この投稿は、本編「馬国で育って医師になる」の詳細記事です。
本編のカテゴリーを「子育て録」としていますが、この詳細記事に関する限り、「子育て」とは少し違う内容かもしれません。
一方、「医師国家試験予備試験」(このブログでは略して「予備試験」としています)
について詳しく体験をアップしている記事はネット上に見当たりませんでしたので、あえて「子育て」カテゴリーの部分として投稿させていただきました。
海外の医科大学を卒業する学生のためにもこの記事は必要と信じます。
この「予備試験」についてネットで調べてみると
厚生労働省を筆頭に受験審査や受験日などの詳細を参照できますが、合格率等、具体的な詳細情報を載せている記事は1995年当時の記事(※)が1つあるだけで、
その他は、「難関である」と言う記述が幾つかヒットする程度です。
※いわき総合法律事務所の記事の中に1995年の事例として次の記載があります。
「予備試験は日本語の筆記試験で、日本人受験者を含めて合格率15%に過ぎず、外国人の合格は至難の業といえる。」
最近まで受験者でした長男の情報では、この予備試験の合格率は受験者の間の口コミ情報などから、恐らく10%前後ということです。
あらゆる意味で「狭き門」
厚生労働省はホームページで(日本の「医師法」の規定に基づき)毎年の予備試験の審査と試験の日程を発表しています。
発表内容を要約すると
外国において医科大学(医学部)を卒業した人が日本で医師国家試験を受験するためには、厚生労働大臣の認定が必要
受験資格認定の手続き及び審査方法は、以下の通り
🔳外国の医学校を卒業し、又は外国において医師免許を得た者が対象
🔳審査の結果「予備試験」の受験資格が得られない場合がある
🔳審査対象者が日本の医学校を卒業した者と同等以上であるか否かについて審査を行う(5500時間以上の一貫した専門教育を受けていること)
🔳医学校卒業から10年以内であること
🔳日本の中学・高校を卒業していない対象者は日本語能力試験N1の認定
以上は「予備試験」の合否の基準ではなく、受験する資格を審査する基準です。
筆者は、この「予備試験」制度は、日本の医師免許の権威性を確保するために妥当な内容だとは思います。
しかし、2017年に、長男が初めてこの審査を受けた際に「予備試験」の受験資格が得られなかったことで強いショックを受けました。
足りなかったのは日本語能力試験の1級の免状だけでした。
理由
長男は馬国のインターナショナルの卒業であって、中高生としては日本の学校の卒業生ではありません。ですから、両親が日本人で日本のパスポートを持っていて、日本語の読み書きができていても、予備試験は受けられなかったのです。
この事例ひとつ取っても、「予備試験」がとても厳格で難関である事がおわかりいただけると思います。
私たち親子は、この年度に受験資格を得られなかった事実に大いに落胆しましたが、予備試験の権威性に敬意を表するとともに、日本語検定の受験準備をして1級に合格。そして長男は次年度(2018度)に受験資格審査をパスしたのです。
尚、厚生労働省のサイトには以下のような注意書きがありますので紹介します。
「最近、卒業後に日本の医師国家試験の受験資格が得られる旨認可を厚生労働省から受けていること等を示して、外国の医学校への入学を勧誘する広告を行っている例が見受けられますが、厚生労働省は、外国の医学校を卒業した方から、医師国家試験の受験資格認定の申請があった後に、当該申請者個々人の能力や、当該申請者が受けた教育等を審査することとなっており、海外の医学校等に対し、当該医学部の卒業生への医師国家試験の受験資格を一律に認定することはありません。」
戦いは5年間続いた
長男が「予備試験」の1部試験に合格したのは2021年でした。
2017年からの5年間、毎年が予備試験との戦いでした。
最も難関なのが、この1部試験(筆記)でした
受験者の親としての率直な体験から申し上げます。
この予備試験は、国家試験への受入を行うという試験というよりは、日本の医師免許を取ろうとする外国人を篩い落とすための試験という印象が強い。(もちろん、そうではないのですが)
予備試験(1部)の難しさ4選
🔳マークセンスではなく「記述による回答」が要求される
🔳医学の基本的知識をテストするものではなく、極めて専門性の高い内容
🔳広範囲な医科の内容から毎年異なる難問が出題される
🔳受験者の9割が不合格となっているという情報である
長男はの5年の間に、上海に留学して東洋医学の単位を取得、さらに最後の2年は東大の大学院(医療系の国際学部修士)に主席で合格しましたが、この予備試験は連続して不合格でした。(東洋医学は予備試験の内容との直接の関係がありませんので、学力評価の根拠にはなりません。)
毎年送られてくる「不合格通知」には、試験結果の点数が表示されていますが、これらは常に「あと少し」を示す数字でした。
「あと少し」差分は何かをいえば、それは、極めて専門的な医学的事案についての非常に詳しい知見の知識と、記述による説明力でした。
不合格通知の書類には、厚労省への訴訟に関する記述まで含まれていました、
このことから、かなりの受験者が「不合格」を不服として厚労省に説明を求めたり、不合格を不当として訴えていたことを窺い知ることができます。(実際のところは開示されていません)
長男曰く、毎回の試験会場にはお馴染みのメンバーもいて、それぞれが独自の勉強法で個人やグループで知恵を出して試験対策をしていたようです。中国籍の志願者も多く見られましたし、彼らは非常に優秀でした。
合格した5年目の予備試験に際しては、筆者家族は全員日本に帰国していて、この予備試験に関する会話は殆ど無くなっていました。
筆者は定年の63歳、長男は33歳でした
筆者も家内も、恐らくは日本の医師免許への道は、もう無理ではないかと考え始めていたのです。
ほぼ、諦めがついた・・・
その年にようやく一次試験の合格通知が来たのです。
私たち家族は、もちろん合格を喜びましたが、それよりも、厚労省の予備試験の採点と合格判定がきちんと機能して、長男を正しく評価してくれていた事実への感謝の気持ちが大きかったのです。
合格の秘訣はあるのか?
予備試験については、その後の2部試験に難なくパス。
最後の医師免許試験への準備に入るスケジュールについては、別途記事にしました。
さて、どうすれば、もっと早く「予備試験」に合格できたのだろうか?
このことについての答えはありません。
外国の医大を出て、この予備試験を受験する学生やその家族は、とにかく他の要件を全て横に置いて、家族全員が協力して本人の試験準備のために集中するということだけです。
私たち夫婦も、長男がこの試験に合格して医師になることを人生の目標として、あらゆる試行錯誤を実行してきました。
馬国での起業を決意して移住してから20年以上の月日でした。
海外で長男を育てたことは全く後悔していません。そのことは、また別の記事でお話しします。
医師免許をめざす海外の医学生のために、少しでも参考になれば幸甚です。日本の医師免許を志望するみなさんがひとりでも多く、この「予備試験」を突破されることを祈念します。
詳しいご質問があれば、個人的にお答えできるかもしれませんので、「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。