているのは、住むためではなく、投資目的だから。
教授曰く、「一部の購入者は、Forest Cityが、容易に利食いできる賃貸市場になると考えていた。」
匿名の店舗オーナーは、この Forest City で不動産業者として働いており、50のユニットを賃貸用に提供しているという。不動産サイトiPropertyによれば、同じコンドミニアムの3ベッドルーム、1バスルームのアパートの場合、家賃は、1,100RM、または$235が最低ライン。
同様のユニットをジョホールのテーマパークがあるDanga Bayで借りる場合、1か月あたり2,300RM以上取られる。(Forest Cityかか20マイル離れたCountry Gardenの最初の開発地区)
予約したアパートに入ってみた
予約したユニットのドアを開けて入ってみる。一見して、誰も利用していなかったようだ。まるでIKEAのショールームのような雰囲気。
アパートは635平方フィート(59平米)で、これといって特別な印象無し。シンプルな3人掛けのソファ。小さな木製のコーヒーテーブル。テレビは無し。マスターベッドルームと2つの小さな共有部屋、共用バスルーム。また、入口付近には2つのコンロが備わったコンパクトなキッチン。
不動産ウェブサイト EdgeProp によると、ジョホール州の平均的な住宅はこのユニットの約2倍の面積(約1,264平方フィート、117.4平米)だ。
モナッシュ大学マレーシア校のコー・シン・イー准教授によると、ジョホール州の地元住民高層住宅よりも一戸建て物件を購入することを好む。これがForest Cityの不動産取引を妨げているとのこと。
2017年のデータによれば、当時、Forest Cityで販売された 5,344 ユニットのうち、マレーシア国民が購入を決めたのは、わずか 78 ユニットだった。
ベッドルーム、バスルーム、バルコニー
マスターベッドルームはダブルベッドがポンとひとつ置かれた部屋。
但し、他の2つのベッドルームとは異なり、マスターベッドルームには大きな窓から自然光が入ってくる。
共用部屋(ベッドルーム)の1つは施設の廊下に面していて、ブラインドを開けると廊下がまる見え。夜になると、外からいろんな音が入ってくる。例えば葉がかさかさと音を立てたり、虫が鳴いたりするのが聞こえ、不気味な感じ。
共用部屋はシングルベッドが置いてあるだけの部屋。ベッドに横になると、マットレスには配送時のプラスチックのカバーが巻かれたままだった。
ユニット内の他の部分は新しく見えたの、バスルームは劣化していた。シャワー室には汚れや羽虫の死骸まで残っている状態。シャワーを浴びるのは不快。排水口が詰まっていて、足首まで水に浸かった。
ユニットで一番良かったのは、バルコニー。海岸沿いの別荘とジョホール海峡が一望できた。
アパートの外回りを散策
コンドミニアムは巨大なのだが、施設を利用している住民はほんのわずかだ。
戸外には、プールや屋外ジム、遊び場があるが、朝のプールには誰もいない。ジャグジーの水は白く濁った状態。
戸外で寛ぐ住民は合計3人、そのうち1人は中国曲を携帯電話から流し、屋外ジムのタイチ・スピナーの1つで運動中。
これは、言ってみればシンガポールの平均的な住宅地の風景だ。公共住宅の絶え間ないブロックと、植物や木々がいたる所にある。ただし、ここには人がいない。
ここで活気づく飲食店は異世界
ただひとつ死んでいない場所。それがコンドミニアムのすぐ外に並ぶ店舗だ。
コンドミニアムのすぐ外に複数の中国料理店がある。その1つで食事を取ってみた。
2022年の訪問時は、これらの店はほとんど閉まっていた。今、これらの店舗だけが人々の生活の兆候を見せている。
レストランに入ると、まるで中国にいる雰囲気。BGMは中国のポップミュージック、たばこの煙が立ち込める。店内のほとんどの人は中国語しか話さない。この国の公用語、マレー語を話す私だが、メニューの項目を指さして注文するというありさま。
ここはある種の「飛び地」だ。近くの他の店舗も中国レストランや中国の日用品を売るコンビニエンスストアばかり。ここの人々は、自分たちも中国本土から来たと言い、中国語しか話さないという。
前述のコー・シン・イー准教授曰く、「中国人の一部の層は、このように異国で中国環境を楽しむライフスタイルを好むかもしれない。」そして、Forest Cityは中国の主要都市よりも日々の生活費が安い。
というわけで、Forest Cityの運営も中国の人々が故郷で暮らすのと同じような環境を意識しているわけだ。
なるほど、”Going home is the beginning of a new life.” 「帰郷は新しい生活の始まり」
フォレスト・シティーの建設プロジェクトの場所や概要の情報はこちら
概要記事は2023年8月のものです。現在の完成スケジュールは定かではありません。
最後まで参照いただき、ありがとうございました。
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