【MM2H最新情報】最適未満 アルジャジーラ論説 

MM2H

この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。

カタールのニュース放送局であるアルジャジーラ(Al Jazeera)は、同じイスラム国としてマレーシアの政治・経済・観光に注目しています。

2023年末、アルジャジーラのオンライン報道サイトが、マレーシアのMM2H改正情報に反応して詳しい論説をアップしました。内容をみると、しっかりと調べた上で、情報量が多く、格調高い論説になっていますので、筆者のサイトでも紹介させていただきます。

この論説を読むと、MM2Hが発足してこれまでにどのような経緯があり、承認条件がどのように変わってきたかが一望できます。そして、既に始まっている段階的な条件改正の先行きについても有識者から耳よりな情報を引き出しています。

論説の最後には、外国人移住者を扱う弁護士の意見として、マレーシア国内での「在宅ワーク」を認めて、MM2H利用者に就業機会を与えるアイデアがあると紹介しています。筆者はこの点に最も興味を持ちました。

今後MM2Hを検討している読者の皆さまには「おすすめ」の論説です。

論説 マレーシアMM2H改正 慎重に歓迎する利用者

アルジャジーラ・オンラインサイト(2023年12月26日)

アルジャジーラのオンラインサイトにアップされたMM2Hの記事

東南アジア屈指の人気移住先、マレーシア。温暖な気候、世界的に人気の食文化、マレー、中国、インド、先住民文化が織りなす魅力にあふれたこの国への移住、あるいは延長滞在を希望する外国人にとって、政府が発表した「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」ビザの新たな条件は、複雑な感情を呼び起こしました。

これまで、マレーシア移住の大きな障壁となっていた(申請者の)「収入額」と「流動資産額」の最低基準が今回の改定で緩和され、多くの外国人居住者は安堵の息をついています。しかし、約1年にわたる真剣な検討期間を経て発表された詳細の中には、明言を避けた項目もあり、一部の申請希望者は落胆しています。例えば、最低収入(月収)要件が残るのか、50歳以上の申請者が対象となるのかといった点が不明確なのです。

「新しいルールは(MM2Hの)ビザ・プログラムをより多くの利用者に開放するが、まだ不明瞭な点もいくつかある」と、外国人向けの出版社TEG MediaのCEO、アンディ・デイビソン氏がアルジャジーラ紙にコメント。

「最も重要なのは月間収入要件。これが既存のMM2Hビザの申請者にとって最大の障害だった」

2002年に開始されたMM2Hプログラムは当初、一定の資産と投資条件を満たす外国人に最大10年間のマレーシア滞在を認めるものでした。そして、16年間で約57,000件の申請が承認されています。

しかし、2018年以降、このプログラムの「再評価」が繰り返され、結局は2020年のCOVID-19危機とそれに伴う国境閉鎖により一時停止になりました。

2021年に復活したプログラムは、月間収入最低4万RM(約8,662米ドル)という厳格な規制を導入。これは以前の1万RM(約2,165米ドル)から大幅に引き上げられ、特に退職者にとっては高嶺の花となっています。

事実、この変更後の2年間で、MM2Hプログラムの申請件数は90%も減少していました。

12月13日にマレーシアの張慶信(観光)大臣が発表した変更は、MM2Hを一般の外国人にとって現実的な選択肢にするものです。

改正プログラムでは、ビザの対象年齢が従来の35歳から30歳に引き下げられました。また、従来固定だった100万RM(約21.7万米ドル)の預金条件も、Silver、Gold、Platinumの3つの階層に応じて50万RM(約10.8万米ドル)、200万RM(約43.3万米ドル)、500万RM(約108万米ドル)から選択できるようになりました。

SilverとGoldは5年と15年の居住資格、Platinumは、取得が難しいとされてきた永住権の取得資格が付帯しています。

注記:実際には永住権の審査を受けることが出来るよいうものであり、自動的に永住権は発行されないし、別途厳しい審議を受けるという情報です(筆者)

Aerial view of Putra mosque with garden landscape design and Putrajaya Lake, Putrajaya. The most famous tourist attraction in Kuala Lumpur City, Malaysia Photo by envato elements (all rights reserved)

MM2Hビザ保有者はマレーシア国内での最低滞在要件が従来の90日から60日に緩和され、配偶者や子供などの扶養家族による滞在期間も合算されるという条件となりました。

張大臣は「目的は、批判の多かったMM2H申請手続きを簡素化し、柔軟性と明確さを高めること」と述べていて、これらの改定が予備的なもので、最終的な応募条件は段階的に発表されると付け加えています。

ただし、張大臣の発表は、収入や資産要件については言及しておらず、変更の正確な導入日も示していません。

ペナンを拠点とする移民問題を扱う弁護士のサム・チョン氏によれば、「大臣が述べたように、新しい基準は確かにシンプルで明確だと私も思います」

「申請の審査段階で財務状況を確認するための水面下の調査項目として、以前のような高額の月間収入証明の提出要件が復活しないことを願っています」

つまり、チョン氏はマレーシア政府が再びビザ取得を困難にするような条件を導入することはないだろうと「楽観視」しています。

「銀行預金の残高証明や無犯罪証明は事前審査で必要になるかもしれませんが、申請者が自分で生活できることを示すためであって、以前の厳しい財務基準は適用されない可能性が高いです」とのこと。

