【MM2H情報】馬国の急速な英語化事情

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この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。

馬国は19世紀後半から大英帝国の完全な統治下にありましたし、憲法や政治の仕組みも英国の知見を取り込んで建国された国です。

ですから、今更英国の強い影響に対して懸念を示す意味があるのかどうか疑問です。

むしろ、国際語である英語を受け継いだことを幸運と思う方が得策なはずです。

それでも、太古から守ってきたマレー語文化が次第に英語にとって変わる流れに対しては、強い懸念があります。マレー語が絶滅危惧種になるのは、世界遺産的な視点でも問題ではあります。

一方、マレー語には、もともと英語だった言葉が、十分な配慮を受けずに中途半端にマレー語に組み込まれてしまった事例が多いようで、自国の言語を少し軽蔑した目で見ている馬国民もいるようです。あまり好ましくない外来語については正式なマレー語を追加して置き換える努力も必要でしょう。

例えば、学校を意味する sekolah あたりは、別のマレー語の単語を定着させるべきです。

マレー語の保全を考えるなら、ボキャブラリの世界で侵食されている部分を大胆に改定すべきだと常々思います。

日本語も筆者が小学生だった頃と比べると、随分英語化していますから、気をつけないと本来の日本語が風化してしまうかもしれません。

ご参考まで、この記事は、馬国の英語学専攻の研究員が New Straits Times に投稿した個人的な意見書であって、馬国全体に浸透している運動や団体の主張では無いです。そしてこの方が引用している anglicisation という特殊な単語も、日本語表現の「英語化」よりは、むしろ「英国化」に近い学術用語なので、一般的な英語化の表現として正しいものかどうか議論の余地がありそうです。

言語多様性の保全は必須

Preserve Malaysia’s linguistic diversity

August 20, 2024 @ 1:19am new straits times

20年前の若年層は自分たち(マレーシア)の民族語や他の先住民族の言語に堪能でした。

しかし、今日、マレーシアの子供たちは民族的出身に関係なく、英語を日常的に話したり、日常会話の中でスムーズに英語にコードスイッチする場面が増えています。残念ながら、子供たちは自分の民族語で自分自身を表現するのに苦労しはじめています。

これを進歩の指標と見る人もいるかもしれません。しかし、言語学者としては、これは問題視せざるおえない。多言語国家としての我々の誇りであった言語多様性を英語化の進行が、蝕んでいます。これをアングリサイゼイション (anglicisation:英語化) と呼んでいます。

「アングリサイゼイション」とは、英語の言語、文化、規範が他の言語や文化をますます支配するプロセスを指し、これにより地元の言語の使用と重要性が低下していくことを意味します。この文脈では、英語が民族語に急速に広がることを指します。

英語の価値を理解している親たちの考えとして、子供たちが早くから英語に親しむように育てるのは理解できます。

一方で、テクノロジーやソーシャルメディアに普及している英語の常用により、子供たちが適切な形で自らの民族語に触れる機会が、ほとんど無くなっています。

私がこの種の研究で接している子供の中には、家庭生活において、両親が母語ではない英語を選んで常用している例があります。

メディアの影響も加わり、その子供が母語である(この場合はマレー語)に触れる機会は、日常のやり取りの中で10%未満です。その10%も、能動的にマレー語を使う環境ではなく、マレー語話者との偶然の接触によるものでした。

子供がどのようにしてマレー語の習熟を獲得するのか尋ねると、親たちは「外で」言語を身につけることを期待していたり、単に環境に任せていると答えます。

親たちが気づいていないのは、今や子供が「外で」晒されている環境もまた、非常に英語に偏っているということです。

私たちが目の当たりにしているのは、英語一辺倒(または、先ほど述べたようなアングリサイゼイション環境)であり、英語がこれほどまでに支配的になり、マレーシアの民族語が影を潜めてしまっている状況です。

看過していれば、やがては英語が国の主要言語となり、他のすべての言語は徐々に消えていくリスクに晒されます。これは誇張ではありません。 隣国にその事例があります。

image photo by envato elements (Asian group hijab woman smilling in cafe with friend) オンライン記事の一部ではありません。

