この投稿は、本編「がちで起業」の詳細記事です。
マレーシアで独立開業した個人の自営業主はどのようなアイデアで金儲けを企むのか?
この記事は、そんな「自営業ネタ」に興味がある方への紹介記事です。
筆者が動き回っていた当時の自営業主は皆さん揃って「なんか儲かる話はないかねえ?」という話に明け暮れていました。
責められないですね、生き延びるためには儲かる事業をするのは当然。
恥ずかしながら、筆者は、「金儲け」だけを目標にしていたところがあって、自分の専門だとか馬国への技術移転だとか、貢献面については「手段」になってしまっていました。
長い目で見れば、この考えや生き方はうまくいきません。
それを前提に、マレーシアでの「一攫千金」のお話をしたいと思います。
個人事業主の「儲け話」3選
大前提として、日本人ないし日本の事業者が「儲かりそう」な仕事というのは、すでにプレイヤーが沢山いましたから、そういう分野はこの記事から外れます。
例えば、日本食の貿易商、寿司などの日本食レストラン、日系の人材派遣業、日馬の通訳・翻訳会社、旅行代理店、日本語学校です。
ここでの話題は、「小資本」の個人自営業が考える、少し(だいぶ)危ない「儲け話」3選です
設現場周辺の飲食店(期間限定)
水商売に興味をお持ちなら、大きな建設工事が予定されている地区での「飲食店」が儲かります。
立派なレストランのイメージではなく、ホッカーズ形式です。ある程度の敷地を借りて軽食と定食を提供する屋台群を期間限定で経営します。
飲食業は基本的に馬国人が得意とする分野ですから、平場(ひらば)の競争では太刀打ちできないし、「日本人が入ってくるな」と嫌われるだけです。
そうではなく、大きな建設工事(できれば日系企業が受注したもの)が予定されている郊外の空き地で、工事期間だけに限定して運営するのです。手順としては
1. 日本人コミュニティーから建設工事の計画情報を入手(現地側がまだ知らない時点)
2. 現地の事業パートナー(馬国人)を選定(信頼できる相手を決める)
3. 敷地の確保(広すぎず、狭すぎず)
4. 期間と利益配分の決定と契約
地域の産業設備の建設は、建設場所の造成から家屋や産業設備の建設の完成まで、だいたい2年から3年かかります。工事の最盛期には多くの作業員で賑わう地域に変貌するものです。
現地の事業パートナーとなる馬国人はできるだけ現地の「有力者」に近い存在を紹介してもらいます。そして、その人間にもきっちり儲けてもらうことが前提です。最低でも儲けの半分は現地パートナーに渡すことを推奨します。
工事が終われば、その場所は「ひとけの無い場所に」逆戻りです。地域の人出も激減しますから、タイミングよく出店群を閉めることが肝心。そのタイミングも一定の条件を儲けて、関係者全員と事前に契約しておくのです。
どうしても事業を継続したいパートナーがいれば、工事が終了する時期に100%その人に譲渡して、その後は、一切合切の利害を切ってください。
カラオケ・バー(いわゆるKTVラウンジ)
筆者自身は、馬国女性のホステスを集めたカラオケ・バーに「行く」ことはありましが、自分で経営することは全く考えていませんでした。
しかし、筆者の知り合いで、日本人の自営業主が少なくとも2名、このカラオケ・バーを営業していました。いずれもクアラルンプール市内です。今も営業しているかどうかは、わかりません。
基本的に、日本の風俗に該当するものではないので、お酒が飲めるラウンジとして飲食店系統の届出で運用するようです。
利用客やホステスとのトラブルをいくつも耳にしましたので、筆者としては、推奨できませんが、自営業仲間では「儲け話」の一つでした。
オーナーとなった日本人自営業主は、別の仕事でご一緒しましたが、いずれも大人しく低姿勢で、決して「怖い人」ではありませんでした。
日本人の特徴と言えるのは、こういった「風俗」ギリギリのレベルまでは、現地の経済圏に飛び込んでいきますが、「一線を超えて」風俗まで深入りする人がいないことです。
文字通りの風俗系に手を出した人や企業は全くいませんでした。
特殊現場工事
馬国人は、「危険なこと」や「毒物」に対して非常に過敏なところがあります。宗教的な影響もあるのかもしれません。日本人よりも何倍も「危ないこと」や「毒性のあるもの」に対して拒否反応が強い。
筆者の知り合いで、最も「危ない橋」を渡って大きく儲けた自営業主は、馬国の「特殊現場工事」を請け負っていました。
何が特殊かというと、産業設備の「デ・コミッショニング」をするということです。「デ・コミッショニング (decommissioning)」というのは、産業設備の「操業停止と解体」です。
海外から導入しゅた特殊な産業設備に中には、その心臓部に劇薬や毒物を使用するものがあります。もちろん、その危険性は、取り扱いを謝れば死亡事故に繋がる可能せがあるレベルです。
