本日のアイキャッチ画像は、石化プラントの夜景です。日本でもお馴染みですが、絶対に火災が起きてはいけない設備群なので、夜間でも無数の照明が光り輝いて設備のあらゆる重要な場所を照らします。 photo by envato elements (location unknown, all rights reserved)
この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
本日の記事は、筆者の退役前の専門分野でもある、石油化学のビジネスのお話。
MM2Hに関係無いと思いきや、これが大いに関係があるものなのです。
紹介する記事は、英文でさらっと読んでも、今ひとつ意味がわかりません。ここには、専門用語の微妙な使い回し方法があるからです。
「なんだか、大きな事業が始まりそうだ」と言う印象だけが残れば良いという考えて作られた記事だと言えます。
ダウンストリームと言う単語がでてきますが、サウジアラムコやペトロナスが手がける事業におけるダウンストリームとは次のような意味になります。
一般的には海の底から引っ張り出してきた「石油やガス」をパイプラインや船で陸上に運んで来る事業はアップストリーム。石油やガスは総称してハイドロカーボン(炭化水素の総称)などと呼びます。アップストリームの成果物は重油や天然ガスといった炭化水素系のエネルギー素材です。
陸上に運んできた、石油・ガスからゴミをとったり、毒物・不純物を取り除いて、用途別に細かく分離・分解する事業がダウンストリームなのです。ダウンストリームの成果物は、ジェット燃料、ガソリン、灯油、エチレンやプラスチックの材料、アスファルト、コークス、塗料、化学薬品など、多岐に渡ります。
サウジアラムコのダウンストリームの成果物である石化製品の需要があるのかどうかというと、これは当然「有り」です。
証拠は目の前に有ります。ガソリンの値上がりが最も単純な証拠です。
すごく単純に言ってしまうと、
誰もガソリンを使わなければ、ガソリン価格は暴落して石油化学のダウンストリーム事業は崩壊していきます。
まずは、Free Malaysia Today のオンライン報道をご一読ください。
首相とペトロナスのダウンストリーム計画
Anwar to meet Petronas for talks on Saudi Aramco project in Pengerang
07 May 2024, 10:41 AM Free Malaysia Today
サウジアラムコが、マレーシアでの石油化学およびガスのダウンストリーム事業を拡大することを検討している。
アンワル首相は今週、ジョホール州ペンゲランのコンビナート(PIC)でのサウジアラムコとペトロナスのプロジェクトについて関係者と会談する。
「数日間ペトロナスと打ち合わせる。3つ重要な問題があり、2つは解決した」(財務省の月次集会での首相の談話)
「政府レベルでの決定が必要な問題がある」
サウジアラビアの国有企業であるサウジアラムコは、石油およびガスの事業に、新たな石油化学プロセスとガスのダウンストリーム施設を追加するために、マレーシアで展開している事業を拡大しようとしている。
昨年10月、アラムコのダウンストリーム担当社長であるモハメド・Y・アル・カターニ氏は、同社がペンゲラン・プロジェクトに期待しており、将来的な拡張だけでなく、事業運営の続行に意欲的だ。
同社長は、PICを東南アジアにおける石油およびガス開発の拠点とすることを目指していると述べている。
アンワル首相が、ペトロナスの役職員に対して、エネルギー元売り大手企業の国際的評価を念頭に置いた操業を継続するよう促している。(ベルナマの報道)
<記事の終盤はコンプライアンス関連:割愛します>
サウジアラビアもマレーシアも産油国ですよね?今回はどっちの国の石油を精製するの?
どの国の資源を利用するかについては、現段階では極秘扱いになってるはずです。ただし、一般的にはアラムコがサウジの石油を持ってくるんだろうと思います。サウジの石油埋蔵量は2023年末のデータで3000億バレル、マレーシアは37億バレル(80分の1程度)です。比較になりません。
アラムコとペトロナスの出資比率はどうなるのですか?
