今回のアイキャッチ画像の写真は、写真家Alphaさんが、Flickrに投稿されたライセンス付きの転載可能写真です。詳しくはこちらを参照ください。
時間をかけて構築中のマレーシアの偉人を紹介する「馬国人列伝」です。
今回は、固有名詞を出せないのですが、紛れもなく「偉人」として称えられるべき人物を紹介します。それは、世界の食文化をランキングするワールドアトラスで、世界一のパン食として認定された「ロティチャナイ」(語源 roti canai )を発祥させたインド系マレーシア人に他なりません。
去る1月に、新しいネットメディアとして登場したThe Rakyat Postは、国民食であるロティチャナイの発祥が、果たしてインドなのかマレーシアなのかについて、しっかりした記事を出してくれました。
実は、過去に「骨肉茶」(通称 バクテー)については、発祥について詳しい記事を残してきたのですが、このロティチャナイについては、発祥云々についてあまり記録してきていないように思えます。
このロティチャナイというキーワードは、このブログのアクセスランキングのトップにあるゴールデン検索ワードですから、この話題は外せません。そこで、未だ発見されていないロティチャナイという料理の創始者を、あらかじめ馬国人列伝(まこくじんれつでん)に含めてしまおうというものです。
インドなのかマレーシアなのか
「ロティ・チャナイはインド発」— X(旧Twitter)ユーザーの発言が物議に
January 23, 2025 The Rakyat Post (TRP)
X(旧Twitter)ユーザーのアミット・ミスラ氏は、「世界最高のパン」というランキングにマレーシアのロティ・チャナイが1位に選ばれたことについてコメントした。
彼は、「実際、マレーシアの人気のフラットブレッドであるロティ・チャナイはインド発祥であり、インド人労働者によってマレーシアにもたらされた」と投稿し、TasteAtlasが発表した2023年の「世界のベストブレッド」ランキングの画像を添付した。 (筆者より: 詳しくはこちらを参照ください。)
マレーシア人ネットユーザーは猛反発
アミットのコメントには、多くのマレーシア人から反論が殺到した。彼らは、ロティ・チャナイはインド人労働者が持ち込んだものではなく、マレーシア独自の創作料理だと主張している。
マレーシア人は地元の料理に対する誇りが強く、その食文化を守るためならどこまでも戦う国民性を持っている。
これまで、マレーシア人はシンガポール人やインドネシア人と「同じ料理のどちらが本家か」で論争を繰り広げてきた。しかし今回は、インド出身の男性が炎上することとなった。
彼の主張はどこまで正しいのか?
ある研究によると、パンの起源は西南アジアにあり、そこから東アジアへと広まったが、東南アジアでは主食として定着しなかった。つまり、この地域でパンが自然発生したわけではなく、どこか他の地域から伝わったということになる。
考古植物学的研究によると、パンの最古の起源は約14,400年前のヨルダン北東部に遡るとされている。
ロティ・チャナイは確かにインドのフラットブレッドから影響を受けているが、調理方法の違い、そして「ロティ・チャナイ」という独自の名称によって、マレーシア発祥の料理として広く認識されている。
たとえば、インドの「パラタ」は、生地を何層にも折りたたんで作るため、焼き上がりはサクサクとした食感になる。一方、マレーシアのロティ・チャナイは、ギー(精製バター)を使用してこねるため、より柔らかく伸びる生地が特徴だ。さらに、伸ばした生地を折りたたんで焼くことで、外はカリカリ、中はフワフワの食感に仕上がる。

「チャナイ(Canai)」という言葉が「チェンナイ(Chennai)」に由来するという説もあるが、一方で、マレー語では「生地を薄く延ばす」という意味の言葉でもある。実際、ムンバイやケララで「ロティ・チャナイ」を注文しても、現地の人には通じない。インドでロティ・チャナイに最も近いものは、「マラバール・パラタ」や「ケララ・パラタ」として知られている。

結論:食文化の進化こそが料理の魅力
結局のところ、すべての料理にはルーツがあり、世界中に広まる中で、各地の文化や食材に適応しながら進化していく。だからといって、その料理が本家でなくなるわけではない。むしろ、異文化の融合や食文化の進化こそが、料理の世界をより豊かで面白いものにしているのだ。
馬国民もロティチャナイを再評価
もう一つ、昨年、コロナ問題を契機にロティチャナイが「朝食」だけでなく、ランチや夕食の対象として商業価値を上げているという記事があるので(少し古いですが)ご紹介。

多くの人がロティ・チャナイを選択、厳しい家計事情が背景に
【ジョホールバル発】— 市内の飲食店業界によると、昼食にロティ・チャナイを選ぶ人が増えている。
ジョホール・インド系ムスリム起業家協会の書記であるフセイン・イブラヒム氏によると、以前は24時間営業の飲食店やママックレストランでは、ロティ・チャナイは主に朝食用として提供されていた。しかし、新型コロナウイルスによる行動制限令が施行された後、昼食時にもロティ・チャナイを求める顧客が増加している。
「以来、需要の増加に伴い、当協会の加盟店はロティ・チャナイを24時間提供するようになりました。お客様の多くは、ナシカンダールやミックスライスよりもフラットブレッド(ロティ・チャナイ)の方が安価であるため、そちらを選ぶと話しています」(フセイン氏)
ロティ・チャナイ(プレーンタイプ)は1枚あたりRM1.20~RM1.50で、2枚と飲み物を合わせても約RM5程度で済む。一方、ミックスライスの一皿はRM10~RM12ほどかかるため、コストを抑えたい人々がロティ・チャナイに流れていると考えられる。
フセイン氏は、昼食だけでなく夕食でもロティ・チャナイを注文する客が増えているという。
市内のいくつかの24時間営業の飲食店を調査てみた。ここ数年でロティ・チャナイが昼食の選択肢としてますます人気を集めていることが確認できた。
あるレストランのマネージャー:「ナシカンダールなどのメニューと比べると価格が安いため、お客様はロティ・チャナイを好むようです。その影響で、私たちは提供するおかずの量を減らし、食品ロスを防ぐようにしています」
一方、ジョホール州の保健・環境委員会の委員長であるリン・ティアン・スン氏は、生活費の高騰を理由に不健康な食生活を選ぶべきではないと警鐘を鳴らしている。
「保健省では、バランスの取れた食事を推奨する『スク・スク・セパル』(1/4炭水化物、1/4タンパク質または肉、1/2野菜や果物)という食事指針を広めています」(リン氏)
彼はまた、バランスの取れた食事と定期的な運動を心掛けることで、疾病予防が可能になり、過密状態にある公立医療機関の負担軽減にもつながると指摘。
「現在、病院を受診する患者の多くは心疾患、糖尿病、脳卒中といった非感染性疾患を抱えています。これらは主に不健康な食生活、運動不足、アルコールやタバコの摂取などが原因です」

確かに、筆者も馬国滞在中に食べ過ぎて太ってしまったと反省しておるところ・・・

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