アイキャッチ画像は、世界遺産候補のニア洞窟(日本語版 wikipedia に掲載の写真)
この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
私たち外国人が馬国を見る時、目の前に映る文化や政治経済を「マレーシア国」として見ているのですが、それ以外にも忘れてはならない国家遺産があることは、多くの有識者が力説している事実です。
今回の記事には、いくつか、最新で貴重な情報があります。長い歴史と広い領土を背景として意識した上で、「マレーシアにはどんな遺産があるか」を考える場合、そこに何らかの偏重があってはならないという強い牽制意見です。
この国の民度やインテリジェンスとも関係してきますが、以下の記事を読むと、我々日本人が思う以上にマレーシアは、まだまだその全てを国の一部として認知できていないようです。
この記事をアップした2024年5月23日からの馬国「国家統一週間」を機会に、マレーシアが今後どのような国に発展してゆくか、今以上の期待感を持ってMM2Hの今後を見守りたいと思いました。
我々もマレーシア人も、まだまだ馬国の自然遺産を発見しきれていないようです。
国会遺産に偏重があってはならない
特に気になった内容は太字にしました(筆者)。
“Anney, tapau one roti, bah…”
Sunday, 19 May 2024 the Star online
街の屋台で大好物を注文する時の「決まり文句」は、人それぞれであり、マレーシアの多様な民族的・歴史的背景を反映しています。こういった多様性を全ての国民が受け入れて、来たる「国家統一週間」を祝うべきであるというのが、この分野の専門家のコメント。
マラッカ市やペナンのジョージタウンにある植民地時代の建物から始まって、バティック織物の鮮やかな模様や、数多くの料理まで、マレーシアはその多様な歴史と民族が引き継いで来た遺産と文化に満ちています。
しかし、最近メデイアで騒がれている「ニュー・ヴィレッジ」と「バクテー(骨肉茶)」の議論のように、「何を持ってマレーシアの遺産とすべき」かについて論争が起きています。
専門家曰く、遺産を定義する方法は数多くあるが、重要なのは、国の人々の多様性とユニークな歴史を国家遺産の(偽らざる)背景として受け入れることであり、狭い視点からの選択ではなく、多様性を称えることだとしています。
USCI大学のイスラム建築の専門家、モフド・タジュディン・モフド・ラズディ教授は、「国全体で共有されているものだけ」を対象に国家遺産と見なすという考え方に反対しています。マレーシアが、そもそも多様な民族から成り立っているという事実がユニークなのだと言う考え方です。(USCI University Islamic architecture expert Prof Dr Mohd Tajuddin Mohd Rasdi)
「1963年にマレーシアを統一した時、サバ、サラワク、タナ・ムラユを含むすべての民族が、自動的にこの国の遺産にななった。(Sabah, Sarawak and the Tanah Melayu)
「ある人たちは、これに反論して、すべての人が共通して持っているものを遺産とすべきだと言います。何故、全民族が共通して持つ遺産が無ければならないのか?」
過去を否定すべきではない
国際記念物遺跡会議(Icomos)マレーシアの会長であるティオン・キアン・ブーン氏は、植民地起源のものもすべて国家遺産として受け入れるべきだと述べています。彼は、植民地時代の歴史を白紙に戻したり、否定したりする必要はないと考えています。(International Council on Monuments and Sites (Icomos) Malaysia president Tiong Kian Boon)
「植民地時代の歴史と今との辻褄合わせは必要はありません。ただ、事実として受け入れればいいのです。
「過去を否定してはいけない。好き嫌いに関わらず、過去は我々の史実です。受け入れ難い過去の出来事や人々に敵対するのでなく、それを受け入れて、同じ道を再び歩まないようにするべきです」
