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この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。
ここ数日の新型 MM2H の話題を通して、筆者は、あくまで「利用者目線」で国内外の反応を紹介してきました。
今回は、少し冷静に事態を見つめる意味で、マレーシア側の視点でみた新型 MM2H を紹介します。
この場合、筆者独自の考えや評価は邪魔になりますので、あくまでマレーシア視点で公平に物事をみている馬国の新聞記者の視点をそのままお伝えします。
まずは、FMT紙のAKさん(下記)の冷静な論説を一読ください。筆者は非常に興味深く読みました。
前進した新たなMM2Hの内容
MM2H: better than before, but still some way to go
Alina Khai 05 Jul 2024, 09:30 AM Free Malaysia Today
新しいMM2Hプログラムが公表された。プログラムが大きく変更されたのは、2021年以来である。
今回の更新は、国内経済の強化と、今後の長期滞在者により良いパッケージを提供する目的で、政府がMM2Hを刷新したもの。
新しいMM2Hはどのように大きく、より良く、より強くなったのか考察する。
改訂された資格基準
答えは、今回更新された申請者を承認する上での「資格基準」にある。
2021年の改定時には、MM2Hは高額資産保有者(HNWIs)を対象とするものとして再設計されたため、MM2Hの資格基準が大幅に変更され、申請可能な外国人の範囲が大幅に狭まったのだ。
当時の改定では、5年間のマルチプルエントリー・ビザを取得するため、申請者本人は、100万RM (約3,000万円)の定期預金を行い、帯同する扶養家族1人あたりさらに5万リンギットを追加することを要求された。
その上、(出身国側での)月収4万RM (約120万円) と最低でも150万RM (約4,500万円) の流動資産を持っていることの証明が必要だった。
マレーシアを第2の故郷にしようとする外国人の多くは現役を引退する退職者層である。彼らは主に年金や投資収益で生活しているため、足元で月収4万RMという高い閾値(しきい値)が条件になったことで、引退組の申請を自動的にMM2Hから除外してしまった。
2002年〜2019年の期間は30万RMとされていた定期預金と、流動資産条項の引き上げも、中所得層の申請者を遠ざけた。
今回、このあたりの厳しいルールは変更された。政府のアイデアは:
- 以前は1つだけだったMM2Hカテゴリーを3つに分ける
- 厳しい月収と流動資産の要件を撤廃する
- 最低定期預金額を15万米ドル(70万5000RM)に引下げる
これにより、一部のMM2H要件は緩和されたのだが、より厳格になった条件もある。
非常に重い条件は、今後の新MM2Hビザ保有者が、3つのカテゴリーに応じた指定最低価格の住宅を購入しなければならないことである。その住宅も最低10年間は保有する必要が流のだ。(所有している物件より高い価値の物件に買い換えたり、物件をアップグレードしたりすることだけが許されている)
期待される経済効果
今回の「資格基準」の変更は、いくつかの理由で意義深い。
まず、MM2Hが経済成長に貢献していること。
2002年から2019年までの間に、MM2Hは 48,471人の退職者とその扶養家族を受け入れた。MM2H利用者による不動産投資、医療や教育費用、その他の経済的乗数効果を通じ、推定580億RMの収益がもたらされたのだ。
ところが、2021年の条件変更によりMM2H市場は壊滅的な打撃を受けた。その当時は、MM2H申請件数が、2017年〜2019年に比べて90%減少したと言われている。
今回の条件緩和により、過剰に厳しかった財務要件を改善し、より多くの申請者を引き付け、このMM2H数の減少を逆転させることができれば、経済刺激策を実現できる。
次に意義深いのは、新しいMM2Hは、3つの新しいカテゴリーを準備したことで、富裕層以下の申請者群を追い出すことなく、高額資産保有者を引き続きターゲットにできている点だ。
富裕層の移住は、世界経済の成長トレンドの一環と考えられる。投資移住市場は年間210億米ドル (円安なら3兆円規模) の価値があり、2025年には135,000人の富裕層が移住すると予測されている。その市場において、より大きなシェアを獲得することは、マレーシアにとって経済的メリットとなる。
MM2Hの改訂は、緩和された財務要件にもかかわらず、依然としてより裕福な外国人をターゲットにし続けている。各国の優遇ビザ制度が、最近になって、より高価になっていること。つまりインフレ傾向を考慮に入れているのだ。
連邦政府側のMM2Hが富裕層中心に展開している背景には、サバ・サラワク州が提供するMM2Hプログラムとの競合を最小限に抑える意図がある。サバとサラワクのMM2Hプログラムは、東マレーシアの生活費の低さに見合ったものであり、低中所得層を対象としたものだ。
原文:But it also minimizes overlap with the MM2H programmes offered by Sabah and Sarawak, which are more affordable – in line with East Malaysia’s lower cost of living – and cater more to the lower-middle income crowd.
