この記事はこれまで継続して投稿してきました中国不動産大手「碧桂園」の経営危機に関する続報(その4)です。
本日は2023年10月20日
ガザ地区でのパレスチナ・イスラエル紛争が世界の注目を浴びる中、中国最大のデベロッパーである碧桂園がついに、デフォルト状態となりました。
碧桂園の具体的な動きが未だ見えていないため、「このまま推移するとデフォルトとみなされる」という趣旨の報道が相次いでいます。
10月20日、日本国内の大手報道機関はあいついで碧桂園のデフォルト危機を報じています。内容は以下のロイターの報道内容のとおりです。
ロイターの報道内容
Reuters 2023年10月18日 10:18 PM GMT+9
・債券保有者が猶予期限後の支払未受領を確認、債務不払いは濃厚
・碧桂園は自ら「オフショア債務のすべてを返済するこはできそうにない」と観測
・同社は「包括的な」解決策を模索しています
冗長な部分を削減して内容を明確にするために、一部内容を簡素化して引用します。
香港、2023年10月18日(ロイター)- Country Gardenこと碧桂園(2007.HK)の1,500万ドルの債権が事前通知無く支払期限切れとなり、中国最大の民間不動産デベロッパーがオフショア債務でデフォルトした可能性が高まっている。国内の不動産市場の危機は深刻化。
不払いは、債券契約では標準的なクロスデフォルト(注釈:下記)を引き起こします。同社は約110億ドルのオフショア債を抱えており、デフォルトが現実化すれば、中国最大の企業債務再編劇となりそう。
一部の債券保有者は、機密情報の開示は辞退しながら、猶予期間が終了したことを受けてクーポンの支払いを受け取っていないと述べた。別の情報筋も、クーポンの支払いが1300 GMT時までに行われなかったとロイターに伝えた。
碧桂園は水曜日に、オフショア債務のすべてを返済できないと想定、困難に対する「包括的な」解決策を模索すると再確認していた。
同社の声明は、デフォルトの発生には直接触れておらず、代表者はコメントを控えた。
独立企業債研究機関Gimme Creditのアナリストは、「猶予期間内に支払いが行われない場合、デフォルトとなる」と発言。2021年以降、多くの中国の不動産デベロッパーが流動性の問題に直面し、デフォルトしている。
中国の不動産業は同国の経済活動の四分の1を占めており、長引く危機は世界第2位の経済を圧迫し、世界の金融市場を揺るがしている。
KTキャピタルグループのシニアアナリストは、「碧桂園と恒大集団の主要な違いは、前者が一貫して『優等生』であったこと。」と述べた。碧桂園は2021年に導入された債務比率の要件のすべてを満たした数少ない主要デベロッパーの1つであったと付け加えたが、恒大はその3つすべてを満たせなかった経緯がある。
需要の低迷と一般的な経済の減速により、碧桂園のように比較的健全だったデベロッパーも苦境に立たされている。
LSEGのデータによれば、ドル建て債券は現在、1年の初めの70セントから約6セントの価値に暴落。債券保有者は、債務が再構築されることを期待している。
碧桂園のドル建て債券を保有する米国の資産運用会社の担当(匿名)は、「損失を出す覚悟はしているが、他の企業と比較して再構築プロセスが効率的でダメージが少ないことを望んでいる。」と述べた。
Creditsightsのアナリストは、債務再構築に関しては、碧桂園の債権者にとって長い待ち時間となる可能性が高いと表明。最近承認された他の中国企業の再構築が少なくとも1.5年かかったことを指摘した。
碧桂園は、国内の債務について比較的健全で、108億人民元(約15億ドル)相当の8つの債券について3年間の支払い延期を獲得したことから、ある程度の余地を持ってはいる。
中略
しかし、中国の不動産市場の見通しは暗く、オフショア債権者が債務再構築を受け入れる条件はより厳しいものとなる。
JPモルガンによれば2021年以来、中国の住宅販売の40%を占めるデベロッパーが債務を怠っており、その多くは民間企業との情報。約1,100億ドル相当のハイ・イールド・オフショア債(注釈:下記)を発行している。
