この投稿は、本編「馬国で育って医師になるで」の詳細記事です。
この話は長男哲男(仮名)が、馬国のインターナショナルスクールに通い、日本の中学生の年齢の時期には1学期だけ日本の公立校に短期転入、そして大学進学前に Pre-University という制度を利用した経緯に基づきます。
一時的とはいえ「馬国に移住を決意した」家族にとって、長男がどのような大学に進むのかは重大な関心事でした。
まして、哲男が「医師になりたい」と強く志望した以上、その夢を叶えようとするのが親の心情であり、責任でもあります。
しかし、日本の医大への進学を計画することは不可能でしたし、そのための学費を払い切れる確証もありません。
どうすれば医師になれるか?
筆者家族の「医師」への悲願。
そのために長男哲男が選択したのがIMU(International Medical University) への進学でした。
私立大としてのIMUの位置付け
IMU(国際医療大学)は日本の「海外留学推進協会」という財団法人がそのネット上で正確に紹介していますので、そちらを参照いただくとして、ここでは、日本の学徒がこの大学に進むことの意味について紹介します。
IMU本体のウェブページを見ると、その巻頭には次の通り紹介されています。
IMU is Malaysia’s first and most established private medical and health sciences university with over 30 years of dedicated focus in healthcare education. IMU has SETARA-2018/19 rating of 6 stars (Outstanding) under the Mature University category.
「海外留学推進協会」も次のように紹介しています。
「マレーシアで最初に創立された、現在もなお最大規模の医療系専門大学。マレーシアの医療系人材輩出のトップ大学」
これらの記述や情報は間違っていません。
馬国の私立医大としては最大級であり、海外の医大とのタイアップもある知名度の高い大学です。
欧米の医大への転入制度も充実していますが、日本の医大との強い繋がりはありません。
学費について
前述の「海外留学推進協会」によれば、2030年のIMUの医学コースの学費は、
5年間で1,650万円(RM548,000)、つまり年間3百万円強
IMUのウェブサイトで調べても、ほぼ同額:RM575,000/5年
但し、入学金として別途 RM6,350 かかります
筆者個人の記録では、円換算(約30円/RM)で次の金額でした
2013年:280万円 + 2014年:110万円 + 2015年:118万円 + 2016年:118万円 + 2017年:118万円
合計740万円前後が当時の学費ですから、現在では当時の2倍以上になっています。
2023年の春に筆者の知り合いの馬国人から聞いたのですが、現在IMUに外国の学生が就学するには約百万リンギットの学費を用意する必要があると言う情報です。つまり3000万円です。
シンガポールからの学生の留学が影響しているのかもしれません。
3千万円という学費は、日本の私立医大(6年制)の学費と同等か、それより少し高いレベルになってしまいます。
医師に成るための条件
医師は医師免許を所持したプロでなければならず、現実的にはブラックジャックのような無免許の施術士は問題外です。
これは馬国でも同じ・・・
IMUは医療大学であり、医師になるコースも存在します。したがって日本の学生も入試を受けて合格すれば医師の学位を取ることができます。
しかし、問題は「医師免許」です。
IMUは学位をとった卒業生に自動的に医師免許を与えることはしませんし、ましてや「外国の学生」に医師免許の取得を指導することはしていないのです。
なぜなら、馬国では医師免許を取るためにはマレーシア国民にならなければならないからです。(馬国の配偶者になることもひとつの解決ではあります)
ですから、IMUを卒業することを検討している皆さんは、
IMUを卒業してどうするのか
について、結論を持っていないと、出口の無い袋小路に入り込むことになるのです。
卒業の直前に明かされた事実
IMUでの5年間は長男にとって充実した日々でした。
彼は同じ年代の学生数名と共に大学の近くのアパートで共同生活をしながら、将来医師として社会に出ていくことを夢見て、毎日はつらつと学んでいました。
恋愛もあり、結婚直前までに発展しましたが、若さゆえに実現していません。
周囲では、単位が取れずに学位を落として離脱していく学生が多かった。それでも長男は単位を全て取得。あとは学位(Bachelor of Medicine, Bachelor of Surgery degree – MBBS)をとるところまで来ました。
しかし、家族から深刻な現実を告げられたとき、筆者は言葉を失いました。
大学側から「哲男は医師免許が取れない」という説明があったのです。
「なぜそんなことを今言ってくるのか!」
「それなら、なぜ入学させたのか?」
私たちは怒りに打ち震えました。
しかし、考えてみれば、IMUは医療・医学を教える大学ではあるが、「医師免許」を与える機関ではありません。医療・医学を「学ぶ」ことには否定できない価値があります。
また、医師免許に関わる法律は、学生自身が調べて知っていなければならないことです。
途方に暮れました。
ここで終わっていれば、この記事も存在しなかったでしょう。
しかし、この問題を解決する「狭き門」がありました。
それは、日本の厚生労働省が実施している海外の医学生のための「予備試験」制度です。
そのお話は今後の記事で紹介していきます。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。