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トラブル発生から半月以上が経過しても、今だに落ち着きを見ない馬国内の「靴下と小売店ボイコット」騒ぎは、全国の地域住民から上は国王陛下まで巻き込んだ「お家騒動」となりました。
状況が複雑化したので、これまでの経緯をまとめました。その上で、4月3日の動きを紹介します。
これまでの経緯
2024年の3月13日、SNSにイスラムの神格である “Allah” のプリントが入った白い靴下の写真がアップされ、馬国のムスリム社会に衝撃が走りました。
人の足を包む靴下に、ムスリムが最も重要視する神格を意味する文字を印刷すると言う「侮辱行為」は看過できない。ムスリムは一様に怒り、傷つきました。
最初に大きく反応したのは、他でもない、マレーシアの第17代国王陛下でした。
発信された国王のコメントには、この靴下を世に出した者を「厳しく罰すべし」と言う「指示」とも思える一文が含まれていたのです。
マレーシア警察は飛び上がるように反応。瞬く間に靴下が販売されていた全国規模の24時間営業のコンビニエンス・ストアー KK mart と、同店舗に靴下を流したベンダー(流通業者)であるXin Jian Chang Sdn Bhdを取り調べます。
結局、問題の靴下は流通した18,800足のうちの5足だけでしたが、ことの重大性を充分に認識した KK mart の創始者 KK Chai 氏は、即座に謝罪会見を行い、涙ながらに同社の過失を認めて謝罪しました。
まさに注意1秒・怪我一生です。
しかし、この謝罪会見だけでは、ムスリム社会の怒りはおさまりません。
とうとう、イスラム系政治政党であるUMNOの青年団長(Dr Muhamad Akmal Saleh)が全国に 800店舗ある KK mart に謝罪メッセージを示すバナーを設置することを公に要求。そして国民に対して KK mart のボイコットを呼びかける時代となります。
このボイコット運動で、Akmal氏は、 KK mart に対し、このコンビニ事業はたたんで、別のビジネスを考えよとの提案まで出しています。
そして、この青年団の発言をUMNOの最高評議会は「支援する」との声明を配信認め、各メデイアは揃って靴下問題が大炎上した事実を報道したのです。
マレーシア国内では、有識者やムスレム以外の国民から、KK mart に同情的な意見が続出し、Akmal氏のボイコットやUNMOの支援声明は「やりすぎ」であり、商人の過失を政治的な自己主張の道具にしているといった非難が出始め、
馬国の首相や政府のトップも、「処分は司法と警察に委ねて、この件の論争はやめよう」と呼びかけます。
そして、当事者の KK chai氏とその家族、そしてベンダーの代表者が検察当局から重大な宗教的不敬罪の容疑で書類送検され、司法は容疑者を召喚して尋問を行っています。(判決は出ていませんが、万RM(60万円)以下の罰金、3年以下の懲役、これらの何れか、または両方が課せられるとしています。)
馬国の有識者などの自粛要請が出る中、騒ぎのきっかけの一つであった国王陛下からは、「この事件っで揚げ足取りを取り合うのはやめなさい、警察と司法に処分を委ねなさい」と言う声明が出て、一件落着という雰囲気でした。
ところが、ボイコットを呼びかけてきたAkmal氏は、あくまでイスラムへの挑発的行為を糾弾する目的で、一歩も引かない構えです。彼が代議員を務めるマラッカ地区では、非ムスリムの市民からAkmal氏の暗殺を予告するような発言も出て、逮捕されるといった不祥事も発生。
そうこうするうちに、Perak州 Tapah の Bidor という街で、何者かが KK mart に火炎瓶(報道では Molotov Cocktail )が投げつけられるという明らかな武力攻撃が発生、そして、Pahang州のKuantan でも火炎瓶が投げられ、商品の一部が燃えるという事件、そして、最も民族間の融和が充実しているサラワク州の Kuching でも火炎瓶が投げられて、飲み物を入れた木箱が燃えるという事件が発生しました。
我々日本人の感覚では、靴下に宗教系の文字がプリントされたことで、コンビニの店舗に火炎瓶が連日投げつけられるというのは、通常では考えられない事態です。また、ボイコット派のAkmal氏も、火炎瓶騒ぎについては「もってのほか」と暴力行為を糾弾。
野党陣営のイスラム系政治政党であるPASの一部からは、火炎瓶攻撃を先導している第3の容疑者の可能性を追求すべきとの声もある中、華人政党であるMCAの上院議員からは、Akmal氏は今回の騒ぎで引責辞任すべきではないかとの発言も出始めています。
また、ボイコットをサポートした政党UNMOに対しては、連合政権を運営する同胞の政党関係者から、「与党の印象が悪くなる。いい加減にして、振り上げた拳を下ろしたらどうだ」との声もあります。
国家安全保障会議(NSC)の招集要請
Guan Eng urges PM Anwar to call for emergency NSC meeting after latest arson attack on KK Mart
malay maly, Tuesday, 02 Apr 2024 12:17 PM MYT