(1米ドル=7.3110中国元)
報道:クレア・ジムとシエ・ユー(香港);カリン・ストロヘッカーの追加報道;スコット・マードックの執筆;アン・マリー・ローアントリー、エドウィナ・ギブズ、イレイン・ハードキャッスルの編集。
Reuters 2023年10月18日
クロスデフォルトとは・・・具体的には、債務者がある一つの債務に対して返済を履行できず、デフォルトとなった場合、その債務者が同じ債権者に負っている他の債務や別の債権者に負っている債務に対してもデフォルトする恐れがあるとみなされ、全ての債権者が期日を前倒しして債務の返済を要求できる仕組みを指します。
ハイ・イールド・オフショア債は、通常の投資向け債権よりもグレードの低い債券で、リターンが高額である反面、デフォルトを含む様々なリスク要件を伴う債券。いわゆるジャンクボンド。英文はhigh-yield bond (non-investment-grade bond, speculative-grade bond, or junk bond)
経営者の国外逃亡騒ぎ
10月19日付け馬国情報誌のFree Malaysia Today(FMT) のオンライン報道の1面横に、碧桂園の創始者とその娘(次女で現会長の恵妍氏)が中国から逃亡したとの噂が広まりました。
これについては、珍しく碧桂園が声明を出し、経営者の国外逃亡は全く虚偽の噂であり、両氏は現在も国内同社で執務していると発表しました。
10月19日~20日にかけてロイターも、碧桂園経営者が出国することなく中国国内で執務中であることを報じています。
(FMTの記事には、同社の経営危機について言及しているが、さらっとしたもの)
馬国内では、上記以外には、去る17日に全国紙のThe Star が同社のデフォルト・リスクを報じていますが、ジョホール州の森林城市との関連には触れていません。
今後の動きについて
馬国の森林城市プロジェクトの行方が注目されます。このブログでは、今後も同プロジェクトの状況を追います。
Forest City Development Project 概要
プロジェクト | Forest City(森林城市)Development Project |
総事業規模 | 1000億ドル(約14兆円) |
建設国・場所 | マレーシア、ジョホール州西南の埋め立て地 |
埋立て面積 | 1800 – 2000 he (20km2) |
建設期間 | 約18年 |
受け入れ世帯 | 70万世帯 |
完了予定 | 2035年 |
2023年10月12日付の「ダイヤモンドオンライン」のレポート
中国不動産バブル崩壊の余波「15兆円投資計画→ゴーストタウン」潜入ルポ【写真多数】
を参照ください。件の都市開発は明らかに荒廃しており、当地の不動産価格も半値にまで下落傾向であることが報告されています。
最後まで参照いただき、ありがとうございます。
この話題の過去記事については以下から参照いただけます
8月30日 | ジョホールの巨大プロジェクト:光と影 |
9月01日 | 馬国の森林城市構想「崩壊」の危機 |
9月07日 9月19日 10月11日 | 「碧桂園」と「森林城市」」続報 「碧桂園」と「森林城市」」続報2 「碧桂園」と「森林城市」」続報3 |
債権者の新たな動き
10月19日の速報です。
香港発ロイターの報道では、碧桂園の社債権者は、同社が1500万ドルの利払いを履行できなかったことを受け、会社側との緊急協議を求めている。
社債権者2団体が債務再編の可能性について話し合いを求めており、主要団体はモエリスかPJTのどちらかを財務アドバイザーに指名しようとしているという。
関係筋によると、この団体は碧桂園のオフショア債券のうち約20億ドルを保有。国際的な投資家とファンドマネジャーで構成されている。
碧桂園、モエリス、PJTはコメントを避けた。
香港:ロイター
本日も参照いただき、ありがとうございます。