【番外】暗号通貨は国の経済を救えるか?

番外編

2019年、当時38歳でエルサルバドルの大統領の地位にあったナジブ・ブケレは、同国議会に「ビットコイン法」を提唱。この法案が可決されたため、ビットコインはエルサルバドルの法定通貨となったのです。

この年は、サトシナカモトがビットコインの運用を開始した2009年から10年めに当たり、この暗号通貨の仕組みが、確かに銀行を介さず未知の利用者の間で取引され続けるという、ほとんど不可解な電子的価値の有効性が世界的に注目を浴びていた時期です。

ビットコインと称する通過価値ばかりが注目を浴びる世の中ですが、実はサトシナカモトがホワイトペーパーで提唱したのは、ブロックチェーンと言う「電子暗号取引プロトコル」であり、

この電子的な仕組みは、投資をするための対象ではありませんでした。サトシが提唱したかったのは、「銀行のような仲介を不要」とすることと、「世界中の誰とでも安全に取引ができる」と言うことであり、さらに「取引」の定義は「AさんからBさん(複数可)に価値を支払うこと」に限定されていました。

この仕組みが「使える」と知った知識人は、ビットコインに米ドルや日本円による交換レートを設定し始めます。交換レートが運用され始めると、ビットコインは「投資対象」に祭り上げられました。しかし、これは本来の暗号通貨の存在意義では無いのです。

ビットコインは、もとより米ドルや日本円と交換するために運用されるものではなく、P2Pによる利用者同士の「支払い処理」だけに有効なプロトコルだったのですが・・・

専門的視点

​​不肖、筆者も5年前に、100ドル以上のコース料金を払って、米国のエキスパート講座の通信教育を受けて、暗号通貨エキスパートの認証をもらっています。実際のところ、この講座はブロックチェーン技術と運用のエキスパート講座でした。

筆者自身、この技術の勉強をして感じたことは

  • 確かに技術的には優れている
  • 国際間の取引には有効活用できそうだし、利点が多い
  • 当事者間の信用取引に誠実な日本国内ではほとんど需要がないだろう
  • 取引の当事者全員がブロックチェーンのルールにあらかじめ合意していないと意味が無い
  • 貯蓄や利食いのための暗号通貨の利用は全く的外れで、何のメリットも感じない

ということで、よほど世界情勢が変化して、世界の一般市民の過半数が納得するまで、個人的には暗号通貨には「絶対に触れない」ことを決めています。

技術的には、大変興味深いものです。

エルサルバドルの決断は正しかったか?

全国民が大統領の趣旨に賛同して、ビットコインで生活することにコミットするなら、判断は正しかったのかもしれません。

しかし、法律まで作っておきながら、実際の運用は米ドルや自国通過の「オプション」でしかありません。これでは効果は半減どころか、実際には何をやっているのかよくわからな区なってしまいます。

ごく一部の住民が成金になるという「サクセス・ストーリー」は面白いかもしれませんが、このことは暗号通貨の本質から完全に逸脱しているので、ナンセンスでしかありません。

エルサルバドルのチャレンジ

How a taxi driver in El Salvador got rich with Bitcoin
Napoleon Osorio uses an app to charge for rides in bitcoin and now runs his own car rental company.

【サンサルバドル発】世界で始めてビットコインを法定通貨に指定したエルサルバドルでのタクシー運転手をしてきたナポレオン・オソリオ氏 (Napoleon Osorio) 。彼は、この国で最初にビットコインによる支払いを受け入れたタクシードライバーであることを誇りにしている。彼は、数少ないビットコイン成金なのだ。

彼の人生を変えたのは3年前にビットコインを金融界に導入したナジブ・ブケレ大統領の決断だと語る。President Nayib Bukele’s decision to bank on bitcoin three years ago

3年前、中央アメリカのこの国の指導者は、米ドル送金に過剰に依存する自国経済を活性化するため、「ビットコインを法定通貨として流通させる」という大胆な賭けに出た。

国際機関からのボラティリティリスクに対する警告にもかかわらず、数億ドルもの税金を暗号通貨に投資したのだ。

オソリオ氏に話を戻そう。

「以前は失業状態だったが、今は自分のビジネスを持っている」と語る39歳のオソリオ氏は、(国から与えられた)専用アプリを使ってビットコインで乗車料金を請求し、現在は自らのレンタカー会社を経営するまでになっている。

米国のNGO「マイ・ファースト・ビットコイン」の創設者であるジョン・デネヒー氏が、ビットコインでの支払いを受け入れるよう勧めてくれたと言う。(founder of the NGO My First Bitcoin, John Dennehy)

現在、オソリオ氏は「ビットドライバー」という企業ブランド名で21人のドライバーを雇い、暗号通貨の値上がりで得た利益で4台のレンタカーを購入するまでになった。2人のティーンエイジャーの父親だが、今は子供の教育費に困ることもない。

ビットコインの含み益が彼を裕福にしたのだ。

国民的アプリ:Chivo Wallet

2021年9月7日、ビットコインを法定通貨として導入したブケレ大統領は、銀行を利用していない70%のエルサルバドル国民を金融システムに取り込むことを目指し、すぐに公的資金を暗号通貨に投入し始めた。

