この記事は、筆者のMM2H体験情報の関連記事です。本編はこちらから参照下さい。
これまでのMM2Hの申請条件の推移はこちらを参照下さい。
この投稿でご紹介する3つの新聞記事に登場している47歳の女性議員は、単なる地方議員ではなく、弁護士事務所勤務から政界に進出して、馬国政府の会計監査委員長、観光副大臣、国会・法律担当首相府副大臣、起業開発・協同組合副大臣を務めてきたUMNO系の敏腕政治家です。結婚して4人のお子さんが居るそうです。
記事(BとC参照)のなかでいささか感情的になって憤慨している各大臣に対して、このMas Ermieyati女史は論理的かつ冷静な元与党議員として発言しています。スキャンダルもありませんから、国民のサポートもあるのだと思います。
そのMas Ermieyati女史が、MM2Hの改正内容が「安易に永住権の門を広げすぎる」、「30歳代の雇用機会を奪う」、「閣議決定がなされたのか不明確」といった疑問を投げています。
但し、この議論は現在の為替水準で「最低1億5千万円の定期預金」を条件とする PLANITUM グレードの申請条件。(記事A参照)
筆者から見て、30歳代で1億5千万円もの定期預金を契約できる人物や家族というのは、一時的に成功している芸能人ないしはスポーツ選手、あるいは青年実業家あたりでしょうから、馬国の30歳代の仕事を奪うタイプでは無なさそうに思えます。心配なのは日本以外の外国人の富裕層ということでしょうか? それに、そもそもMM2Hの利用者は馬国内で就業して給与を取ることは禁じられているはずです・・・
中国系の成金に安易に永住権が流れるといったことを危惧しているのかもしれませんが、予めMM2Hの利用者(セカンド・ホーマー)に人数制限を設けている馬国政府にとって足元の改正条件がそれほど脅威になるとは思えません。(ちなみに内務大臣は、記事BでErmieyati氏の言う「永住権がダンピングされる可能性」を否定しています)
心配なのは、「閣議を通ってない」のはダメという議論であり、このことが政府で話題になって、閣議で承認されるまで改正案が「塩漬け」になるのではないか?ということです。
SILVER CATEGORY の設定で、流動資産証明や海外での所得額の縛りが緩和される兆しがあるだけに、今回の改正案には期待が持てますが、しばらくは不安定な状態が続くのかもしれません。
記事A : 野党議員、MM2H制度改正に異論
FMT (Free Malaysia Today) 17 Dec 2023
マレーシアの野党議員 Mas Ermieyati氏は、改正されたMM2H永住プログラムについて、永住権取得の容易さや最低年齢の引き下げに疑問を投げかけた。元観光副大臣でもあるErmieyati氏は、審査の甘さが「外国人ダンピング」を引き起こす可能性があると批判しており、政府による閣議決定や内務省との協議が行われたかどうかも疑問視した。
マスジッド・タナ選出のErmieyati議員は、当初のMM2Hプログラムは年金生活者の移住を目的としていたが、改定により30歳以上であれば誰でも申請できるようになり、若年層の雇用機会を奪う恐れがあると指摘。
若年投資家誘致を目指すならば、投資・貿易・産業省管轄の新プログラム導入、もしくはプレミアムビザ制度の改善のほうが良いと主張した。
RM500万リンギットの定期預金を条件とするプラチナ・パス取得者の「永住権取得が容易になる」ことについても問題としており、「主権国家として、永住権を認める際には厳格な審査が不可欠であり、預金額だけで決めるべきではない」とFacebookに投稿。
通常、永住権申請にはマレー語会話能力、マレーシアでの就業経験、一定の学歴などの厳しい条件が課せられる。Ermieyati氏は、永住権保持者の子供は自動的にマレーシア国籍を取得できる一方、国外でマレーシア人母親から生まれた子が(永住権を)取得できないのは矛盾していると指摘。「自国民に対する差別であり不公平だ」と批判した。
Ermieyati氏は同日、MM2H制度への中国人参加に関する発言により、キン・シン観光・芸術・文化大臣から「扇動罪」容疑で調査の対象とされた。Ermieyati氏はこれに対し、「批判されて感情的になる必要はない。短絡的に憤慨しすぎだ」としている。
MM2H制度の改正については賛否両論があり、国民的議論を呼んでいる。政府によるさらなる説明と厳格な運用が求められる。
FMT (Free Malaysia Today) 17 Dec 2023
記事B : 内務大臣、「MM2H参加の中国人に自動永住権」を否定
The Star news online, Sunday, 17 Dec 2023
内務大臣サイフディン・ナスティオン・イスマイル氏は、Ermieyati議員が主張する「MM2H参加の中国人は自動的に永住権を取得できる」という発言を否定した。
サイフディン氏は、MM2Hプログラムの申請と促進は観光・芸術・文化省の管轄であり、承認は内務省が行っていると説明。また、12月17日夜、The Star紙の取材に対し、「現時点では内閣による方針決定はされていない」と述べている。
この発言は、マレーシア野党議員Ermieyati氏が、「改定されたMM2Hプログラムは中国人に永住権取得の道を開く」と批判したことを受けたものだ。先立って、観光・芸術・文化大臣は、Ermieyati氏の発言を「扇動罪」に当たる可能性があると主張し、調査を求めていた。
【MM2H制度の改正内容】
- プラチナ・カテゴリーの最低預金は500万リンギット(約1億5000万円)となり、1年後に150万リンギット以上の不動産を購入を条件に半額を引き出すことができる。
- 最低年齢は30歳に引き下げられた。
- 申請は観光省認定のライセンスを持つ代理店を通さなければならない。
- 扶養家族の範囲が拡大され、21歳から34歳までの未婚で就職していない子供も対象となった。
MM2H制度の改正については賛否両論があり、今後も議論が続いていく見通しだ。