こういった設備の解体案件があると、操業主は必死で解体業者を探しますが、これを受ける馬国の解体業者は皆無と言って良いでしょう。
そこに入って言って、現地の作業員を引き連れてい解体作業を終わらせてしまう猛者が、筆者の知り合いにいました。
もちろん「言い値」で受けますから、1件の契約額は大きく、利益率も非常に高い仕事です。
もちろん、お勧めできる話ではないですが、こういう仕事でも入っていける自営業主は生き延びます。この方は今も個人自営業現役です。ただしこの仕事は、滅多に引き合いがきません。
「何か一緒にやらないか?」のメリット・デメリット
個人事業を持って何年も営業していると、やがては現地の日本人事業者と知り合いになります(特に努力しなくとも、自然に知り合いになっていきます)
自営業者は、皆それぞれ職種は違いますが、同じように四苦八苦して、騙されたり、失敗したりしていますから、何かお互いの助けになることがあれば、やりましょうという話にもなるものです。
一緒に食事をしたり、飲み会をもったりして懇意になってくると、自然と「協業」の話が持ち上がります。
協業といっても、資本を合わせるのではなく、何らかの事業を計画して、それを「2人か3人でやりませんか」という限定的な話が多いです。
普段は日本と違う約束と信頼の文化で馬国人と仕事をしているのが自営業主です。素性を知っている現地の日本人から協業を持ちかけられて悪い気はしません。(まともにやっていると評価された証拠でっすから・・・)
相手は何年も馬国で生き延びた日本人ですから、何か学べるかもしれませんし、信頼ベースで事業ができそうに思えます。
しかしこれにもメリットとデメリットがありました。
異国で日本人どうしの協業:メリット
メリットについては、以下の4つが考えられます。詳しい説明は不要だと思います。
- 日本語での意思疎通なので、密度の濃い段取りが可能
- 知らない相手ではないので日本的な信頼関係がある
- 互いの人脈を生かしたビジネスができる(日本人脈です)
- 離脱する場合でも安心して任せられる
異国で日本人どうしの協業:デメリット
心配をすればキリがないのですが、しかし、簡単に「一緒にやりませんか?」とは言えない事情があります。
1. 過剰な信頼感を持ちすぎる
2. 日本人事業主双方の従業員が激しく対立してしまう
3. 現地コミュニティに嫌われた場合に外交的な問題となる
日本人どうしなので、どうしても協業相手に日本的な期待感や信頼を持ってしまいます。そして、期待通りにならない場合の失望感や苛立ちは相当のものです。
事業のトップが日本人であっても、やはりその配下はマレーシアのリソースが動いて仕事をするのですから、下請けやサポートにつくのは馬国人です。思うように仕事が進まない場合も多々あります。
「自分の担当ぐらい、きちんとやれよ」と言いたくなる場面が増えてくると、信頼感が崩れます。お互いが相手に「日本人としての」過剰な期待を寄せてしまうのです。モチベーションは大きく落ちます。
さて、2番目のデメリットです。
それぞれの事業主は、ほとんどの場合、有能な馬国人の参謀なり、サブ・リーダー格を使って馬国チームをまとめます。この参謀役やサブ・リーダーが双方の日本人経営者の下にいると、彼らのレベルで厳しい衝突が始まります。
このサブ・リーダークラスの衝突や「疑心暗鬼」は相当厳しいものがあります。場合によっては力づくの喧嘩にまで発展するので要注意です。金が絡むと大人しい馬国人も豹変します。
できれば、お互いの使用人が「顔をあわせない」で仕事そすれば良いのですが、それは難しいと思います。そして、衝突が始まると、もう上のいうことも聞かない「猪突猛進」が始まるのです。
最後に、心配すべきは、「日本人の事業」というレッテルです。
何かの誤解や、第3者からの誹謗中傷があった場合、「日本人の悪だくみ」的な印象を持たれるリスクがあります。なぜなら馬国は人間関係の天井が低い国だから。
そうなると、事業はうまくいかず、結局は解散を余儀なくされます。
最悪の場合は、日本に「ご帰国」というシナリオも考えられます。怖いですね。
考えてみれば、独立開業している日本人事業主は、大変な努力で、現地の仲間と微妙なバランスを保って会社を育ててきているのです。そして地域の役人や有力者とも、非常に気を使ってお付き合いしているのです。
その自営業者の仕事に(顧客以外の)他の日本人が経営者として入ってくると、育ててきた事業組織のバランスや、地域の人々との関係を壊すことにもなりかねません。
日本人どうしで協業して 50:50 でうまく運用しようというのは、実はとても難しい試みなのです。
最後まで参照いただき、ありがとうございました。ご参考になれば幸甚です。