この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
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前回までの記事・情報はこちら
馬国と日本の国会について、主な相違点を調べてみました。
両国の国会には成立由来、議会の人数と選挙、立法手順の3つの視点で、それぞれ特徴があり、双方の運営方法には違いがあります。
前回の記事では成立由来と、議席と選挙についてまとめましたが。
今回は、両国国会の「お仕事」である「立法」について、つまり、国の法律を作る(あるいは改訂する)プロセスを比較した結果をご紹介します。
結論として馬国と日本の国会の立法プロセスには次の点で違いがあります
- 馬国は議会での reading が主体的な流れ。日本は各種委員会が重要な流れ。
- 日本の上院(参議院)は馬国の元老院よりも比較的強めの影響力を持っている
- 馬国は国王陛下が立法に立ち入るが、日本の天皇陛下は直接は関与しない。
それでは、両国・両院で法律が起案されてから成立するまでの流れを見ていきましょう。
法案はどこから出てくるのか?
馬国で新しい法案を作る(起案・起草)のはほぼ100%担当大臣(担当省)ですが、日本の場合は大臣に限定されてはいません、
日本の場合は、内閣法制局※、各省庁、そして国会議員が起草する法案(議員立法)や、民間団体(国民)が起草する議案もあります。
馬国の代議員が法案を出す道筋は法的には整っていますが、非常に稀であり、基本は各省庁が司法長官の事務所のサポートを得て起草するのです。
※ 内閣法制局は、法律の専門家集団で、閣僚からの依頼に基づいて、法案の大多数を起草している。
日本の国会への法案提出手順
- 政策立案:法案が必要とされる政策課題を特定し、解決策を検討
- 条文作成:法案の具体的な内容を条文の形にまとめます。
- 関係省庁との調整:法案の内容が他の省庁の所管事項に影響を与える場合、関係省庁と調整を行います。
- 閣議決定:閣僚会議で法案を正式に決定します。
- 国会提出:閣議決定された法案は、国会に提出されます。
法案が国会に提出される前に、「閣議決定」が必要である点は両国ともに同じです。
下院と上院での採決までの活動
馬国の立法手順は、下院(代議員)から上院(元老院)へそれぞれ、3回の reading (いわば法案審議)が行われる仕組みになっていました。
日本の国会も、下院(衆議院)から上院(参議院)に付議される手順はほぼ同じですが、複数の reading を手順とするのではなく、各種の「委員会」に付託されて採決された内容を「本会議」で審議・採決する二重構造になっています。
日本の委員会は各種あります。法案の内容によって付託される委員会は異なります。ここが馬国と大きく異なる部分です。
法案成立までの流れ(日本の場合)
- 1. 閣僚または議員が法案を提出
- 2. 衆議院本会議で趣旨説明
- 3. 議院運営委員会で付託先委員会を決定
- 4. 付託先委員会で質疑応答、修正案の提出、採決
- 5. 委員会の採決結果を本会議に報告
- 6. 本会議で質疑応答、採決
- 7. 参議院へ送付
- 8. 参議院で同様の手続き
- 9. 両院で議決内容が異なる場合は、両院協議会で調整
- 10. 成立
既に馬国政府と議会<2>でも触れましたが、
「国家的な重要事項や緊急事態について議論する」ことを目的として、馬国の下院本会議とは別に下院特別会議 (Special Chamber) を開催するという提案が2016年に国会に提出されて採択されました。
報道を見ていると、馬国には、この特別会議がいくつか成立しているようですので、将来的には日本の委員会制度のような国会運営が形成される可能性が高いと思えます。
日本の常任委員会
内閣委員会、総務・法務・外務の各委員会、厚生労働委員会、農林水産委員会、経済産業委員会、国土交通委員会、環境委員会国家基本政策委員会、予算委員会、議院運営委員会、懲罰委員会
衆院だけの委員会
安全保障委員会、外交防衛委員会、財務金融委員会、財政金融委員会、文部科学委員会、決算行政監視委員会、文教科学委員会、決算委員会、行政監視委員会
下院の優位性と日本の両院協議会
馬国の国会においては、人数の多い Dewan Rakyat(下院)が絶大な決定権を握っていて、下院が可決した法案を上院である元老院が否決してひっくり返すことはできません。元老院が(任意の法案を否決することで)国会に与える影響は、法案の成立を1ヶ月遅らせることぐらいです。議案の内容によっては、上下院が真っ向から対立した場合でも最大1年経過した時点で下院が再可決すれば、その可決が成立するという決まりのようです。
日本の国会の場合、上院である参議院と下院の衆議院は「原則として」同等の権限を持っています。
ただし、実際には「優越事項」という取り決めにより、衆議院(下院)により強い権限があります。
下院が可決した法案を上院が否決した場合
馬国の場合、1ヶ月を経過した時点で法案成立
日本の場合、衆議委員の出席数の3分の2以上で再可決すれば法案成立。ただし、法案でなく予算案や他国との条約案の審議の場合は、再可決は不要。(いずれの場合も両院協議会での話し合いは行われる。)
下院が可決した法案を上院が長期間議決しない場合
