【修行体験】社長「知っていることを全部話せ」

修行体験

この投稿は、本編「修行体験」の詳細記事(体験記事)です。

日本の企業人が海外出張する場合、少なくとも筆者の知る企業文化では飛行機の座席は個別に予約していて、空を飛んでいる間は昼間でも仕事はせずにビールでも飲んで映画でも見ているのが普通です。

不思議な縁で天才起業家のビンセントの会社に転がり込んだ筆者は、この天才社長との最初の出張で日本のサラリーマンの習性の見直しを迫られます。

KLから羽田までのフライトの座席指定はなんと社長の横

ヨコを見れば社長が座っている場所でした。

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質問の嵐

筆者とビンセント社長とは普段から打ち合わせで様々な議論をしてきていましたので、フライトでの移動中ぐらいは別々の席でゆっくりしたいものです。

ところが、この社長は、フライトの間も筆者との対話を続け、絶対に時間を無駄にはしません。

着席してエアクラフトが離陸するやいなや、日系企業に関する筆者への質問が始まります。

企業の社内事情、決定権の所在、ワークプロセスなど、仔細に渡る部分まで知りたがりました。

そんなに詳細を聞いたところで(自分の会社で同じ運用をするわけも無いのに)何のメリットになるのか不可解。

しかし、彼は「どんな仔細なことでも隠さずに話せ」と言ってじっくりと耳を傾けて説明を聞いています。

ひとつ答えれば、その答えに関連して次の質問が飛んできます。

客先の担当者や幹部のひとりひとりの性格、社内の立場、過去の言動など、詳しく話し合って共通認識を持とうとするのです。

取引相手についてここまで細かな議論や質疑を話し合うという場面は日本の企業内では見られません。

客先の個人に関する知識についてサラッと印象を話し合うことはあるでしょうが、そのことで同じ認識を持つまで深く話し合うことはしません。

みなさんは如何でしょうか?

彼ら華僑集団は客先の担当者個人ひとりひとりについてじっくり話し合って共通理解を確認して仕事をしているのです。

その内容も常に話合いを通してアップデートされていました。

「なるほど」を「戦略」に繋げる

ビンセント社長との機内の会話は、一般的な日本のビジネス文化だけでなく、予定されている日系各社の要人との打ち合わせ内容や、交渉の役割分担まで幅広いものです。

時折出て来る質問に、

「K社のBさんな何であんなに怒っているのか?」

「N社のUさんは北九州のホテルを紹介してくれたので手土産は〇〇にしようと思うけどどうかな?」

といった個々人の感情や返礼などの作法の話題も含まれていました。

筆者から説明した日本型ビジネスの内容を聞いて、「明日はこう話そう」「明後日は最初から値段の話はしないで、釣の話にしよう」といった戦略が決まっていきます。

質問が終わると今度は、電材業界の商品知識の話です。彼らは電材メーカーの技術者ではないので、商品については独自に勉強しないと売り子にはなれませんから、様々な方法で商品知識を身に着けて行きます。

有る時は有名メーカーの海外代理店の世界大会に参加して他国の代理店と新製品の売り込み戦略を話し合ったり、ある時はメーカーの工場に出向いて熱心に製造工程の話を聞き、資料を持って帰ります。

ここでも、日々これ質問の連続、そして、質問して仕入れた知識は忘れません。

徹底的な情報交換が会社の競争力を高める。

筆者の商品知識が充分でないと解ると、商談前のフライト中に商品の説明をしてくれます。ビンセントはエンジニアではありませんが、扱っている商品についての知識は充分持っていました。

言い残すことは何もない

ビンセントの下で働いた2年間を振り返って思うのですが、

日本のビジネスについて彼らに「説明し忘れた」ようなことは何もありません。

彼ら華僑の商集団がどれだけ筆者の話を記憶しているかはわかりませんが、少なくとも知らなければならないことは全部筆者の記憶から引き出したのです。

日本人の一挙一動に疑問をもっていたビンセントは、筆者の説明を聞くたびに「なるほど」とうなずいていたものです。

逆を考えてみます・・・

今、筆者の馬国での体験について、細かく質問してくる日本人ビジネスマンは居ません。彼らの情報源は恐らく書籍、資料、動画サイト、商社情報です。

まして、個々人の趣味や興味の内容まで参考にして馬国の顧客や協力会社と交渉戦略を練ることは絶対にしません。

ビンセントの会社では、延々と続く情報交換と共通認識の醸成を基盤にとの差異化を狙い、競争力を高めることを基本方針にしていたのです。

顧客であれ、協力会社であれ、「相手をとことん知る」ことは商取引の第一歩であるという認識が不文律なのです。

筆者は2年間で十数回ビンセント社長の業務出張に同行しましたが、夜行便でない限り彼は「機内の話し合い」を一度も欠かしませんでした。

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