【馬国新幹線】日本不参加でもHSR続行 運輸大臣

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建設コストが2.7兆円と報道されているKLからシンガポールまでの新幹線の建設プロジェクトですが、先に日本勢が撤退表明を行ったことで、馬国メディアが「このまま進めるの?」と不安を投げかけています。

HSRは心配ないと答える運輸大臣が報道されました。

入札への参加資格を確認する最初のスクリーニングであるRFIプロセスが終わると、入札業者が明らかになるわけですが、運輸大臣は充分な応札グループ数が集まることに自信をもっており、日本が不参加でも、首相レベルで「待った」がかからない限り続行のようです。

しかし、JRを主体とする日本の企業グループが不参加という事実がこれだけメディアを騒がせるわけですから、馬国の民間レベルが中国製の高速鉄道に若干の懸念をもっているような雰囲気が感じ取れます。

現時点で不可解なのは、プロジェクトを運営する MyHSR Corporation が、政府の100%子会社であり、出資金は政府が出すことになっているのに、日本勢が「マレーシア政府の財政支援の保証がない」としている点です。

筆者の憶測では、恐らく日本勢はMyHSRがどの程度資金を準備していて、マレーシア政府がどの程度投資する予定であるか調査した上で、今後の新幹線プロジェクトのコストを充分に賄えないと判断したものと思われます。

大型プロジェクトにとって、遂行途上で施主の資金が無くなること程「恐ろしい」リスクはありません。不採算のメガ・プロジェクトに関わると、仕掛り分のコスト回収が焦げ付いてプロジェクトはおろか、企業財政に致命的なインパクトを与えかねません。

今後政府から出て来る情報に注目しましょう。

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新聞報道(2024年1月13日 The Star online )

日本企業の参加なしにHSRは大丈夫なのか? と 言わんばかりのメディアの質問に淡々と答える運輸大臣。 

クアラルンプール-シンガポール高速鉄道プロジェクトは、一部の日本企業が情報提供依頼(RFI)プロセスへの参加を断ったとの報道の影響を受けないだろうと運輸大臣の陆兆福氏が述べた。(1月13日土曜日、タイプーサムに向けての運輸省の取り組みを発表した後の記者団との懇談)

運輸大臣は、一部の企業が撤退したからといって、プロジェクト全体を中止すべきではないとしている。

「参加の可否は彼ら次第だ。1社興味がないからといって、すべてを止めるべきではない。」

「他にも多くの企業が関心を持っている。」

数百社が関心を示しているという情報も得ているとした。

どの企業かと尋ねられた際、大臣はMyHSR Corporation Sdn Bhd (MyHSR)が担当しているため、知らないが、1月15日のRFI締め切り後には、プロジェクトに関心のある他社が明らかになるだろうとした。

アンワル首相兼財務大臣は1月12日金曜日に、政府は日本鉄道企業のHSRプロジェクト撤退決定の影響を検討すると述べている。

アンワル氏は「内容を見てみます。レポートをちょうど受け取ったところです」としている。

共同通信の報道によると、日本企業は「マレーシア政府の財政支援なしではリスクが高すぎる」として、HSRプロジェクトへの関与計画を撤回したという。

2023年7月、MyHSR Corporationは、民間セクターが官民パートナーシップモデルを通じてHSRプロジェクトのコンセプト提案を正式に提出できるように、RFIを開始。プロジェクトに関するRFI説明会を開催し、700社以上の国内外参加者が集まったと伝えられている。

RFIの実施は、HSRプロジェクトを(新しい資金調達メカニズムと執行モデルを通じて)復活させ、鉄道輸送インフラを強化し、国の経済を活性化させる政府の取り組みを示している。

The Star online January 13, 2023
KL Sinapore HSR plan ( wikipedia on KL Singapore HSR )

MyHSR Corporation Sdn Bhd

MyHSR Corporation Sdn Bhd (MyHSR Corp)はマレーシア財務省100%出資会社。

logo by wikipedia article “MyHSR Corporation Sdn Bhd”

