【MM2H情報】知っときたい 馬国政府と議会<1>

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この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。

馬国の新聞の見出しを見ると、代議士や政治家の紹介の時に”MP”という略語があります。

日本人には馴染まない略語ですが、馬国では一般的に、 Member of Parliament(議員)という意味で、選出された地域の地名のあとにMPを続けて、「○○選出の議員」という意味になっています。

例えば、靴下問題で有名な Akmal 議員は Merimau MP (メリマウ地区の議員)という肩書がついています。

馬国の国会は、1959年に英国の運用規則を基盤に発足した最高決議機関で、222人の代議員(または下院議員)と70人の上院議員(Senator)と輪番制のマレーシア国王で構成されています。

日本の国会と似通った構造になっている、と漠然と思っていましたが、まったく同じではありません。

日本版の Wikipedia を見ても、馬国の議会については基本的な情報がサラッと紹介されているだけで、いまひとつ特徴が読み取れません。

そこで、英領マラヤから発足した馬国議会を深堀りするために、イギリスの母国語である英語版の資料をチェックしてみました。

筆者も真面目に調べたのは、今回が初めてですので、初心者です。

本日の記事の内容は次の資料を参照して纏めました:

  • Wikipedia英語版:“Dewan Rakyat”, ”Dewan Negara”(日本版、中国版で名称確認)
  • Wikipeida 日本語版 : 「両院制」、「単純小選挙区制」
  • 画像は英語版の Wikipedia のものです
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現在の「両院制」と代議院の権限

実は、英・米・日の議会システムは正しくは「両院制」(英語で bicameral system )と呼び、ドイツ・フランスは「二院制」なんだそうです。

マレー語Dewan RakyatDewan Negara
英語House of Representative
(lower house)
Senate
(upper house)
日本語マレーシア代議院マレーシア元老院
中国文馬來西亞下議院馬來西亞上議院
任期5年(または解散まで)3年
定員222 70
選任単純小選挙区制度国王枠 (44) 州議会枠 (26)
日本語版・英語版・中文版 wikipedia より筆者が編纂

上院の下院の区別は、特にどっちが偉いというのではなくて、米国の量院制議会がフィラデルフィアにあった頃に議会の建物の2階が「元老院」で1階が人数の多い「代議院」に割り当てられただけだそうです。両院制の詳しい意味は日本語のWikipedia「両院制」で解ります。

以下、馬国の両院制システムを纏めた結果です

マレー語のDewanは英語の hall (議事堂など)で、Rakyat は「人々」、Negara は「国家」を意味します。

代議員が多いDewan Rakyat(代議院)は、連邦政府が憲法46条を根拠に管理している222の地理的な選挙地域( Federal Constituencies )から議員を招集しています。それぞれの選挙地域は、英国の民主政治発祥以来続いてい「単純小選挙区制」(英名 First-past-the-post voting )により代議員1名を選出します。

つまり、馬国全土は、222の連邦選挙区に地理的に区分されていて、それぞれの連邦選挙区( Federal Constituency )から1名の政治家が Dewan Rakyat の議会に参加しているわけです。直接選挙ですから、民意が反映されやすいですが、単純小選挙区制は当選者の憶測を背景に「人気投票」ないし「美人投票」に陥るデメリットがあります。

この代議院は、最大5年までで、解散します。政変があれば都度選挙で222名が選任されます。222の選挙区区分は、10年に一度の頻度で人口統計等を資料に見直しがかかります。現在の議員構成は次のとおり

新たな法案を成立させるには上下両院の同意が必要ですが、実際には下院(Dewan Rakyat)の方がが大きな権力を持っています。上院(Dewan Negara)は下院が可決した法案をほとんど拒否しませんし、下院が特定の法律を2度可決していて、2度の可決の間に少なくとも1年経過していれば、上院が否決しても法案を施行できます。

内閣下院の決定内容について執行する責任があり、首相下院の信任が得られないと解任されることになります。

下院の代議員(上院議員との兼務はできません)は、下院が解散しても、選挙で当選さえすれば何回でも続けて就任可能です。また、議員の被選挙権は2019年の連邦マレーシア憲法の改正で21歳から18歳に引き下げられています。