残る疑問と期待

マレーシア政府が発表したMM2Hビザの改定案は、賛否両論を呼んでいます。確かに資産を預託する期間と金額は決して少なくありませんが、全カテゴリーのビザ保有者が1年経過後に預金の50%を引き出し、不動産購入や医療費、旅行費用に充てることができるという新制度は大きな魅力です。

フィリピンからの潜在的な申請者であるマイケル・サントス氏は、今回の改定を歓迎しています。「不動産購入が容易になり、申請手続きも効率化されるはずだ。以前の条件は高すぎて現実的ではなかった。あんなに高額な預託条件では投資家を惹きつけられはしない。」

外国人にとって難関である永住権取得の可能性を秘めたPlatinumグレードの詳細は、最大の疑問点のひとつ。「確かに興味深いオプションだが、申請手続きの難易度や取得までの期間が不明確だ。これは申請者から最初に出て来る質問になるだろう」とデイビソン氏(前述のTEG Media CEO)は述べ、高齢者を対象とした特定の退職ビザの発表を望んでいたと付け加えました。

長期にわたってマレーシアに居住する外国人にとって、永住権への現実的な道筋は、長期滞在に付き物の不安の解消につながります。「COVID-19パンデミック前にMM2Hビザを取得し、Platinumの再申請を検討している」と語るイタリア人ビザ保有者は、匿名を条件に「永住権があれば、人生の大半を過ごしたこの国での、永住が保証される。この制度は、高額な手数料が無く、預金条件のみである点で、他のアジア諸国の制度と比べても厳しいとは言えない」と述べています。

また、為替レートについても、「ユーロに対するリンギットは、20年間で8%の減価があったが、固定預金の高金利で十分に補われている」と語っています。

一方、既存のビザ保有者は、改定が自分たちにどう影響するかを慎重に見守っています。「2019年に取得した古いMM2Hを持っている私は、ただひたすら政府が既存の条件を維持してくれることを祈るだけ」と話すのは匿名の英国人ビザ保有者。

「新たな法律や複雑な基準の導入は混乱を増すだけだ。Apple to Apple で公平に比較すれば、マレーシアはタイやインドネシア、場合によってはフィリピンにも競争で負けるだろう」と懸念を表明しています。

前述のチョン弁護士は、制度の改善の方向性自体は支持しつつも、ビザ保有者が一定の条件下で就労できるか否かの明確化も必要だと指摘しています。

「利用者は年がら年中ゴルフだけをしていたいわけではない。私のクライアントは豊富な知識と経験の持ち主だ。外国ビザ保有者が就労することを認める条件として、マレーシア人へのスキル移転や知見と技術の継承指導を義務化すれば、国と滞在者の双方にとってメリットのある状況が生まれるだろう。就労の定義も必要だ」と述べました。

「例えば、外国人がマレーシアのアパートに居ながら、リモートワークを行うことは可能か?この外国人はマレーシア国内の誰からも雇用を奪うわけではない。このようなリモートワークを行う人は、所得を申告し納税する必要があるのか?リモートワークを認めることは、外国人にとって就労機会となり、マレーシアにとっては税収増にもつながる可能性がある」と述べています。

Travel and vacations concept – exotic paradise. Long jetty at Perhentian Islands in Malaysia. photo by envato elements (all rights reserved)

参考 アルジャジーラ(Al Jazeera)

アルジャジーラは、アラビア語と英語でニュース等を24時間放送している衛星テレビ局。本社はカタールのドーハにある。タグラインは、「一つの意見があれば、もう一つの意見がある(the one opinion and the other opinion)」。

wikipedia のアルジャジーラの説明文に掲載されている同社の英語放送のスタジオ風景 Photo by Wikipedia “Al Jazeera”

英語ではAl JazeeraもしくはAljazeeraと綴られる。JSCと表示されることもあるが、これはJazeera Satellite Channelの略。

「ジャジーラ」はアラビア語で「島」「半島」を意味し(「アル」は定冠詞)、アラブ地域では一般的にアラビア半島を指すが、ここではカタール半島を指す w:Al Jazeera。なお、サウジアラビアの新聞など、中東諸国にはこれ以外にも「アルジャジーラ」の名をもつ報道機関が存在するが、それらとの直接的な関係はなく、別の組織である。

1996年11月1日、カタール首長であるハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニーより5億カタール・リヤル(1億3700万USドルに相当)の支援を受けて設立。独立を保った報道姿勢を保ちつつも、会長には首長の親戚であるハマド・ビン・サーメル・アール=サーニーが就任し、カタール政府を通じた経営という形がとられた(カタール政府以外にも、個人投資家達が加わっている)。2015年以降は財政難となり、リストラを行ってきている。

イギリス人ジャーナリスト ヒュー・マイルズ著「アルジャジーラ 報道の戦争」によると収益の多くを海外メディアからの「映像使用料」が占め、特に日本放送協会(NHK)が払う金額が一番大きく、同局の大きな助けとなっている。

出典: Wikipedia 「アルジャジーラ」

参考 各国メディアの反応

当サイトでは、これまでMM2Hの新条件の発表への反応として複数の声を紹介してきています。一番下の23年7月の記事から上の4記事で、これまでの経緯の詳細が紹介されています。

Kuala Lumpur, Malaysia cityscape in the evening. photo by envato elements (all rights reserved)

本日も最後まで参照いただき、誠にありがとうございます。

■ 【MM2H体験】の本編はこちら → 本編【MM2H体験】

■ 【マレーシアの「おすすめ」80選】 → まとめ記事はこちら

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