前述のタジュディン教授は、「マレー文化だけが国家遺産として認識されるべきだ」という考え方も、国として変えるべきだろうと述べています。
現在のマレー遺産に関する一般的な説明はあまりにも視野が狭い。この国が「マレー文化を唯一イスラム教だけと紐付たからです。」
「このために、かつてマレー人が仏教徒やヒンドゥー教徒、アニミズム信仰を持っていた過去の遺産を否定することになってしまいました。だから、あるマレー人の一部の人々は一つの遺産だけを保護しようとしているのです。
「つまり、この国全体の文化とイスラムを混同してしまっているのです。」
また、私たちが通常マレー建築と考えるものも議論の余地があると彼は付け加えます。
「マレー人の建築遺産とは何ですか?皆さんは木造のカンポンハウスだと言いますが、私は違います。」
「もしカンポンハウスだけが遺産なら、2,500年前のレンバ・ブジャンの建築遺跡をどう理解すればいいのでしょうか?(2,500-year old Lembah Bujang architectural remains) これは誰の遺産ですか?マレーの遺産ですか、それともインドの遺産ですか?」
国の遺産は進化している
Icomos のティオン・キアン・ブーン氏もまた、遺産は絶えず進化するものだとしています。
「すべての足にが収まるひとつの靴(くつ)などありません。たとえば食べ物を見てください。
「僕らが子供の頃は、チキンライスを食べるマレー人は居ませんでした。今ではそれもマレーの文化遺産です。」(nasi ayam)
同氏によれば、国家遺産の定義は、より包括的であるべきであり、特定の人種の遺産に焦点を当てるべきではないと考えています。
「特定民族の遺産に絞ることは、サラワクやサバの人々にとって非常に侮辱的な話であり、中国人やインド人も違和感を持ちます。」
オラン・アスリの活動家であるアマニ・ウィリアム・ハント・アブドゥラ、通称バ・トニーは、マレーシアは多文化、多民族の国であり、遺産もその現実を反映すべきだと指摘します。(Orang Asli activist Amani William-Hunt Abdullah, also known as Bah Tony)
「マレーシアの遺産にはオラン・アスリを含む他の人種も含めるべきです」
アマニ氏曰く、マレーシアの他のすべての民族グループと同様に、オラン・アスリも国家建設に貢献してきたことは認識されるべき事実だと。
「オラン・アスリには独自の文化、信仰の伝統、伝統的な踊り、そして特定の歴史があります。そして、私たちもマレーシアの国家建設に貢献してきました。この事実は軽視されるべきではない。包含されるべきです。
「オラン・アスリの地位を認識した上で、8月9日の国際先住民の日は国民の祝日にするべきです」。
マレーシアの世界遺産
How are World Heritage sites chosen?
Sunday, 19 May 2024 The Star online
ユネスコの世界遺産に選ばれることは、大変に名誉なことです。既に4箇所の遺産が有るマレーシアも例外ではありません。
世界遺産は、国際条約で保護されており、文化的、歴史的、科学的、その他の重要な意義が認められています。
マレーシアの文化的世界遺産にはレンゴン渓谷の考古学的遺産や、マラッカとジョージタウンの歴史都市があり、自然遺産にはグヌン・ムル国立公園とキナバル公園があります。
マレーシアはさらに多くの遺産をユネスコに登録しようと積極的に取り組んでおり、最新の提出事案は、2021年のサラワク州の「ニア国立公園」です。(Niah National Park in Sarawak)
サラワク州の観光・創造産業・舞台芸術大臣であるダトゥク・スリ・アブドゥル・カリム・ラーマン・ハムザ氏は、以前から、この「ニア国立公園」が今年中にもユネスコ世界遺産に登録されると予想していました。(Sarawak Tourism, Creative Industry and Performing Arts Minister Datuk Seri Abdul Karim Rahman Hamzah)
ユネスコの世界遺産は、どのように選ばれているのだろうか?
