この投稿は、本編「修行体験」の詳細記事です。
世襲でなく一代で事業を興して年商2千万ドルの商売を動かす社長とはどんな人物なのか?
今回はそのお話。
筆者が日本の企業に在籍していた頃のことです。
ビンセント社長に最初に会った日の印象は、
「そばかす顔でやせぎすのアジアの高校生がスーツ着て会社訪問に来た」
英語は流暢だが、活舌がよくないので、少し聞き取りにくい。スターとアップかベンチャーの若手チャレンジャーだろう・・・適当に相手してか帰ってもらおう。
この人物が個人資産数百万ドルの「成功者」とは夢にも思いませんでした。
威圧感の無い気配り社長
ビンセントは「権威」よりも「親近感」を重視する人間でした。
そのことを象徴する出来事は幾つも記憶にあります。
彼が社内を歩いているのを見ても、威圧感や権威性は全く感じません。
社員との会話でも、真剣な雰囲気はあるが、けして威圧的な態度はとりません。
昼食時に職場のスタッフ5~6人で近くの食事処に出かけると
■ 混雑時の座席を予約しておくのは社長
■ 円卓で注文した食事を全員に配るのは社長
■ その場の勘定を支払うのも社長
けして下っ端の社員にアレンジや立て替え払いをさせませんでした。
恐らく、日本の会社文化には無いものです。
緊張感と寛容性が共存する職場
管理職に威圧感が無いと、社内に厳しさが足りなくなる場合があります。
しかし、ビンセントの場合はその心配はありません。
社員は絶対に彼の存在や言動を軽視しません。
ここぞという場面での言葉遣いや眼光の鋭さ、全身にみなぎる気迫は周囲の人間にはっきり伝わっていました。
妥協なき勝負師の言動、曖昧であることを許さない気迫です。
見た目の威圧感ではなく、内面の気迫が伝わってくるタイプです。
自分の持っている問題意識を隠さず、徹底して悩む姿を見せます。そして、絶対に折れません。その強さは常人を超えていました。
かれは消して「イケメン」経営者ではありません。
しかし、オフィスの女性社員からの信頼度は非常に高かったのです。
意思疎通の才能
筆者は彼よりも体格は大きめで背丈もありました。
意見が合わない場合は、ぶつかることも必要です。
彼は、筆者の考えに「違和感」を持つと、それを隠すことはしない人間でした。
そのような場面ではハッキリと、しかも強い意志で
WRONG ! (「それは違う」)
と言ってきます。
いつものとおり、その意思疎通のスタイルには全く「嫌味」が無く、率直なので、こちらの内面に感情的な反発が湧き出る余地がありません。
なぜ自分と彼の考えは違うのか?
という、本質に集中できる会話になります。
その瞬間の自分の内面では国籍や人種や立場の隔たりは消え去っていて、ただフラットな問題解決への取り組みだけが残るのです。
筆者自身もまた人間であり、常に素直であったわけではありません。
筆者の中にある日本人的な反骨感情さえ瞬時に沈静化するビンセントの会話力には何か神がかり的な神通力を感じました。
天才経営者というのはそういうものなのでしょう。