The Star news online, Sunday, 17 Dec 2023 (内容を要約して掲載しました)
記事C : MM2H問題発言を叱責
The Star news online, Sunday, 18 Dec 2023
マレーシアの野党議員Mas Ermieyati氏が、改正された居住プログラム「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」の条件緩和で中国人に自動的に永住権が与えられると発言したことについて、政府関係者から激しい非難が出ている。
Ermieyati氏は、このプログラムが経済回復に貢献しているにもかかわらず、中国だけに有利なように操作されていると主張。これに対し、観光・芸術・文化大臣は、申請者は厳しい審査と財務チェックを経ており、出身国に関わらずプラチナ・カテゴリーの条件を満たさなければ永住権は申請できないと反論。
さらに、観光・芸術・文化大臣は「Ermieyati氏の無知を露呈する発言であり、政治的パフォーマンスにすぎない」と強く批判した。
経済大臣ラフィジ・ラムリ氏も、Ermieyati氏が根拠のない風聞をもとにこのような主張をしたことに驚きを表明。「野党時代にもさまざまな情報が寄せられたが、その90%は証拠が不十分で却下された。政府に献言したいなら、もっと真面目に取り組んでほしい」と厳しく非難した。
通信相Fadzil氏も、観光大臣がすでに否定しており、Ermieyati氏はフェイク・ニュースを広めるべきではないと述べ、理解が足りないなら観光大臣が説明する用意があると付け加えた。
MM2H制度の改正については賛否両論があり、Ermieyati氏の発言は国民の間でも議論を呼んでいる。今後、政府によるさらなる説明が求められるとともに、プログラムの運用が厳正に行われるかが注視される。
The Star news online, Sunday, 18 Dec 2023
参考 Mas Ermieyati Samsudin氏の来歴
Mas Ermieyati Samsudin(1976年11月13日生)は、マレーシアの政治家。2023年4月から公共会計委員会 (PAC) 委員長、2013年5月からマレーシア下院マスジッド・タナ選出議員 。(マスジッド・タナはマラッカ州の一部)
UKM (National University of Malaysia)で法学士を取得後、Khairul Latif & Associates、Adillah A. Nordin弁護士事務所で弁護士補佐
2004年には、Mohd Khairul Nizam Abd Kadir氏、Desmond Ho Chee Cheong氏と共同で自らの法律事務所、Messrs. Ermiey Nizam & Hoを設立
大臣職として、以下の役職を歴任している。
- 2021年8月から2022年11月にバリサン・ナショナル (BN) 政権下で国会・法律担当首相府副大臣
- 2020年3月から2021年8月にペリカタン・ナショナル (PN) 政権下で起業開発・協同組合副大臣
- 2015年7月から2018年5月にBN政権下で観光・文化副大臣
現在はペリカタン・ナショナル (PN) 与党の一翼を担うマレーシア統一先住民党 (BERSATU) の党員であり、過去BN与党の一翼を担っていたUMNOの党員。2020年8月からBERSATU女性副党首、2013年10月から2018年6月までUMNO女性青年団長を務めた。2018年総選挙でBNが野党のパカタン・ハラパン (PH) に敗北後、2018年にUMNOを離党し、2019年にBERSATUに入党。マレーシア史上2人目の女性PAC委員長でもある。(PACは馬国政府の会計監査委員会)
参考記事 改良されたMM2Hプログラム:3階層システム
The Star news onlyne, Friday, 15 Dec 2023 の要約
マレーシア観光芸術文化省は、マレーシアマイセカンドホーム(MM2H)プログラムの大幅な刷新を発表しました。新しいプログラムは、シルバー、ゴールド、プラチナの3つの階層で構成され、それぞれ独自の資格要件が設定されています。主な変更点は次の通り
3階層制の導入: 申請者の希望や資金力に応じた柔軟性を高めるため、シルバー、ゴールド、プラチナの3つの階層が設けられました。
最低年齢の引き下げ: これまで50歳以上だった最低年齢が30歳に引き下げられ、より多くの人々がマレーシアを第二の拠点として選べるようになりました。
代理店による申請: プログラムの透明性と安全性を高めるため、申請は観光産業法1992に基づき観光省によって認定されたライセンスを持つMM2H代理店のみを通じて行われることになりました。
扶養家族の拡大: これまで21歳未満の子どもと障害を持つ子どもしか扶養家族として認められていませんでしたが、21歳から34歳まで未婚で働いていないすべての子ども、さらに両親と義父母も扶養家族として認められるようになりました。
預金条件の変更: 各階層ごとに異なる預金条件が設定されました。プラチナは500万リンギット、ゴールドは200万リンギット、シルバーは50万リンギットの定期預金が必要ですが、いずれも1年後に最大50%の引き出しが認められ、不動産購入(プラチナは150万リンギット以上、ゴールドは75万リンギット以上)、医療費、マレーシア国内旅行に充てることができます。
滞在日数の要件: どの階層を選択しても、年間累計60日間マレーシアに滞在する必要があります。
流動資産額の縛りや海外所得の証明条件は無くなったのかハッキリしてほしいですね。
最後まで参照いただき、ありがとうございます。
この記事は、筆者のMM2H体験情報の関連記事です。本編はこちらから参照下さい。
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