この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
マレーシアの Parliament（国会）についてネット上の日本文の資料では読み取れない情報をご紹介する「知っときたい馬国政府と議会」の解説記事です。
前回の記事では、馬国の国会の構造、選挙区や両院制の仕組みを解説しました。
今回は、馬国の法律を起草・改訂する議会の仕事をまとめてみました。
新しい法案や改正案は、担当大臣が準備した後に内閣に提出され、前回紹介しました代議院で３回、元老院で３回の審議を経て、国王がチェックして初めて発行になります。
ある程度詳しい手順が、英文の Wikipedia に掲載されていましたので、わかりやすくまとめてみました。
筆者も知らなかった、馬国の法案の審議の手順がわかります。
法案が生まれて国会で可決するまで
新しい法案（ bill ）や改定案 の準備は、通常、大蔵省、総務省、運輸省等、各省庁の担当大臣（あるいは担当省）が行います。法律の立案や改訂に関する文章ですから、司法長官の事務所がサポートすることになっています。
省庁の大臣以外の議員やグループが法案を起案する窓口もあるにはありますが、そのルールは複雑で解釈が難しいため、実行されることはほとんど無いようです。
起草された法案を最初に検討するのは内閣です。内閣に受け入れられない法案はこの時点で没になります。
内閣が同意した法案は Dewan Rakyat（マレーシア代議院）の全ての議員（MP）に配布され、議会が招集されます。（法案が国会に提出された瞬間）
Dewan Rakyatによる法案の審議は reading （リーディング）と呼ばれています。当たり前ですが、法案を読むだけでなく、審議が行われます。
この reading（審議）は3回行われます。
最初の reading は、担当大臣、あるいは副大臣による法案の（国会への）提出です。2回目からは全議員による法案審議が開始されます。そして、３回目が採決です。採決を申し入れるのは、法案を起草した担当相（大臣）です。
法案は下院（Dewan Rakyat）の単純過半数の賛成票により可決されます。憲法の改正だけは例外的で、下院の３分の２の賛同を必要とします。否決されれば廃案になります。
下院（Dewan Rakyat）（＝代議院）で可決された法案は、次に上院（ Dewan Negar a＝ 元老院）に提出されます。そして、元老院でも代議院と同様に3回の reading が実施されるのです。
前回の記事でも触れましたが、元老院は、下院が可決した法案を廃案にする力は持っていません。できるのは、法案を否決することだけです。
元老院が法案を否決した場合、最終的な法案の可決が１ヶ月遅れます。そして１ヶ月が経過するとその法案は、元老院で可決されたと見做されて、国会による法案の可決となります。
元老院が一度でも否決したという事実は大きく残りますし、この後の国王による審議にも一定の影響があると思います。
以上の段取りで、国会両院で法案が可決されると、その法案はマレーシア国王に提出されます。
国王による承認手順
マレーシア国王の法案審議は30日という期限があります。30日の審議期間に国王が法案に合意できない場合、法案は改定案のリストとともに国会に戻されます。
国王が合意しなかった場合、国会側は、さらに30日の期限を持って法案を再検討して、検討結果を国王に再提出しなければなりません。
再検討後の法案が国王に提出されてから30日で法案は成立します。この段階で国王の不合意に関するルールは説明がありません。（恐らく想定外）
新たな法案（あるいは改正案）が発行するのは、合意された法案が政府広報 (Government Gazette) に掲載された日です。
こうして多くのステップを経て合意された法律が施行されます。
下院特別会議（Special Chamber）
2016年、下院議長からある提案が出されます。
下院の通常の議事に割り込まずに「国家的な重要事項や緊急事態について議論する」ことを目的として、下院本会議とは別に下院特別会議を開催するというアイデアです。
与野党の指導者たちがこの動きを歓迎したので、2016年4月に下院常設規則が改正され、「政府が責任を持つ任意の行政事項」または「緊急の公共的な重要事項」に関する審議を行うために下院特別会議（Special Chamber）が設けられたのです。
Malay mail の報道によれば、2016年の5月に初めて開催された下院特別会議には、５名の与党議員と、16名の野党の下院議員が参加しています。
通常国会には、多くの法案や議案が提出されているため、重要な審議がなかなか進まず、閣僚や議員は不条理を感じていたようです。この下院特別会議（Special Chamber）のルールは与野党ともに好意的に受け入れられています。
立法府の役割 下院議長のスピーチ
2024年3月8日の The Star 紙のオンライン報道を紹介します。この報道は、ある意味、国家の役割を国民に説明するもので、情報ソースは 馬国政府の報道局である Bernama です。
以下、記事の要約
マレーシア国会（Parliament)が、国民から遠い存在になってはならない。下院議長の Tan Sri Johari Abdul 議員は、議会の役割と機能は適宜国民に開示されてしかるべきであると発言している。
議長は、特に地方の民衆は国会のなんたるかを知らない。彼らが持っている印象では国会は代議員が集まって何やら言い争って、机を叩いて、罵り合っている場所といった話になっているが、国会というのはこの国の法律を決める由緒正しい場所として知ってもらわねばならないとしている。
一例として、国会の生中継は、議会で起きていることを国民に知らしめているし、それぞれの選挙区から参加している代議員の役割を見せてくれている。
議会は、５年に１回の選挙の時だけ代議員（MP）を評価するのでなく、正しく選挙区の国民を代表した仕事をしているか確認すべきだと。
余談ですが、私たちも動画サイトにアップされている馬国の国会中継の録画を視聴できます。特に紛糾した場面では、日本の国会顔負けの罵声の飛ばしあいが繰り広げられていて、アンワル首相でさえも激しく抗議を受けている場面が見られます。（マレー語ですが）
TARIK BALIK PM を直訳すると「首相（のポジション）を撤回せよ」と言う意味です。辞任を求めると言うことでしょうか？この辺りは流石に理解が及びません。
上部のキャプションを訳すと、「大騒ぎ！アンワル氏を含む会議が緊迫し、PN（連合政党の代表？）は一斉に退場」といった意味になります。
Dewan Rakyatの会議においては、代議員（MP）はいかなる政府批判をすることも許されており、議会の外では同様の発言はできません。ですから会議の最中では、普段言えないことを思いっきり発言しているようです。
最後まで参照いただき、ありがとうございます。
続きはこちらです。（日本の国会との違いがはっきりわかります。）
この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