4月2日の malay mail の報道によれば、(主たる支持基盤を華人に置く中道左派の)野党のDAP( Democratic Action Party ) の党首Lim Guan Eng氏は、
度重なる KK mart への火炎瓶攻撃を重く見て、政府は「国家安全保障会議(NSC)」を招集すべきだと提言しています。
マレーシア国家安全保障会議(NSC、マレー語の略語は MKN )は、首相府直下の連邦機関で、国家の安全保障に関連ついて政府に助言し、政府機関や部局間の連携を調整して、国と市民の安全と福祉を確保する責任を負います。首相が議長を務め、執行メンバーには副首相、NSC事務局長、国防大臣、内務大臣、通信・マルチメディア大臣の3名の閣僚、政府最高秘書、国防軍参謀長(CDF)、警察総監(IGP)が含まれます。
Lim 党首は、3件目の火炎瓶事件の発生が民族間の協調が非常に良いサラワク州で発生したことを根拠に、「今や全国の KK mart 店舗が全て不安全な状況に晒されている」とした上で、
国王陛下や首相レベルから慎重な行動要請が出ていたにもかかわらず、サラワク州の事件が起きていることを重く見ており、UMNO青年団のAkmal氏の KK mart のボイコット要請も未だ撤回されていないとしています。
「Akmal氏はボイコット運動は、政党のモチベーションや KK mart の糾弾を意図した活動ではないと説明したが、火炎瓶攻撃は止まっていない。」
Lim氏が問題視しているのは、KK mart の経営者が、謝罪した上で、裁判所に出頭して裁きを受けているのにもかかわらず、さらに攻撃を受けていることです。
KK Chai氏が国王陛下に謁見謝罪
4月3日の malay mail の報道によれば、遂に KK mart の創始者がマレーシア国王に謁見し、靴下の件で直接謝罪しました。
KK Mart founder apologises to King for ‘Allah’ socks controversy
malay mail, Wednesday, 03 Apr 2024 3:44 PM MYT
KK mart の会長であり創業者でもあるDatuk Seri Chai Kee Kan氏(以下 Chai氏)は、遂に第17代マレーシア国王に謁見して、靴下問題を起こした件について陳謝しました。
クアラルンプールの王宮(Istana Megara)での約15分間の謁見について、国王からはSNSを通じてChai氏から誤った靴下の販売に関する過失について許しを求める謝罪があったことが公表されました。
国王よりは、として、「今後、再発することの無いよう、全ての関係者が責任を負うべきである。国王として最後の発言とする」としています。
また、この件で、全ての関係者は互いに揚げ足取りをすることの無いよう再度念押しをするとの発言もあったとのこと。「関係者」という意味は「民衆」も含まれていることも協調され、本件(騒ぎ)がこれ以上長引かないことを望む。
としています。Chai氏に対して「許す」という明示的な発言は無かったものの、KK mart だけが責められるべき問題ではないとの見解が出されたことは、大きな意味があります。
国王が安易に「許し」てしまうと、また関係各局が混乱するのでしょう。
Akmal氏のボジションは変わらず
Despite King’s call for closure, Umno Youth chief says no let up on KK Mart boycott
malay mail, Wednesday, 03 Apr 2024 9:24 PM MYT
会長の KK Chai氏が国王に陳謝しました、国王陛下は、関係者全員の責任であることを協調して、これ以上の揚げ足取り合戦の停止を指示、UMNO関係者もボイコットに拘ってはいません。
それでもAkmal氏は自説を曲げないようです。
4月3日の malay mail は、Akmal氏が Malaysiakini 紙に話した内容について次のように報道しています。
Akmal氏のポジションとして、ボイコットは継続すると発言。
Akmal氏は、イブラヒム国王陛下の発言中「ボイコットを止めよとは言っていない」と説明。
Akmal氏は、ボイコット推進派の人々は「強要されて」始めたのではない。暴力行為はやめて、平和的にボイコットを続けるべきだとしています。
malay mail 紙は、こういったAkmal氏の見解を受けて、次のようにUmno党内の動きを報道しています。
- UMNOの党首である Datuk Seri Ahmad Zahid Hamidi氏は、Akmal氏に対し、靴下問題をいじり回すのを止めるよう促している(サバ州のUmno代表の情報)
- サバ州のUMNO代表の理解として、UMNOはAkmal氏を支持していない
- サバ州代表の発言は、UMNO 事務次官Datuk Asyraf Wajdi Dusukiの発言と矛盾している(UMNO最高評議会はAkmal氏の発言を承認した)
全体的に、UMNOの党内の意見の統制は取れていませんね。
武力行為は否定しているものの、 KK mart に対するボイコット運動では、Akmak議員は孤立しているように見えます。
最後まで参照いただき、ありがとうございます。
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