ジョホール州の森林城市で今度は「密輸」問題

MM2H

この記事は、本編【MM2H体験】の関連記事です。

新年の1月5日に、全国紙の New Straits Times の報道から、森林城市の免税特権を悪用した違法行為が発覚。

ご承知のとおり、馬国のジョホール州のスルタンやジョホール州政府が資本参加している14兆円規模の「埋め立て都市計画」である森林城市 (Foresty City) は政府の肝入りの開発地区であり、馬国でも唯一の免税特権が与えられた場所です。

つまり、この新都市の中で消費する限り、「国外からの輸入品に輸入税は課税されません」と言う例外措置が認められています。

ところが、この都市計画の6割を出資する中国の不動産デベロッパー「碧桂園」が事実上デフォルト状態に陥る中、開発中の森林城市への居住者はほとんど増えておらず、ゴーストタウン化してしまっているため、

市内でいくら免税品を並べても、売れ行きはさっぱりでしょう。何しろ当初の計画は2035年までに70万世帯をこの場所に持ってくる計画でしたから、免税品の販売量も半端ではないはずです。

居住者がまばらな森林城市に持ち込まれる大量の免税品は、供給過剰になり、在庫は増え続けます。当然ならら、水が流れるように市外に流出することとなります。

市外への流出は取締られているようですが、実際には「輸入税」を払えば、商品は一般の輸入品と同じですから。法的には、税関で輸入税を精算すれば合法的に市外で販売できるはずです。

ところが、馬国の税関当局の監視の目を逃れて、森林城市の外に「密輸」されている「酒類」があると言うのです。

間違っても、この辺りの「裏ビジネス」に関わらないようにしたいものです。

森林城市の「ゴースト化」については英国のBBCも大きく報道しています。

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NSTのオンライン・レポート(2024.01.05)

New Straits Times のレポートの邦訳

ゲランパタにある森林城市では、免税措置を受けたアルコール飲料やタバコの密輸が横行していることが明らかになっている。

報道によると、森林城市の免税複合施設内には「エイジェント」と呼ばれる人物が存在し、顧客が購入した免税品を一定の金額で持ち出す手助けをしている模様。

これらの「エイジェント」は、潜在顧客に躊躇なく近づき、商品を密輸して税関の検査を逃れるための取引を持ちかけている。

森林城市からのビールの密輸は、1箱あたり最低25リンギットが相場であるとの情報で、別途、酒やタバコの種類によって密輸料金はさまざまだという。

New Straits Times 紙 (以下 NST ) は密輸行為の情報を受け、10軒以上の免税店が並ぶ森林城市の免税複合施設を訪れた。

New Straits Times のレポートの邦訳

免税品の購入ルール(森林城市内)

New Straits Times のレポートの邦訳

しかし、免税で購入したアルコール飲料やタバコは森林城市内で消費するのみで、持ち出すことはできない。

購入のためには、外国人であれば身分証明書、マレーシア人であれば「マイカード」の提示が必要。また、森林城市の居住者は専用カードの提示が義務付けられている。

以上は、複数の免税店店員に確認した結果だ。

NST紙は店員に対し、免税品を密輸している人を知っているかどうか尋ねたところ、店員はこれを否定。商品を市外に持ち出すと課税対象になるとだけ答えた。

税関の規定では、消費者が免税価格で購入できるビールは 3ケース(1ケース24缶)まで、酒類は5リットル、タバコは3カートン(200本 x 3 )までとなっている。チョコレートだけは上限が無い。

New Straits Times のレポートの邦訳

裏取引を手配する脱法行為

New Straits Times のレポートの邦訳

免税店を出た記者は、若い男に声をかけられた。彼は自分自身を「ランナー」と呼び、森林城市から商品を持ち出すのを手伝うことができると言う。黒のTシャツ、ジーンズ、キャップ姿で、ビール1箱あたり25リンギットの手数料を請求しているそうだ。

「ランナー  (runner)」 は馬国のアングラのビジネスでは、頻繁に使われる隠語で、闇取引や裏取引を成立させるための連絡役や調整役を受け持つスタッフ的存在。実権を握っているラスボス的な存在は別に居て、取引には顔を出さず、細かな仕事はランナーにまかせている。筆者は自営業時代にこういった「ランナー」に何度か遭遇したが、持ちかけてる仕事の内容は非合法であり、とても関与する気にはなれませんでした。(筆者)

通常143.90RMで販売されているタイガービール1箱は、免税店では74.30RMで販売されている。25RMの手数料を加えても、通常の店頭価格よりも安くなる。

どうやって持ち出すのか尋ねると、彼は「森林城市の複合施設の地下駐車場で会う」と言う。そこで商品を目立たないように引き受ける。そして商品を自分の車に積み込み、税関職員とフォレストシティの警備員が駐在する複合施設を出る。

その後、静かな森に囲まれた道路沿いにある森林城市外で顧客と合流し、商品を現金と交換する。

商品を「持ち逃げ」されるリスクについて質問すると、「今まで3年間、何の問題もなく営業している」と自信を持った答えが返ってきた。

捕まる危険性について尋ねると、彼は税関職員とは「妥当な取り決めが有る」と答えた。曰く、「一度に30箱持ち出すような場合は、1、2箱分の課税だけで済む。そうでなければ、そのまま通過できる」また、森林城市への訪問者は多くないため、自分のサービスは免税店運営者の生活に貢献していると。

New Straits Times のレポートの邦訳
NSTはここ数日で複数の「密輸」記事をアップしている。誌面にはたくさんのビールを乗せたワゴン車が掲載されています。

個人的な脱税行為に注意

New Straits Times のレポートの邦訳

このように、森林城市の免税品の密輸が横行しているが、NSTの調査によると、「ランナー」がいなくても自分で商品を持ち出すことも可能だ。

記者が敷地内に入る際、駐在している税関職員は記者に対し、「免税で購入したアルコール飲料やタバコは森林城市内で消費しなければならない」と注意した。

しかし、3時間後に記者が施設を出た際、通関ポイントの税関職員は不在だった。 出口には Security Guard  がひとりしかおらず、記者の車をほとんど見ずに通過を許した。

New Straits Times のレポートの邦訳

この報道内容は、あたかも消費者が密かに免税品を市外に持ち出せるような説明をしていますが、筆者が馬国内で様々な取引をした経験からして、日本人がこのような脱法行為に走るのは「極めて危険」と言わさるお得ません。馬国の刑法や司法は、一度「違法」と言う扱いになると「ルール通り」に処置することが大原則なので、その場の役人や管理職の「忖度」や「お目溢し」は期待できません。消費者から見て些細なことでも、「禁固刑」に該当すると本当に留置されます。くれぐれもご注意ください。

当局の見解

New Straits Times のレポートの邦訳

イスカンダル・プテリ警察署長のラハマット・アリフィン助監によれば、過去、数人が逮捕され、1967年関税法違反で起訴されている。

州貿易・投資・消費者問題委員会の委員長、リー・ティン・ハン氏は、規則に違反した人は責任を負わなければならず、罰せられるべきだと言う。

「森林城市は最近、Special Finance Zone(特別金融地区)に指定されていて、レジャー・観光・貿易・ホスピタリティのための魅力的な地域として特例が享受されているが、悪用は許されない。 常に国の規則と規制を遵守しならない。」

フォレストシティでの免税品の密輸は深刻な問題だが、当局が対策を強化し、規則に違反した人は責任を問われるべきだろう。

New Straits Times のレポートの邦訳

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