【MM2H新聞】政府決定 フォレストシティ 免税島

MM2H

アイキャッチ画像上で黄色いせんで囲んだエリアが、現在の Plau Satu です。プロジェクト全体の15% と言われています。(出典は Wikipedia “Forest City” 黄色い枠線は筆者)

この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。

下院の通常国会を終えた2024年8月。

今後マレーシアファンが頻繁に耳にするであろう新たな観光用語が登場しました。

Pulau Satu (プラウ・サトゥ)

Pulau は「島」、そして Satu は「ひとつ」又は「一番」「いち」を意味します。

意味としては、一番目の島ということになりますが、今回はもっと具体的に、ジョホールの南東にある一つの島を意味します。

この島、Pulau Satu こそ、これまで本ブログで何度も話題にしてきたフォレストシティ(Forest City, 森林城市)の最初の埋め立て地(人工島)なのです。グーグルの空撮写真にもはっきり写っています。

グーグルマップでは、近い将来、この出島のような部分が Plau Satu という表記になるはずです。

この夏の上院(王立議会)下院(国民議会)の国会で可決されたのは、この Pulau Satu を免税特区とすることでした。この結果、マレーシアの島で免税特区となっている場所は以下の5箇所となったわけです。

  • ラブアン (Lauban)
  • ランカウイ (Langkawi)
  • ティオマン (Tioman)
  • パンコール (Pangkor)
  • プラウ・サトゥ (Pulau Satu)

しかし、この島は、ご存知の通りいわく因縁のある森林城市(中国不動産大手の碧桂園が6割を出資している16兆円規模の都市建設プロジェクト)の最初の埋め立て地ですから、厳密には TiomanやPangkorのような自然に存在している島とは根本的に別物です。

そして、ご存知の通り、この森林城市は、別名「世界最大のゴーストタウン」とも呼ばれている閑古鳥の住宅@プロジェクトです。

筆者が投稿したこのプロジェクトの最新記事はこちらです。

そして、シンガポールのルポライターが現地の様子を克明にレポートしてくれています。

ライターはこの記事で、実際にここに住んでいるのは9000人程度としています。筆者も複数のニュースソースで現実的な居住規模を確認してきましたが、この数字が正しいようです。

しかるに、今回 malay mail が大々的に全国紙で報道した Pulau Satu に関する、あまりにも楽観的、かつ輝かしい近未来を彷彿とさせる情報は何なのでしょうか?

今回の報道では、既に2万世帯の取引を終えたとしています。

Forest City, which covers 14 square kilometers of reclaimed land on four artificial islands near the border of Malaysia and Singapore, has to date sold more than 20,000 units.

By Ben Tan, malay mail, Wednesday, 31 Jul 2024 7:00 AM MYT

おそらくは、契約すみの2万世帯のうち半分以上は投資目的で、人が住んでおらず、おそらく多めに見ても4500世帯程度が実際に人が住んでいるというのは(ひいきめに見た)現状ではないでしょうか?

プロジェクトの当初の趣旨である、2015年までに70万人の都市という大目標は未だ健在のようです。

8月1日の malay mail の記事は、同社のベン・タンさんというライターの記事です。そして彼は同じ日に3つの記事を 31 Jul 2024 7:00 AM MYT(馬国時間の7月末日朝7時)に同時に流しています。3つの記事のタイトルは以下の通りで、内容はほぼ同じものを異なるアングルで脚色したものでした。(邦訳は筆者)

What is Pulau Satu in Johor’s Forest City, Malaysia’s next duty-free island?

ジョホールの森林城市にある Pulau Satu とは?マレーシアの次の免税島?

In Johor, duty-free island status for Pulau Satu seen lifting Forest City trade and property

ジョホール州 Pulau Satu が免税特区に指定され、森林城市の交易と不動産に付加価値

Pulau Satu: How the island’s duty-free status could round out the Johor-Singapore SEZ and SFZ