そこで、言語の多様性を保つために、以下の提案をしたいと思います。

ご両親:毎日30分を、バハサ・マレーシア、マンダリン、タミル語、または他の民族語で子供と一緒に読書をしたり、単に母語で会話をする時間に充ててください。

子供たちとの絆を強めるだけでなく、子供たちが民族的遺産を尊重して成長するためです。

言語は環境を通じて習得されるもので、その環境は双方向的で能動的であるべきです。偶然に任せるべきではありません。

教師の皆さん:生徒たちが民族語での物語や経験を共有することを奨励してください。これにより多言語環境が育まれ、生徒たちが自分の言語的ルーツや文化的アイデンティティに誇りを持つようになります。

学校では、英語の日があるのをよく耳にしますが、他の言語についても同様のことを行うべきです。学校は多言語の使用を促進するイベントを開催し、それが真の多言語文化の祝典となるでしょう。

政治家の皆さん:教育政策において、バハサ・マレーシア、マンダリン、タミル語、英語の学習を学校教育全体で必修とすることを検討してください。

学生が7歳から17歳までこれらの言語を学ぶと想像してみてください。研究によると、人々が多言語であればあるほど(その集団は)より開かれた考え方を持つようになります。

多言語世代は、私たちの多様な社会において、より大きな理解、文化的な感謝、そして団結を促進することができます。

これは、私たちのマレーシア人としてのアイデンティティを守り、国を定義する言語の多様性を維持するために非常に重要なことなのです。

ラビア・トゥル・アダウィヤ・モハメッド・サレー

児童言語研究者 (child language researcher)

国際イスラム大学マレーシア(英語学・文学)

Department of English Language and Literature, International Islamic University Malaysia

言語の「コードスイッチ」

読者
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コードスイッチの意味がよくわかりません。言葉の学問では一般的な用語ですか?それとも学術用語?

英語で「コードスイッチする」という表現は、話し手が異なる言語や方言の間を切り替えて話す行為を指します。例えば、マレーシアの子供が日常会話で、母語であるマレー語や中国語などから英語にスムーズに切り替えることを「コードスイッチ」と言います。

具体的には、同じ会話の中で、ある部分を英語で話し、次の部分を別の言語で話すことや、文中に異なる言語の単語やフレーズを挿入することなどが含まれます。コードスイッチングは、特に多言語環境でよく見られる現象で、話し手が状況に応じて使いやすい言語や表現を選ぶために行われます。

「コードスイッチング」(code-switching)は、英語圏でも比較的よく知られている言語学の専門用語です。特に多言語社会や多文化的なコミュニティに関する議論で頻繁に使用されます。アカデミックな場や言語学の研究においては広く使われていますが、一般の会話や日常的な言葉としてはそれほど一般的ではありません。

ただし、特定のコミュニティ、例えばバイリンガルやマルチリンガルの環境では、日常的に「コードスイッチング」が行われていることがあるため、その文脈でこの用語が使われることがあります。たとえば、アメリカの多言語コミュニティ(スペイン語と英語が混在する地域など)では、コードスイッチングが非常に一般的で、その現象を指すためにこの用語が使われることもあります。

要するに、「コードスイッチング」という表現は専門用語としてはよく知られていますが、一般的な日常会話で頻繁に使われる言葉ではありません。

出典:自然言語AI(Chat Gpt)による解答例 (2024.08.20)

アングリサイゼイション(英語化)

アングリサイゼイション(anglicisation,  æŋ.ɡlɪ.saɪˈzeɪ.ʃən)とは、非英語のものがイングランドの文化に同化または影響を受ける文化的同化の一形態です。これは、社会文化的な面では、非英語圏の場所や人が英語の言語や文化を採用することを指します。また、制度的な面では、機関や制度がイングランドやイギリスの影響を受けることを意味します。言語的な面では、非英語の用語や名前が、英語の文化的影響を受けて変化することを指します。また、英語のソフトパワーの影響を指すこともあり、これにはメディア、料理、大衆文化、テクノロジー、ビジネス慣行、法律、政治制度などが含まれます。

出典:英語版 wikipedia “Anglicisation”

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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