【MM2H体験】ジョホールの巨大プロジェクト:光と影

MM2H

この投稿は、本編【MM2H体験】の関連記事です。

この記事の続報があります。こちらを参照下さい。

中国の不動産バブル崩壊と連動した話です。深刻化する場合は特集記事として連続して投稿していく予定です。

中国不動産大手の恒大集団(Evergrande Group)が2023年8月17日、米連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請したことはご承知のとおりですが、

この恒大集団と肩を並べる中国不動産最大手の碧桂園控股(Country Garden Holdings)(へきけいえん)も資金繰りの悪化が懸念されています。

同社は8月10日に、2023年1~6月期の最終赤字が450億~550億元(約9000億~1兆1000億円)になるとの見通しを示し、「創業以来最大の困難に直面している」こと
を明らかにしています。※

※2023年8月24日のレート(1元=約20円)で計算しています。

情報元:YAHOOニュース(8月25日)

さて、

この「碧桂園」が、馬国のジョホールバルで建設中の超超大型都市計画プロジェクトである

「フォレスト・シティー・デベロップメント・プロジェクト」
(Forest City Development Project: 森林城市)

の60%の投資資本を所有する事業株主兼デベロッパーであることを御存知でしょうか?

海外では社名を Country Garden Holdings としているので、日本のメディアでは注目度が低いようです。

実は、このプロジェクトが、碧桂園の債務超過により、放置されれてゴースト化するのではないかという懸念が広がっているのです。

いったい何が起きているのでしょうか?

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とんでもない超大型の都市開発

この記事の投稿日は2023年8月末。

今から7年前の2016年~2017年にスタートした「森林城市」のプロジェクトは、馬国のジョホール州の南西部、シンガポールの北西に巨大な埋め立て地を建設して70万世帯の海外の富裕層による購入や利用を誘致しようとするものです。

シンガポールの西、ジョホール州の西南から突き出している埋め立て地(フカミドリ)が森林城市という未来都市構想の場所。

プロジェクトの金額はおよそ1000億ドル(14兆円)というもので、場所は馬国ですが、中国の「碧桂園」の肝入りプロジェクトなのです。

もちろん同社が中国の外で手掛ける中で最大の事業だそうです。

Forest City Development Project 概要

プロジェクトForest City(森林城市)Development Project
総事業規模1000億ドル(約14兆円)
建設国・場所マレーシア、ジョホール州西南の埋め立て地
埋立て面積1800 – 2000 he (20km2)
建設期間約18年
受け入れ世帯70万世帯
完了予定2035年
The Straits Times

埋立て面積は日本の港区とほぼ同じ、東京ドーム400個の広さです。

この事業の60%は碧桂園が運営しており、残る40%は馬国の私企業である Esplanade Danga 88 という会社が保有しています。(仮に ED88 とします)

この私企業 ED88 の所有者は、何とジョホール州政府、並びに、ジョホールの王様であるSultan Ibrahim ibni Almarhum Sultan Iskandar その人なのです。

筆者は元エンジニアリング企業の社員で、最大2兆円程度の大型プロジェクトにも従事してきましたが、

事業総額14兆円となると設計・施工やプロジェクト遂行上上のリスクがあまりにも大きすぎて想像を絶する世界です。

間違いなく国家事業レベルであり、とても私企業が責任を終えるものではありません。

筆者がジョホール州政府なら絶対に手を出しません。

無事に完成するかどうかは、誰も予測できない「お化け」プロジェクトです。

巨大なハウジング計画:70万世帯

実は、このプロジェクトがスタートしていた2018年5月

首相選挙でかのマハティール首相が電撃的に復帰しました。

そして、マハティール首相は、前任者が認可したこのプロジェクトを強く拒絶しました。

“Our objection is because it was built for foreigners, not built for Malaysians. Most Malaysians are unable to buy those flats.”