Pulau Satuの免税特区は、いかにしてジョホール州とシンガポールの経済特区をまとめあげるか

筆者は馬国ファンなので、政府批判はしたくないわけですから、正面切ってこの報道は「提灯記事」だとは言いたくありません。

一方、この取り組みには、現在のマレーシアの国王であるイブラヒム閣下とジョホール州政府が自らプロジェクトの4割を出資するスポンサーとなっているからには、

馬国政府は、ある意味「力づく」でも森林城市に住民を引き寄せて、ジョホール地区の経済活性化の主体を目指しているのでしょう。

デフォルト状態の碧桂園について

このブログで何度も紹介してきた通り、森林城市プロジェクトの6割を出資開発する碧桂園(Country Garden) は現在債務超過の経営危機の直面しています。

現在110億ドル相当のオフショア債務がデフォルト(債務不履行)に陥っていて、既に中国国内の債権者とは2億ドル以上の未払い債務をめぐって香港の司法当局も介入して清算審議に入っています。

香港の株式市場での取引についても停止処分となっています。

ところが、この会社は、もうだめだと世界中でレッテルを貼られてから既に半年以上、まるで何もなかったかのように生き延びているのです。


しかも、7月29日のロイターの報道によれば、件の2億ドル以上の債務不履行による会社整理の審議は、7月末に、香港の裁判所が来年1月に延期しているのです。

筆者の推測の域を出ませんが、碧桂園は、おそらくゲリラ的にステークホルダーと個別交渉を続けており、会社同士の債権の利害の決着をうまく引き延ばす作戦をとっているようです。

碧桂園の弁護団によれば、オフショア債務についても当事者と断続的に交渉が続いており、着々と解決に向けて話が進んでいるというのです。

これ以上具体的な理由を書くことは控えますが、碧桂園は世界の報道と司法の表舞台には見えない部分で非常に戦略的かつ効果的に事態の収集に向けて動いているようです。

けだし、財力というのは、これほどのトラブルにあっても、司法や政府を含むステークホルダーを人ずてに動かして、不可能を可能にしてしまうもののようです。

大手報道機関は、この会社について騒ぐことはやめてしまいました。碧桂園がどこまで耐えられるかは、誰も予想できません。少なくとも、決算ができず、証券市場でも取引停止になっている会社です。まともではありません。

マレーシア政府の動き

この1年間というもの、デフォルトレベルの経営危機に晒された碧桂園について、マレーシアの政府も国王も、ただの一言も触れていません。

筆者も新聞を丹念に(毎日)チェックしてきていますが、この一年以上、政府や国王筋は、碧桂園という会社の経営危機についても、碧桂園の要人との対話についても、ただの一言もステートメントを出していません。もちろん、何も知らないはずはありません。

森林城市場のプロジェクトの方は、最初の埋立地を終えたところで中断しているわけですから、建設工事で費用が垂れ流しになっているというわけではなさそうです。

あとは、Pulau Satu という2万世帯規模の島の維持費です。この維持費は、おそらく経済特区を定義したことで、利用客とMM2Hで承知した中国の富裕層の流入で賄おうと考えているのだと思われます。

森林城市の2035年の完成は、政府の公約というわけではなく、プロジェクトの宣伝ですから、これが実現しなくとも、現在の Pulau Satu が Pangkor や Langkawi のように観光拠点として繁盛してくれればそれでよしという考え方なのかもしれません。

今回の malay mail の記事の中にも、残る3つの埋立地についての開発スケジュールについては、最終目標の確認があるだけで、具体的な情報はありません。

今回の malay mail の報道では、40%を出資しているマレーシア側の資本については、単にマレーシアの個人企業であるという表現に止めており、イブラヒム国王やジョホール州政府の関与には触れていない。この変化は注目すべき変化です。

場合によっては、皇室と州政府は任意の私企業に資本権益を引き渡すかもしれません。

原文:Country Garden Pacificview, Forest City’s master developer, is 60 percent owned by Country Garden and 40 percent owned by Esplanade Danga 88, a private Malaysian corporation.

Wikipedia “Forest City” に掲載のプロジェクト概要図

今回も登場した経済特区の略語は以下の通り

SFZ : Special Financial Zone (金融特区、特別金融区)

JS-SEZ : Johor-Singapore Special Economic Zone (ジョホール・シンガポール経済特区)

Duty-free island status for Forest City’s Pulau Satu could be another piece in the policy puzzle that already includes the state’s Special Financial Zone (SFZ) and the Johor-Singapore Special Economic Zone (JS-SEZ).

新聞記事の要約

What is Pulau Satu in Johor’s Forest City, Malaysia’s next duty-free island?