国際記念物遺跡会議(Icomos)マレーシア支部の会長であるティオン・キアン・ブーン氏によると、主な基準はその遺産が突出した「普遍的」価値を持っているかどうかだと述べています。(International Council on Monuments and Sites (Icomos) Malaysia president Tiong Kian Boon)
「普遍的というのは、国籍や背景に関係なく誰もが認める対象であることを意味します。」
彼は、マラッカとジョージタウンが世界遺産としての価値を持つ理由として、かつての交易港であり、香料貿易の歴史において重要な役割を果たしたことを挙げています。
「その結果、マラッカのショップハウスのような独特の都市形態が生まれました。
「マラッカの場合、まずオランダの先駆者がいて、その後イギリスがやってきて、イギリスがペナンに持ち込んで、それが世界的な価値を持つようになったのです。」
ユネスコのウェブサイトによると、遺産は突出した (outstanding) 普遍的 (universal) 価値を持つだけでなく、別途規定された10の選考基準のうち少なくとも1つを満たさなければなりません。
この基準を満たすかどうかを判断するプロセスには何年もかかることがあります。
ティオン氏は、ユネスコに送るための詳細な資料を作成するのに多額の費用がかかる事実を理由に、州当局がユネスコに遺産の候補を提出する立場を取ることが重要と話しています。
曰く、「遺産の候補がユネスコに提出されると、それが世界中に送られ、専門家がそれをレビューします」
遺産は暫定リストに掲載されることがあり、最終的に数年後に議論の対象となる最終候補リストに掲載される。
幸い、「ニア国立公園」の提出事案も、「議論段階」に進むことになることが確認されています。
参考 ニア洞窟
ニア洞窟(ニアどうくつ、マレー語: Gua Niah)は、マレーシアのサラワク州ミリ省にある石灰岩の洞窟。この周辺はニア国立公園(英語: Niah National Park)として1974年に国立公園に認定されている。国立公園としての面積は31.4平方km。2010年には世界遺産にノミネートされた。
ニア洞窟は南シナ海から17キロメートル程度内陸に行った場所、ミリの町からは南南西65キロメートル地点にある。大洞窟は南北 1km、東西 0.5km 程の巨大な石灰岩の中にあり、東南アジアで最古の人類の活動の痕跡が残っている。考古学的に重要な遺跡でもある。
前史時代の遺跡としては非常に重要で、約4万年前の人間の痕跡が見つかっており、これは東マレーシアでは最古。2006年に発表された論文によればこの洞窟の最古の痕跡は34,000年前から46,000年前であるという。大洞窟から南東に150メートルほど行った地点にある、石灰岩の小さい洞窟であるPainted Caveには1,200年前に描かれた壁画が残っている。
日本語版Wikipedia 「ニア洞窟」
国家統一週間 (National Unity Week)
National Unity Week 2024 set to showcase Malaysia’s diversity By Bernama
2024年5月23日から26日にジョホールバルで開催される「国家統一週間 (National Unity Week)」の祝典では、マレーシアの多様で豊かな民族と文化が披露されます。
国家統一省コミュニティ開発部のザイミー・シャアリ次長によると、パダン・アンサナ(Padang Angsana)とベゴニア・アンサナ(Begonia Angsana)・ジョホールバルモールで行われる4日間のプログラムで、統一の価値を市民に理解してもらうための様々なエキサイティングなプログラムが用意されています。(National Unity Ministry’s Community Development Division undersecretary Zaimy Shaari)
「多様性の中の統一(Unity in Diversity)」をテーマにしたこのプログラムは、理解、尊重、受容という三つの原則に基づき、複数の文化、習慣、信念を持つマレーシア人どうしの統一意識を強化することを目指しています。(three principles, namely understanding, respect and acceptance)
「今回は、22の民族グループを代表するさまざまな家屋を展示するユニークな『ルマ・カミ』展が開催され、オラン・アスリの集落やイバン族の長屋も展示される予定です。(‘Rumah Kami’ exhibition featuring houses representing 22 ethnic groups alongside the Orang Asli settlement and the Iban longhouse)
訪問者を待ち受けるイベントには、伝統的なスポーツ、展示会、異文化パフォーマンス、ラフマセール (Rahmah Sales) などが含まれます」
ザイミーはさらに、首相のダトゥク・スリ・アンワル・イブラヒムが5月25日に国家統一週間2024の祝典の開会式を主催する予定であることを付け加えました。(Prime Minister Datuk Seri Anwar Ibrahim)
政府は毎年5月の最終週を「国家統一週間の祝典」の期日に指定しています。
本日も参照いただき、ありがとうございました。
この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。