マレーシア側クアラルンプール-シンガポール高速鉄道プロジェクト(HSR)の開発者および資産所有者として2015年に設立されました。今のとこ民間の融資が関与しているといった情報はありません。

wikipedia 情報では、HSR建設の主な目的は、東南アジアで最も活気があり急速に成長している経済エンジン2つを結ぶことで、クアラルンプールとシンガポール間の移動時間を90分に短縮することです。さらに、HSRはマレー半島の小都市を2つの大都市と接続することで、それらの都市を開放し活性化させる機会となるとのこと。

運輸大臣 陆兆福、Anthony Loke Siew Fook

アンソニー・ロケ・シュウ・フック(1977年4月28日生まれ)は、マレーシアの政治家。2022年12月からアンワル首相のもとで連立政権の運輸大臣に就任。以前、2018年5月から2020年2月までの期間、マハティール前首相のもとで同職を務めた経験もある。

2013年5月からセレンバンの国会議員(MP)、2008年3月から2013年5月まではラサ地区のMP、2013年5月からヌグリ・スンビラン州議会議員(MLA)。

2022年3月から第6代DAP (Democratic Action Party)事務局長、2018年7月から2022年3月まではDAP第2議会党首、以前はDAP全国組織局長及びDAP青年団 (DAPSY) 団長を務めた。またヌグリ・スンビラン州野党党首とヌグリ・スンビラン州人民同盟州議長も務めている。

photo from wikipedia “Anthony Loke Siew Fook”

追加情報 RFI締め切り後の報道

シンガポールの cnaは同日(1月15日)にRFIの締め切り結果を報じています。馬国の全国紙のオンラインでも同内容がアップされていますが、 cnaの報道内容が最も充実していました。以下、要約です。

Kuala Lumpur-Singapore High-Speed Rail (KL-SG HSR) projectに応札予定の企業グループは7グループ(全31社)と判明。

マレーシアでの開発とプロジェクト遂行の主管である MyHSR Corporation Sdn Bhd (略して MyHSR Corp )が展開したRFIに対し、上記の企業グループの回答があったもの。

MyHSR Corp はマレーシア財務省の100%子会社で、同国の運輸省の運用指導を受けている。

RFIで求められたのは

Design-Finance-Build-Operate-Transfer (DFBOT) model

と称する「設計・資金調達・建設・運転・引き渡し」の全てを遂行する提案書(Concept Proposal)であり、提出する企業グループは「予算・品質・納期を遵守した高速鉄道システムとサービスの開発と運営」を担う総合的な遂行能力と技術力を明示することが求められる。

MyHSR のFauzi Abdul Rahman会長によれば、各グループの提出書類の評価結果は運輸省に提出され、マレーシアの閣議で審議される。

同会長によれば、審議結果が良好であれば、KL-SG HSRプロジェクトは第二段階のRequest for Proposal (RFP) stage(入札)に移る。(応札を依頼されるのは、審議の結果として選抜された企業グループ)

New Straits Times (NST) の情報では、マレーシア国内からのRFIへの提案書の提出が期待されているはYTL Group Berjaya Group の2つの企業グループ。業界筋の情報では、この2グループ以外にもMalaysian Resources Corp Bhd, Econpile Holdings Bhd and Gamuda Bhdが含まれるという。

各企業グループはプロジェクト遂行組織と商業面の運用モデルを示すことも要求されている。

このプロジェクトが息を吹き返したきっかけは、2022年のマレーシア総選挙を経て、アンワル首相が政権を握り、昨年早々に同首相がシンガポールの首脳を訪問したことによる。

昨年8月3日のシンガポール国会において、当時の運輸大臣Chee Hong Tat(徐芳达)氏がKL-SG HSRプロジェクトに言及し、シンガポールはマレーシアの新たな提案を「全くの白紙から」前向きに協議すると発言している。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

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