石化ガスのパイプラインに損傷・大炎上

番外編

本日のアイキャッチ画像はIndia TodayのSNSへの投稿から転載しています。この動画は英語で報道していますので、次のアドレスからご覧いただけます。

馬国、セランゴール州で珍しい事故です。

クアラルンプールの南西70Km地点、Suban Jayaの南、Shah Alamの東に位置する新興住宅地である Putra Heights (プトラハイツ)の造成工事現場で、国家規模の石油ガスの元売り企業であるペトロナスが管理するパイプラインが多量の石化ガス(石油化学ガス、あるいは炭化水素ガス)が噴出。同時に引火して巨大な炎の柱となって吹き上がったのです。

赤い印の位置が事故現場ですが、ここはクララルンプールの中心街から南西に70km 程度で、西に見えるクランの港まで22km の住宅街です。もう少し北西の工場地帯のシャーアラームで炎上しなかったことは不幸中の幸でした。

事故は2025年4月1日の朝8時頃発生。対処に手間取ったようですが、パイプラインの要所に設置してあるパイプの開閉のためのバルブを閉めることで、午後3時過ぎに収まりました。

筆者は、かつては石油ガスのプラント設備の設計施工を担う企業に在籍しており、今回のパイプラインを所有・管理するペトロナスの下請け企業としてマレーシア国内に石油精製設備を建設した経験があり、この手の事故の危険性や対処方法について一定の知見がありますので解説します。

巨大な炎の柱と周辺の被害

事故が起きた場所は、馬国の複数のオンライン報道から以下のマレーシアの地図の紅いノッチがあるあたりとわかります。

オンライン報道を配信している FMT, NST, The Star, Malay Mail はいずもこの事故をトップで報道しており、被害状況の報告にはまだ統一性がありませんが、人が命を落としたという報道は全くありません。人への被害は火傷ですが、その程度についても、今後の詳しい報道がなされるまでは不明です。少なくとも数十人が近隣の病院施設に移送されています。

車や家屋への被害も少なからず報告されているようです。(末尾のオンライン報道の訳文を参照)

この事故が珍しい理由

今回炎上したのは、非常に危険な可燃性ガスを搬送する高圧のガスパイプラインからのガスの流出が原因です。日本では「高圧ガス」という法律がありますが、マレーシアでも、この種類のガスのパイプラインの設置と管理には厳しい法的規制があります。

なぜ高圧なのかというと、石油から抽出される石化ガス(プロパンなどの石化ガス)は、常温では気体になり、容量が大きいので、ある程度圧力をかけて、温度も冷やして搬送する必要があるからです。費用対効果を計算すると、ある程度高圧環境で運ぶのがベストであり、ガスを常時低い温度にキープするのはコスト高になります。

したがって、石化ガスにはコンプレッサーを使って一定の圧力をかけ、その圧力に耐えうる強度のパイプラインに押し込んで、圧力を使って目的地に送るようになっています。

ですから、使用されるパイプは、十分頑丈であり、使われる金属の素材も充分な厚みのあるものを使用しています。その重量はたった1メートルの長さでも100kgに達するほどです。とても人間が手で動かせるものではありません。こういったパイプを繋ぎ合わせて、途中でガスが漏れないように世界の最先端の技術でつなぎ合わせたものですから、ちょっとやそっとでガスが漏れるなどということはあり得ません。

この高圧パイプが壊れたということは、かなりの力が加わったということに他なりません。人間がピストルやツルハシでパイプを壊そうとしても無理です。もっと大きな建設機械などの重機を持ってきて破壊しないとびくともしないのです。

流出を止めるのはそう難しくない

もちろん、ガスの流出は絶対に避けなければなりませんが、それでも、航空機などの墜落は重量物の落下などで、本当に今回のように頑丈なパイプラインが壊れる可能性はゼロではありません。

そのために、パイプラインには一定の距離をおいて開閉自在のゲートを設けてあり、そこには非常に高価で精巧なバルブが設置してあります。

破断したパイプラインから送り元方向にある一番近いバルブを閉めれば、ガスは止まりますから、パイプラインの中にあったガスが全部燃えれば火は消えます。

少し理不尽ではあるのですが、バルブから破断したパイプまでのあいだのガスは、燃やしてしまうのが一番安全な管理方法です。下手に火を消すと、残ったガスがそこらじゅうに流れていってしまうので、あちこちで引火して大惨事になるからです。

事故は住宅街の一角で発生した。

ですから、消防は、この手の事故の場合は、とにかくあらゆる人々と動かせる設備を火もとから遠ざけて、ガスが全部燃え尽きるまで待つことになります。

原因究明に向けた動き

上述の通り、頑丈にできているパイプラインを壊したのは誰がどうやったことなのか?これが、セランゴール州知事や馬国政府の関心事です。そこで次のような情報収集が始まっています。情報が集まって火災の原因が判明したら、また別の記事で解説したいと思います。

日本でも発生しないとは限らないので・・・

Selangor MB urges public to help with probe into gas pipeline fire
Police are currently looking into whether digging near the site had led to the fire.

翻訳し、日本の報道記事のスタイルに合わせてまとめました。必要に応じて修正や追加情報があればお知らせください。

【セランゴール州ガスパイプライン爆発事件:州首相が証拠提供を呼びかけ】

ペタリンジャヤ発—セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は、プトラハイツで発生したガスパイプライン爆発に関して、事故原因を明らかにする証拠を持つ情報提供者による警察への報告を呼びかけた。

呼びかけは、現場での土地造成作業がガスパイプラインの火災を引き起こし、多くの財産が破壊され、多数の負傷者を出した可能性があるとの疑惑が浮上している中で行われた。

「事故原因に関する証拠や情報を持つ方は、警察に報告するよう強く促します」と、アミルディン州首相は声明で述べた。

火災は4月1日の朝早くジャラン・プトラ・ハーモニーで発生し、完全に鎮火するまでに約8時間を要し、同日の午後3時45分にようやく鎮火した。

この火災により、87軒の住宅が全壊、148軒が部分的に損傷した。また、合計225台の車両が被害を受け、うち50台以上が甚大な損傷を受けている。

国営通信社ベルナマによると、セランゴール州警察本部長は、ペトロナス社の保有地で行われた土地造成作業がガスパイプラインを損傷させ、火災を引き起こした可能性があるとの指摘を受け、調査を進めていると述べた。

「私たちはすべての可能性を調査し、事実であれば、誰が作業を行ったのかを明らかにしたい」と、フセイン本部長は強調した。

同氏によると、消防当局とペトロナス社は、影響を受けたエリアを詳しく調査し、正確な原因を突き止める予定であり、調査は明日から本格的に開始されるという。

さらに、UMNO(統一マレー国民組織)の青年部指導者によると、現場周辺の住民は昨年12月から行われていた工事について懸念を表明していたという。

UMNO青年部コタ・ラジャ支部長は情報筋の話として、ラマダン明けの祝日「ハリラヤ・アイディルフィトリ」の初日に、バックホー(掘削機)が現場で稼働しているのが目撃されたと述べた。

彼は後に、緩衝地帯で稼働していたショベルカーなどの重機の写真を公開した。

最後までご覧いただきありがとうございます。

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