代議院の議長(Speaker)と国会

代議院の総選挙(General Election)が終わり、各 Federal Constituency のMPの選出が揃うと、5年間の下院議会が開始されます。

代議院の最初の仕事は、議長(Speaker)の選出ですが、これは一定のルールで MPの中から選抜されます。

議長は一定の権限があり、代議院での話し合いや質疑を管理します。

代議院元老院国王とで構成されているParliament(国会)は、連邦政府の立法府であり、主要な法律の制定、修正、および廃止に責任を負っています。

馬国のメデイアによく出てくる写真=代議陰会館 写真は wikipedia 英語版 Dewan Rakyat

首相と内閣と代議員の関係

首相とその内閣から成る一団のリーダー層が、行政府 (executive government)です。

通常、行政府は両院制の国会メンバーから選ばれます。しかし、実際はほとんどが下院のメンバーで、選抜されるタイミングは、総選挙後や首相の辞任または死亡です。

国王首相下院から選出します。首相は政府の長であり、憲法的には国王の次に位置し、事実上、国会における最大の指導者です。

首相が選ばれると、次に、首相内閣のメンバー・リストを(国王に)提出し、内閣のメンバーは国王によって大臣として任命されます。(内閣のメンバーは国会のメンバーでなければなりません。)

内閣は政府の方針を策定し、法案を起草し、非公開で会合を開きます。そのメンバーは内閣の決定について「集団的責任」を負います。内閣の決定に責任を負いたくない場合は、辞任します。(憲法は規定をしていませんが)内閣には首相の後任となる副首相も存在します。

元老院の構成と役割

もう一度「両院制」のテーブルを置きます。(右が元老院)

マレー語Dewan RakyatDewan Negara
英語House of Representative
(lower house)
Senate
(upper house)
日本語マレーシア代議院マレーシア元老院
中国文馬來西亞下議院馬來西亞上議院
任期5年(または解散まで)3年
定員222 70
選任単純小選挙区制度国王枠 (44) 州議会枠 (26)
日本語版・英語版・中文版 wikipedia より筆者が編纂

Dewan Negara(英語: Senate = 州議会、元老院)はマレーシア議会(国会)の上院であり、70人の議員で構成されています。26人は各州の立法議会によって2名づつ選出され、残りの44人はマレーシア国王が任命しています。

元老院は通常、下院である代議院で可決済みの法案を審議します。すべての法案は両院で可決される必要があり、その後、国王の承認を得ます。ただし、元老院が法案を拒否した場合でも、法案が国王に送られる遅延期間は最大1年です(英国貴族院の制限と類似)。

元老院はもともと代議院の抑制機能として、または、馬国各州の利益を代表する機能として設立されました。しかし、歴史的には国王による任命数を増やした経緯があります。これは「政治政党の党派を超えた法案の再考」が行われることを意図していて、英国の貴族院の役割に似ています。

元老院の議員は、英語では「Senators」またはマレー語では「Ahli Dewan Negara」(直訳すると「Dewan Negaraのメンバー」)と呼ばれ、敬称として「Yang Berhormat Senator」とされます。任期は3年で、再任には一定の制限があります。

各州13の立法議会は、2人の議員を選出します。国王は、首相の助言に基づいて、クアラルンプール連邦直轄地として2人、そしてそれぞれラブアンとプトラジャヤの連邦直轄地として各1人を任命します。

そして、に関係なく、(首相の助言によって)国王が別の40人の議員を任命します。

元老院はあまりメデイアには出ません。この写真はウィキペディアの英語版に掲載されていました。 豪華で貴族的な雰囲気です。

任命する議員は、「顕著な公共活動を行ったか、専門分野、商業、産業、農業、文化活動、社会奉仕において優れた成果を上げたか、人種的少数派を代表するか、または先住民(オラン・アスリ)の利益を代表できる能力を持つ者」でなければなりません。

候補者は、マレーシア国民であり、30歳以上である必要があり、連邦内に居住しており、外国に対する忠誠心がなく、1年以上の禁固刑を受けたことがなく、RM2,000以上の罰金を受けたことが無いことが条件。常勤公務員は不適格です。議員は政党に所属する必要はありません。

議会は、必要なら各州の上院議員を3人に増やしたり、任命される議員の数を減らしたり、既存の上院議席を廃止することができます。

2023年6月時点での元老院は63名の議員で構成されていて、その殆どは国王が任命した議員です。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

なんとなく、マレーシアの政府と国王の力関係が感じられるように出来ていますね。

次回は、法案の可決までの手順だとか、国会の会期などのルールをご説明します。こちらです。

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