彼は、ビットコインの送受信が無料でできる「チボ・ウォレット (Chivo Wallet) 」というアプリを開発し、新規ユーザーに$30を提供することで、エルサルバドル国民にビットコインの利用を促した。

あくまでオプションである

オソリオ氏がビットコインでそこそこ裕福になった一方、エルサルバドル国民の88%がビットコインを未だに使用していないことが、公共意識研究所の調査で明らかになっている。University Institute for Public Opinion

「当初から、国民に支持されない誤った判断であることがわかっていた」と、同研究所のローラ・アンドラーデ所長はAFPに語った。director of the institute, Laura Andrade

エルサルバドルのGDPの4分の1は、主に米国から送金される家族からの送金によって占められているが、2023年にはそのうちわずか1%が暗号通貨での送金だった。

8月のタイム誌のインタビューで、ブケレ大統領は、マクドナルドやスーパーマーケット、ホテルでビットコインを使って支払いができるが、「期待していたほどの広範な採用には至っていない」と認めた。

曰く、「強制はしていない。あくまでオプションとして提供したもので、選んだ人々はビットコインの値上がりで利益を得た」

さらに、ビットコイン約4億ドルが「コールドストレージウォレット」に保管されていることを明らかにした。ビットコインをオフラインで保管する方法である。

評価損のリスク

ビットコインの運命は一進一退だ。

今週、ビットコインは約5万2,000ドルで取引されており、3月13日のピーク時の7万3,616ドルから下落している。2022年11月には、1万6,189ドルまで下がったこともあった。

独立系経済学者のセサル・ビジャローナ氏は、ブケレ大統領自身がビットコインの普及を阻害したとAFPに語っている。Independent economist Cesar Villalona

「ブケレ大統領は、『給料はビットコインで支払われない、年金もビットコインでは支払われない、貯蓄もビットコインで行われないし、価格もビットコインで表示されない』と述べたことで、通貨の3つの機能を奪った」とビジャローナ氏は述べた。

暗号通貨への恐れ

「マイ・ファースト・ビットコイン」の講師であるルイス・コントレラス氏は、多くのエルサルバドル国民がビットコインに移行することを単純に恐れているとAFPに語った。Luis Contreras, an instructor at My First Bitcoin

同団体は、暗号通貨を公立学校に持ち込み、これまでに約35,000人の生徒にビットコインの使い方を教えてきた。

コントレラス氏は、ビットコインのトレーニングで最も難しいのは「新しいものへの恐怖」だとし、これが技術に対する恐怖や、現行の通貨から完全にデジタルで分散化された通貨への移行に対する恐怖を生み出していると指摘している。

原文:the hardest thing about training people on bitcoin is their fear of new things, which creates a fear of technology as well as the fear of moving from a classic currency in the current economy to one that is totally digital and decentralized.

国際的信用度

ブケレ大統領のビットコインに対する大きな野心は、当初、国際通貨基金(IMF)には受け入れられなかった。IMFは、暗号通貨への依存についての懸念から、エルサルバドルへの13億ドルの融資を渋った。

今年8月には、IMFはエルサルバドルと暫定的な融資協定に達したが、未だ潜在的なリスクを軽減する必要があるとしている。

ブケレ大統領

ナジブ・アルマンド・ブケレ・オルテス(スペイン語: Nayib Armando Bukele Ortez、1981年7月24日 – )は、エルサルバドルの政治家、実業家。現在、同国大統領を務める。パレスチナ系ムスリムの父とキリスト教徒の母を持つ。

エルサルバドルのムスリム・コミュリティで精神的な指導者の地位にある「イマーム」のエマソン・ブケレは兄弟。

2019年の大統領選挙に中道右派の「国民統合のための大連合」 (GANA) から立候補し、当選。ファラブンド・マルティ民族解放戦線 (FMLN) と民族主義共和同盟 (ARENA) の2大政党以外から誕生した大統領としては、ホセ・ナポレオン・ドゥアルテ(1984年 – 1989年在任)以来であった。

source : wikipedia

2021年9月7日に世界で初めてビットコインを法定通貨に採用したが、その後1年で暗号通貨の価値が暴落し財政リスクを高める結果となり、2021年11月に発表した戦略都市『ビットコインシティー』の建設計画も大幅に遅れている。(下記「ビットコイン法」参照)

2024年6月1日、国内の選挙で圧勝し、大統領(2期目)に就任。就任式にはアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領、元アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプの息子ドナルド・トランプ・ジュニアらが出席している。

出典:日本語ウィキべディア「ナジブ・ブケレ」

ビットコイン法(スペイン語: Ley Bitcoin)

暗号通貨のビットコインを2021年9月7日よりエルサルバドルで法定通貨とする旨を定めた法律。

大統領のナジブ・ブケレが法案を提出し、2021年6月8日に立法議会で可決された。

条文には「この法律が意図するのは、革新的能力を備えた無制限の法定通貨としてビットコインを規制することであり、公/私・自然人/法人を問わずいかなる取引においても無条件にこれらの条文の遵守が求められる」とある。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

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