「我々が反対するのは何故かといえば、それは、この事業が馬国人のための事業ではないからだ。殆どの馬国民は(森林城市の)不動産など購入出来はしない。」

Source : The Straits Times 2018.SEP.03

当時、開発元は、この首相発言は「何かの間違いではないか」と政治的に猛反発。

しかし、

当時のマハティール首相が指摘したとおり、森林城市のコンドミニアム群は中国やシンガポールの富裕層だけが利用できる「高級コンドミニアム」であり、馬国の一般国民とは無縁なのです。

つまり、これは物価の高いシンガポールの住民や、中国をはじめとする諸外国の利用客のためのプロジェクトなのです。

外国から入ってくるMM2Hの利用者がこの未来志向の巨大コンドミニアム群に居住することは大いに考えられますが、馬国の庶民が利用するものではなさそうです。

その後、政権はアンワル首相に移り、アンワル政権においては、このプロジェクトは拒絶されていません。

実際に人が住んでいるのか?

肝心の居住者の契約状況ですが、

2023年の8月のThe Straits Times の報道では、予定している70万世帯のうち、現在の契約者は26,000世帯に留まっています。

報道では完成したコンドミニアムに入居しているの家族は非常に少ないため、森林城市は「ゴースト
タウン化している」という声も聞こえてきます。

開発開始から7年目でこの数字ということは、この先の利用者の誘致は、相当がんばらないと難しいのではないでしょうか?

利用者や不動産の購入者が増えないと、この巨大事業はタイタニック号のように沈没してしまいます。

碧桂園のオーナーである2代目の楊恵妍(ヤン・ホイエン)さんの資産は、一時期は中国一でしたが、同国の不動産危機の深刻化に伴い、その資産は半分以下に減少しているようです。悲劇のヒロインにならないと良いですが・・・

碧桂園は、中国でも最も安定した不動産会社であったのだが・・・

馬国政府は「経済特区」を宣言してプロジェクトを支援

去る8月28日の New Straits Times の報道では、馬国のアンワル首相は先週金曜のジョホール州訪問時に、フォレスト・シティー(森林城市)開発の支援策として、マルチエントリービザ、シンガポールからの入国管理の優先レーン、ホワイトカラーの所得税の定額化(一律15%)を導入するといった「経済特区」の施策について発言しています。

つまり、シンガポールに居住するよりも良い条件を示して、フォレスト・シティーへの移住者を大幅に増やそうというわけです。

このブログでは、馬国のMM2Hの条件が厳しく、申請者が9割減少している件を記事にしています

その記事で、ジョホール州のスルタン・イブラヒム・イスカンダル王は担当大臣との会見で、MM2Hの条件緩和を依頼した件を紹介しました。

それもそのはず、

森林城市の開発事業に40%もの投資をしている「ED88社」のイスカンダル王とジョホール州政府としてはウエスト・マレーシアのMM2H利用者が激減してしまうと建設中のコンドミニアムに利用者が流れてきません。

プロジェクト推進派は、プロパガンダを流していて、動画サイトや新聞報道などで、「ゴーストタウンの噂は嘘!居住者は快適に暮らしている」という声も強くなっています。

恐らく、このForest City を特別区として、特別なMM2H条件を設定するような動きも出てくるのではないでしょうか? 

こういう政治的背景の中で、プロジェクトに反対したマハティール首相は、同国の皇族にも簡単には屈しない立派な政治家ではなかったか?と改めて思う次第です。

この記事の最後に、同地区のインターナショナル・スクールの学長の発言を紹介します。

Dr Gregg Maloberti, head of school at Shattuck-St Mary’s Forest City International School, which is located within Forest City but operates independently of the project,
told ST:

Some 33 per cent of students are from China, 30 per cent from South Korea, and 5 per cent from Japan and the United States, with other nationalities making up the rest.

「生徒の内33%は中国籍、30%は韓国、そして5%が日本と米国籍の生徒です。今年末までに生徒数300人を目指しています」

Source : The Straits Times

この問題については、まだ関連情報がありますので、続けて投稿します。

碧桂園の次の債務返済期限は9月初頭、

そして見直しを迫られているMM2Hの新条件の改訂が発表される時期に来ました。

マレーシア情勢から目が離せません。

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