By Ben Tan malay mail.  Wednesday, 31 Jul 2024 7:00 AM MYT

ジョホールのフォレストシティは、4つの指定島のうちの1つが免税区域となることで大きな注目を集める見込みである。この取り組みは、メガプロジェクトへの関心を高めることを目的としている。

閉幕した上下院の国会で、連邦議員は島に免税ステータスを付与するための5つの修正法案を可決した。

Customs (Amendment) Bill 2024, Excise (Amendment) Bill 2024, Free Zones (Amendment) Bill 2024, Sales Tax (Amendment) Bill 2024, and Service Tax (Amendment) Bill 2024 that jointly make Pulau Satu a duty-free island.

以下は、Pulau Satu に関する基本情報である。

Pulau Satuとは何か?

フォレストシティは、中国のデベロッパー、碧桂園によるメガプロジェクトで、2013年末に建設が始まった。

Pulau Satuは700エーカーの人工島で、4つの島の中で最も開発が進んでおり、総額1000億米ドルのプロジェクトの約15%を占めている。

現在、この島にはフォレストシティのセールスギャラリー、商業スペース、マリーナホテル、ウェディングスクエア、商業ユニット、免税店、国際学校、小規模オフィス/ホームオフィス(SOHO)タワーがあり、コワーキングスペースを提供している。

また、水上公園、ビーチバー、ビーチアクティビティエリア、統合交通ハブなどのレクリエーション施設も備えている。

免税区域から国定の免税島へ

Pulau Satuは2016年に免税区域として指定された。

しかし、今回の修正により、Pulau Satuはラブアン、ランカウイ、ティオマン、パンコールと同様の特別税制を持つ免税島となる。

the amendments will make it a duty-free island with special tax provisions, similar to Labuan, Langkawi, Tioman, and Pangkor.

Pulau Satuは主要関税区域からも外れ、免税商品の販売に関する税許認可や、申請手続きなどの規制が緩和・免除される。

大きな計画の一環

先月、ジョホール州首相のオン・ハフィズ・ガジ氏は、フォレストシティの特別金融区(SFZ)のためのインセンティブが8月に最終決定されるべきだと述べた。

Johor Menteri Besar Datuk Onn Hafiz Ghazi said incentives for the Special Financial Zone (SFZ) in Forest City should be finalized in August.

昨年8月、アンワル首相は、南ジョホールの大部分を占めるイスカンダル・マレーシア経済圏を活性化するため、フォレストシティをSFZとして指定したことを発表した。

フォレストシティは、マレーシアとシンガポールの国境付近にある4つの人工島で構成され、総面積は14平方キロメートルであり、これまでに2万以上のユニットが販売されている。

この開発は8つのフェーズからなり、住宅、レジャー、商業、産業スペースを含むメガプロジェクトとされている。

物件所有者の大多数はシンガポール、マレーシア、中国からである。

筆 者
筆 者

つまり日本人と欧米人の利用者は、このプロジェクトに否定的なので、何となく敬遠されているということ。

筆 者
筆 者

今年から馬国の国王陛下がジョホールのスルタンであるイブラヒム国王陛下となり、去る7月には戴冠式も行いました。はっきりとは分かりませんが、ジョホール州の経済発展への馬国政府の働きかけや予算配分は、厚みを増してきていると言えそうです。

 同じ日の malay mail 記事(2件)

同日発行された記事については、コンサルや私企業の声明を紹介して、今回政府が決定した免税島 Pulau Satu が、今後の森林城市での経済の活性化に大いに寄与するといった、商業界の声を紹介するものでした。

誰が何を言っているか、詳しい内容は以下の2つの記事を参照ください。

筆者としては、注目店は前述しましたので、残る2件の記事の内容には興味が持てず、特に内容を紹介する必要を感じませんでした。

In Johor, duty-free island status for Pulau Satu seen lifting Forest City trade and property

By Ben Tan malay mail , Wednesday, 31 Jul 2024 7:00 AM MYT

Pulau Satu: How the island’s duty-free status could round out the Johor-Singapore SEZ and SFZ

By Ben Tan, malay mail  Wednesday, 31 Jul 2024 7:00 AM MYT

最後まで参照いただきありがとうございます。

 この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。馬国の「おすすめ情報」まとめ記事はこちらです。

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