このことから、申請側の外国人から見たマレーシアでの長期滞在には、幾つかオプション(選択肢)があることになる。
経済効果として最後に考えられるのは、MM2H申請者の不動産購入が必須になったことにより、ペラ、ジョホール、クアラルンプール、セランゴールなどの各州での不動産の供給過剰問題が改善する可能性がある。
これにより、不動産市場が活性化され、周辺地域に住むマレーシア人が保有する不動産の価値も上向く可能性がありそうだ。
特典は充分だが改善も必要
MM2H申請者の「資格基準」の中の財務要件が緩和されたことで、マレーシアは再びより広く多様なMM2H志望者を迎え入れることができるようになった。
現在の条件は、パンデミック以前に提供されていたものよりも負担額は高くなってはいるが、これはインフレを考慮すると当然のことだ。
欠点は常に利点と比較しながら評価する必要がある。
マレーシアは依然として長期滞在と退職のための魅力的な候補地である。東南アジアで最も生活費が低い国のひとつであり、堅固な医療、教育、ビジネスインフラを持ち、国際空港を通じた手頃な接続性を誇る。
弱いリンギットもまた、外国人にとって追い風だ。外貨を持ち込めば、マレーシア国内で金の価値が高くなる。
しかし、MM2Hにはまだ改善の余地がある。新しい不動産規則は厳しすぎるかもしれず、少し理不尽に映るかもしれない。たとえば、政府が5年間のビザを取得する外国人に、なぜ10年間もの期間の不動産保持を強制しているのか疑問である。(連邦 MM2H のシルバー層の条件)
収入レベルに関係なく、外国人や移民がマレーシアに滞在することは、この国に大きな価値をもたらしてきたし、今もなおもたらしている。彼らが政府の経済目標に貢献しながら、適切かつ相応の柔軟性を持って快適に自由に生活できるようにするべきなのだ。
新聞記事はここまで
利用者の視点(筆者独白)
あくまで冷静なマレーシア側の視点を紹介した記事を読んでみて感じるのは、
まず、マレーシアの人気や、為替レート、そしてインフレを背景とした、MM2Hのビジネスとしての売り方は、少々「強気」になり過ぎていると言う懸念です。
確かにマレーシアは引退の地、保養の地として人気があり、生活費も、まだ少しは海外より安いと言えます。しかし、それだからといって、「突然」不動産購入を「必須条件」に切り替えるのは、ビジネスの交渉マナーとしていかがなものでしょうか?
例えば、この先のシルバー層の不動産購入条件を緩和する用意があるなら、なんとなく興味を持ち続けることができそうですが、東マレーシアのサバ州が用意した、定期預金などの条件の良いMM2Hも、やはり一律60万RMの不動産購入が必須条件です。
FMTの記事の中に、東マレーシアのMM2Hと西のシルバー層のMM2Hが競合にならないよう配慮されているという解説がありましたが、これも、納得しにくい話です。
将来的に、東マレーシアから「出れなくなる」ような、条件強化が発動されるかもしれないという雰囲気の中で、東マレーシアを拠点に長期滞在するでしょうか?
今後の政府の動きを見つめて行きたいと思いますが、張大臣にはシルバー層の「資格基準」を考え直して欲しいですね。富裕層の受け入れ窓口は整ったのですから。
最後まで参照いただき、ありがとうございます。
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