日本の場合、参議院(上院)が法案受領後60日を超えて議決しない場合は参議院の否決と見なすことができる。ただし、法案でなく予算案や他国との条約案の審議の場合の期限は30日)
先議権(法案が付議される順番)
馬国では、常に Dewan Rakyat(代議院)が先に reading と採決を行う
日本では、予算案の議決の際に衆議院への先議権が認められている
内閣不信任
日本も馬国と同じで、下院(衆議院)だけが内閣不信任を可決できます。
両院協議会(日本語版ウイキペディアより)
衆議院と参議院で議決が一致しなかった場合は、その調整を行うため、両院協議会が開催されます。
予算、条約の承認、内閣総理大臣の指名について議決が異なった場合には必ず開催されます。
法律案について議決が異なった場合には衆議院が協議会を請求したとき、及び参議院が協議会を請求しこれに衆議院が同意したときに開催されます。
日本の衆議院に優越的な権限が付与されている理由は、参議院よりも任期が短い事や解散により民意を問える事から、衆議院は参議院よりも国民の意思を反映しやすいという認識があることです。
ここまで見ていくと、日本も馬国も、下院の権力が強いという意味では「同じ」といえそうですが、日本の場合は、衆参両院とも「民選議員」の集まりであるので、両院協議会や再審議などの規定が多く、衆議院の決定を通すことに、より多くの時間と手間がかかる構造になっていると言えそうです。
国王と天皇の関与、法律の公布
両院制における法案審議が終わって法律が交付される前に、皇族はどのように関与しているでしょうか?
馬国の場合は、両院で可決された法律は、国王陛下による30日の検閲を受けることが憲法で定められていて、この30日の間に国王は、法案にコメントすることができます。この件は、馬国政府と議会<2>で紹介しました。
日本の国会で成立した法律は、次の手順で公布されます。
- 奏上:成立した法律は、内閣を経由して天皇に奏上されます。
- 公布:天皇は、奏上された法律を公布します。公布は、官報に掲載することで行われます。
- 施行:法律は、公布の日から施行されます。ただし、法律の施行期日が別に定められている場合は、その期日となります。
天皇陛下は、国会で成立した法律にはコメントせず、「公布」するだけです。
馬国の国王が政治に関与することは、ある程度認められていて、この国の報道を見ていると、あらゆる局面で国王陛下のコメントが公表されますし、国王自身もSNSを通じて国民や政府に政治的な意思表示をしています。
輪番制で今年から就任したイブラヒム国王陛下は、既に馬国の汚職の一掃や、靴下事件におけるイスラムへの冒涜行為などに積極的にコメントしており、馬国社会に大きな影響力を持っています。
これまでの記事を深読みされている方は、お気づきと思いますが、この国王陛下のパワーが反映されている「元老院」の議員は、社会的には、単なる代議員(MP)よりも発言力が微妙に強いので、元老院メンバーである Senator の発言に対しては、国民も MP も一定のレスペクトがあります。これが議会での優位性の低さをカバーしていると考えると、この国の議会の微妙なバランスが見えてきます。
参考 日本の予算審議について
国会で新たな国家予算や補正予算が可決するまでの流れは次のとおりです
- 1. 概算要求※:各省庁は、必要とする予算額を概算要求として財務省に提出
- 2. 閣議決定※:財務省は、各省庁の概算要求を査定し、予算編成方針を閣議決定
- 3. 政府原案の作成:財務省は、予算編成方針に基づいて、政府原案を作成
- 4. 閣議決定:政府原案は、閣議決定されます
- 5. 国会提出:政府は、閣議決定された政府原案を国会に提出
- 6. 衆議院での審議:政府原案は、衆議院の予算委員会で審議
- 7. 本会議での採決:予算委員会で採決された政府原案は、本会議で採決
- 8. 参議院での審議:衆議院で可決された政府原案を、参議院の予算委員会で審議
- 9. 本会議での採決:参議院で採決された政府原案を、本会議で採決
- 10. 成立:政府原案が両院で可決されれば、成立します。
※補正予算の場合、上記の手順のうち、概算要求から閣議決定までのステップは省略
まとめ
馬国と日本の立法府である国会の立法プロセスには次特色と相違点がありました。
馬国 | 日本 | |
審議の流れ | 内閣 → reading x 3 回 → 国王 | 内閣 → 委員会採決 → 本会議採決 |
上下院対立の場合 | 下院の決議をもって成立 | 両院協議会(但し、下院が優位) |
皇族の関与 | 国王の検閲・コメント | 天皇は公布権のみ |
馬国の国会への国王陛下の関与がはっきりしているのに対し、日本の場合は天皇陛下の関与は象徴的であり、立法審議に関与しないところが大きな相違点です。
日本の場合は、各種委員会が忙しく活躍していて、本会議の負担を軽減している一方、馬国の代議院と元老院は、reading 審議が主体で特別な委員会の数や活動は限定されているようです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回は馬国の憲法と、国会 vs 州議会のパワーバランスについて特集します。
この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
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