この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
馬国全土に800店舗以上を展開している24時間営業のKK mart が、誤って回教徒の神格をプリントした「靴下」を一部の店で販売しかけて大問題となったイスラム国家マレーシア。
昨日の午後から今朝(3月23日)の全国紙のオンラインサイトにアップされていたのは、筆者がチェックしただけでも、8件の「靴下問題」の報道です。発信元は FMT (Free Malaysia Today), The Star, Maiay mail, そして NST (New Straits Times)の各紙です。
ひとつの事象について、これだけの数の全国紙のオンライン報道が揃ってこれだけの数の記事をアップするのは実に珍しいことです。
そして、これらの記事の内容は、
- KK mart の「ボイコット運動」は続けるべきとするイスラム系政党の強い発言
- 一部の政治活動家が、過剰反応していることを嗜める元政治家の発言
- アンワル首相の「節度を持って終結せよ」発言を元に、冷静な解決を求める華人系の政党党首
- 「節度のない」イスラム系政党に対して「どこまでやれば満足するのか?いい加減にせよ」という投稿者
と、馬国に広がる「異論反論」を伝えています。
Umno青年団はあくまで「ボイコット運動」を主張
22日夜の断食明けの食事会の後、メデイアのインタビューに対応したマラッカ南部のMerlimauの代議員、Umno青年団長の Dr Muhamad Akmal Saleh の口調は、連日の賛否の応酬を背景に、明らかに苛立っています。
曰く、「KK mart へのボイコットは、象徴的な動きであり、KK mart だけを攻撃するものじゃない。このボイコット運動は、マレーシアの3R(宗教、民族、王政への忠誠)を粗末に扱う者(集団)への戒めなんです。謝れば済むということではないんだ。」
「今回の件で、マレーシア社会の全てのレベルで、3Rを尊重しない集団が心の底から反省するために、私は KK mart には、今の事業はもう辞めて、別の商売を見つけなさいと提案している。」
青年団の発言が、より大きな枠組みにおいて、民衆と寄り添う「Maddani Spirit」に反する(異なる民族を代表する政党間の不和を増長する)という非難に対しては、
「我々は、どの政党とも協調している。政党間にはなんら問題はないが、UmnoにはUmnoの信条がある。それはイスラムとマレー人と支配者を守るという信条だ。このことについて、どこそこの大臣がどういうコメントをしようが、我々には関係がない。我々の宗教が冒涜されるなら、我々はこれを守り抜くだけだ。」
Akmal氏の発言に先立って、Umnoの官房長官である Datuk Asyraf Wajdi Dusukiは、イブラヒム国王の発言にもあるとおり、「アラー」の言霊を蔑視する集団に対して厳しい措置をとることにUmnoは党として賛同するという声明を発表しています。
出典:malay mail After party’s backing, Umno Youth chief aims to bury KK Mart with boycott
元経産省大臣 大人のコメント
元マレーシア通産省大臣のTan Sri Rafidah Aziz氏は、筆者も敬服する大人のムスリムとしての発言を投げかけています。この記事は The Start とNSRの両紙の23日のオンライン報道です。
Rafidah氏は、
「ムスリムの政治家は、かつてProphet Muhammad (預言者ムハマド)が悪事を働く輩と対峙した際の節度ある模範的対応を、身をもって示すべきです。」と話しています。
「預言者が他者を諌める時に、自らの宗教が期待する結果だけを相手におしつけることはしていません。」
そして
「地に足のついていない靴下の話で民衆を扇動するのは止めて、もっと大事な課題に集中すべき」としています。
Rafidah氏が違和感を表明しているのは、Umnoの青年団に見られるような「民衆を扇動する発言」であり、そこまですることが、ムスリムとしての行動ではないとはっきり言い切っています。
参照: rabble-rousers (暴徒を煽る者たち)
出典:The Star Stop the rabble-rousers, says Rafidah
華人政党党首の慎重な発言
マレーシアの中国系民族を代表するMCA(MAlaysian Chinese Assssociation) の党首Datuk Seri Dr Wee Ka Siongは昨日夕刻の記者会見で、アンワル首相の発言をうまく引用して、「教訓を学んで、進んでいこう」と発言。
Wee氏は、国王の厳しい発言に敬意を表しつつ、事件の発覚後のアンワル首相の発言に触れ
「首相は、(問題は問題としてすぐに解決せよ、そして)次の課題に進もうと指摘している。私はこの考えに賛同する。我々は、多様なコミュニティーで共存している。もちろん宗教と民族に関することは極めて慎重に、真面目に対応すべきです。」
と発言。そして
- この事件からしっかり学ぶこと
- マレーシア人として互いに尊敬し合おう。悪いことは悪い。
- しかし、拘って話を長引かせるべきではない。次に進もう
と締めくくっています。
出典:The Star Let’s move on from socks issue and learn from it, says Dr Wee
FMTに投稿された厳しい意見
最後に、FMTに投稿された Zaid Ibrahim という人物(FMTによれば、元大臣の経歴でFMTの読者のひとり)
この方の、投稿文章は、非常に手厳しいですが、これも voice of malaysia です。部分的に直訳します
あたた方に言いたい。
宗教が行動の基盤だからといって、違法行為をしたり、ヘイトスピーチをしたり、人のビジネスをぶち壊すのを正当化できるわけはないはずです。
「怒り」には、限度がなきゃならない。
まず、あなた方は、華人商人に「謝罪しろ」と要求した。だから、誤った。そして、
あなた方は、ベンダーの拠点の営業権を停止した。だから、彼らは職を失った。
すると、今度は「ボイコット」だと言う。そして、
なんと Umno総体が青年団のおかしな要求をフルサポートした。
すると、華人の若者がフェイスブックに批判的な発言をアップした。そしたら、あなた方は、若者を牢屋に入れた。そして、もちろん、(この国では)「神」を根拠に発言をする人間は牢屋には入れない。
あなた方は、どこまでやれば満足するのか?
(中略)
私は、この国の首相に、どこが限度なのか、はっきりしてもらいたい。どこに線を引くのか?
しかし、私たちは、やりたい放題のUmnoには立ち向かうべきだ。そうでなければ、「民衆のための政治(Madani Government)」はこの国の人々にとって何の価値も無い。
FMT
Where is the red line? https://www.freemalaysiatoday.com/category/opinion/2024/03/23/where-is-the-red-line/
FMTは、掲載した投稿文章は「必ずしもFMTの意見とは一致しない」としています。
異なる民族と宗教と文化が同居するマレーシアでは、それぞれの民族・宗教の代表は常に節度を持って、一線を超えないように、とても慎重に行動・発言しています。
ですが、今回にように、どこかで「一線を越える」行動や発言が出てしまうと、水面下で抑制されていた不満・不平等の古傷が傷みだして大きな動揺が走ります。
筆者が知る限り、ムスレムも仏教徒もヒンズー教徒も、全て「礼節と忍耐」を重んじます。
ですから、馬国では、安易に人を指さしたり、人の頭越しに手を上に上げて「叩く」ような仕草すらしません。
暴力は抑制されていますし、酔っ払いに絡まれることもありません。
それだけに、それぞれの言葉にならない不満や違和感が、見えない湖のようにたっぷりと溜まっている社会です。
一旦ダムが決壊すると、流れ出てくる水の流れは、ちょっとやそっとでは止まりません。
この記事を準備する間に、新たに、4つの記事が malay mail, The Star, NST からアップされました。イスラムを攻撃するフェイスブックへの投稿が大炎上して、警察が投稿者の追跡を開始しているようですが、もう追いきれないので、続きは、明日!
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