マレーシアで事業をやるのだから、半分以上はペトロナスと言いたいところですが、この場合は、投資額が桁違いに大きいので、必ずしもペトロナスが過半数と言うわけには行かないかもしれません。今後その辺の情報が出たら紹介します。
参考 石化プラントとは
今世界は「カーボンニュートラル」の時代に入っていて、二酸化炭素の排出削減が盛んに報じられたり政府機関も入ってCO2の封じ込め作戦を展開していますから、
サウジアラムコが手がけるような、ダウンストリームに当たる石油化学の事業は、斜陽産業になってきています。
それでも、日本の消費者にとって捨てきれない、ガソリン、ジェット燃料、プラスチック、塗料、合成ゴム、道路のアスファルト、化学繊維、プロパンガス、ライターのガス、化学薬品の数々は、
全て石油精製(つまり石化事業のダウンストリーム設備)から供給されています。
仮に、世界の石化事業が全て停止してしまったら、ガソリンや燃料は即座に暴騰して利用できなくなり、航空機はほとんど飛ばなくなり、プラスチック製品の供給が途絶える等、あらゆる生活と産業分野が麻痺することになります。
それでも、CO2の削減が大事で、石油化学系のビジネスを地球から根絶させたければ、
全ての石油・ガス関連の燃料の利用をやめて、プラスチックや合成繊維も使わない、生活と文化に切り替えれば良いわけです。
マレーシアの石化設備についての過去の記事です
サウジアラムコ
日本語版 wikipedia より
サウジアラムコ(英語: Saudi Aramco、アラビア語: أرامكو السعودية Aramku al-Saūdīyah)は、サウジアラビア王国の国有石油会社。保有原油埋蔵量、原油生産量、原油輸出量は共に世界最大。
2022年12月期の決算は純利益が前期比46.5%増の1,611億ドル(約21兆7500億円)と、2019年12月の上場以降で最高益を記録した。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や、生産量の増加が業績を支えた。
MM2Hの利用者への影響?
報道内容から推測できることは、恐らく、早くて1年後、遅くとも3年後には、金額にして、最低でも3000億円の石化プラントの建設プロジェクトが始まります。
プロジェクトのオーナーは外資であるサウジアラムコと、国内の半国営とも言えるペトロナスの資本提携による石油元売り会社になるでしょう。今までも常にそうでした。
3000億円を超える建設プロジェクトに必要なのは、石油化学の精製・貯蔵・輸送システムの設計・関連機器と資材の調達・そして建設です。
このまま円安の環境が3年程度続けば、日本の企業の人件費は、ドル建てのプロジェクトにおいて従来より低い水準になります。日本企業が参加するチャンスが増えます。
一方、前回のサウジアラムコとペトロナスの事業(同じペンガラン地区)では、中国の企業が大活躍しましたから、今回も中国の企業は沢山参加するでしょう。
多くの中国・日本の専門職やマネジメントがマレーシアに長期滞在することになり、彼らはマレーシアでの仕事で高い所得を得ます。マレーシア国内の物価レベルにも精通します。
すると、こういった海外の人々は、MM2Hに強い関心を持ちます。
外国人を対象とするアパートやコンドミニアムが沢山建設されます。日本や中国の料理店が増えます。
さて、前提として最低でも3000億円の事業と書きましたが、これは「最低レベル」であり、サウジアラムコとペトロナスの協業規模によっては1兆円規模になっても不思議では有りません。
マレーシアの2024年の国家予算は歳出予定で12兆円規模(サウジアラムコの年間事業利益の50%程度の金額)ですが、このうち2.7兆円規模の歳入不足が未解決です。
1兆円規模のプロジェクトが始まれば、当然税収も増えますから、こういう大型案件が始まることは首相は当然期待感を持つわけです。
問題は、「いつ始まるのか?」です。
今回の報道では、プロジェクトの開始時期は全くわかりません。
最後まで参照いただき、ありがとうございました。
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