この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
このブログで馬国の観光地や「おすすめ体験」をまとめている内、ひとつ気になる事実に突き当たりましした。
さまざまな資料を見るうちに、この「クアラルンプール」という連邦特別区の成り立ちについて、日本語版のしっかりした資料が見当たらないことです。
もちろん、英文、中文、マレー語の資料は参照できました。でも、どれも少しづつ違う見解を示していて、「これだ」という資料に欠けるのです。
筆者は、MM2Hを通して「馬国」というユニークな国に出会ったのですから、この際、馬国、特に「クアラルンプールの歴史と成り立ち」について「しっかりまとめておきたい」という願望を持つようになりました。
そういう目で改めてネットで発掘できる資料をみていくと、その経緯は驚くほど奥が深い!
日本のように、単一民族でない馬国は、古くから移民の土地であり、覇権争いの土地でした。異なる文化が混ざり合う土壌に、ポルトガル、オランダ、イギリス、日本という様々な列強の影響が被さって、複雑で興味深い経路を辿ってきているのです。
それだけではないです。肝心のマレー人も、過去にはスマトラやインドネシア等から大量に移民が流れていているのです。
そのことについて、筆者はあまりにも無知でした。
「クアラルンプール」・・・と簡単に口にしてきましたが、実はこのKLという場所は、ユニークで興味深い秘話の宝庫だったのです。
世界大戦に目を奪われるとKLの歴史は見えない
「歴史」というと、誰もが、世界大戦を中心に史実を把握しようとします。
しかし、KLの成り立ちを追っていくと、第2次大戦や日本軍の侵攻は、(確かに重大事件ではありましたが)長い歴史全体の中のほんの数年間の出来事であり、それまでの来歴はもっともっと複雑かつ苦難の連続だったと言えます。
特に19世紀のセランゴール地区の内戦(英語圏では Klang War と呼ぶ場合が多いようです)の物語は、スルタンの権力争い、マレー民族と華僑・華人の地下組織同士の争い、さらにマレーと華人の確執、さらに大英帝国による干渉と統治が、あたかも異なる色の糸で編み上げた複雑な幾何学模様のアラビア絨毯のようで、読み応えがあります。
その頃、日本は江戸幕府末期で、大政奉還を果たし、富国強兵の始まりと日清戦争に突入していましたが、セランゴールとKLで起きていた内戦の複雑さと比べると、ある意味ではシンプルな物語にさえ思えます。
どんな人物がKLを作ったのか?
馬国はイスラム国家ですから、当然、マラッカ王国以来のイスラム系のスルタンがセランゴールとKL地区にも君臨していたのですが、
スルタンと皇族の権力争いや、皇位の継承劇に隠れた「華人組織」の指導者の活躍も見逃せません。
馬国の首相を長く務めた、マハティール首相も認めている通り、KLの成り立ちに大きな貢献をした華人指導者は3人居たと言われています。
英文で残っている史実の中で最も頻繁に語られるのが「葉亜來」(英名Yap Ah Loy) です。英語版の wikipedia でも、Yap Ah Loy については長文の解説が残っていますし、欧州の歴史研究家や著述家が、彼の生涯について幾つかの書籍を残しています。
この人物は 1856年に16〜17歳で中国の広東州からマラッカに渡り,1885年に47歳で亡くなるまで、セランゴールの南から現在のクアラルンプール地区に転居しながら、自らの事業と地域の華人集団の取りまとめに貢献し、スルタンと英国の行政とも関わって、不屈の努力を続けてクアラルンプールを作ったと言われています。
武人としての「葉亜來」
19世紀のマレー半島という場所は、外国との通商や鉱工業が発展したとは言え、まだ国家統制には遠く及ばない「野蛮」な環境でした。利権争いが容易に「殺し合い」に発展する環境です。
マレー人や華人をまとめる人物は、いずれも「武力」の面で他者よりも優れた才能と実績を持っていました。
「葉亜來」も例外ではありません。
この人物を、単にインテリの徳の高い偉人として見るのは、少しピント外れになります。若い頃、彼は力ずくで集団を統制し、武力を有効活用してのし上がった武人だったのです。
しかし、激動の馬国で経験を積んだ彼は、KLの守護神となる1870年代には稀代の戦略家として知られる賢者に成長しています。
「ムルデカ広場」の記事や、「Pasar Seni (セントラル・マーケット)」の記事で、すこし触れましたが、「葉亜來」こそが、British Malayの当事者に現在のムルデカ広場を提供した人物であり、セントラル・マーケットの建造を指揮した人物です。そして、今でも保全されているKL最古の道教の寺をチャイナタウンに建てた人物なのです。
次回から、この人物を中心に19世紀のKLの成り立ちを詳しく紹介します。
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