馬国人列伝 03:テレサ・コック

馬国

アイキャッチ画像は、英語版 wikipedia に掲載されたもの。この人の写真で、簡易ライセンスで掲載できるものは、この一点のみでした。新聞記事を検索してみてください。

首都圏の女性下院議員の中で、最も際立つ華人改革派の人物と言えば、今年60歳になったテレサ・コク(Teresa Kok Suh Sim、郭素沁、1964年3月生)でしょう。

彼女は以前から野党の議員(Democratic Action Party、民主行動党)でしたから、日本で言えば、立民・社民の福島みずほ(69) と元立民の蓮舫(57) といった存在。若い頃は日本のタレントだったアグネスチャンを思わせるような愛らしいルックスで人気を集めました。

イスラム中心の馬国政府にあって、理不尽・不公平に思うことをはっきりと口に出して主張してきた政治家であり、多くの華人国民だけでなく、幅広い層から支持を得ています。彼女がキリスト教徒であり、政府会計監査委員会の副会長であることも、ムスリム以外の馬国人の支持を持つ上で微妙に影響しているようです。(馬国は宗教の自由が憲法で保証されている)

総選挙においては、1999年以降クアラルンプール連邦特別区(KL)の南端の選挙区である Seputeh 選挙区に圧倒的票田を持っており、野党議員(DAP)でありながら、5期連続で当選を果たしている。この選挙区はKLの人口2百万人弱のうち最大の16%が居住する区域であり、土地面積も31キロ平米で市内では2番目に広い区域です。

2018年には、当時のマハティール首相の内閣でパーム油などの一次産業の担当大臣に就任しています。(この年は建国以来初めて複数党の連立政権が国政を掌握していた)

来歴

テレサはKL生まれの中国系マレーシア3世。彼女の家系は客家に属し、祖先は中国の広東省恵州出身。マレー語、英語、中国語を使いこなし、客家語と広東語の方言にも精通。カトリック教徒。

1990年にサインズ大学マレーシア(USM)でコミュニケーション学の学士号を取得し、後にマラヤ大学で哲学修士号を取得している。修士論文は、マレーシア統一マレー国民組織(UMNO)をテーマにしたもので、タイトルは「マハティール時代(1981年〜2001年)におけるUMNOの派閥主導」

中国語新聞『星洲日報』で毎週コラムを執筆。2004年には、当時の中国語新聞に執筆した記事をまとめた本を出版している。

政治家としての武勇伝

イスラムの国、マレーシアにおいて女性の活動家がどこまで発言権があって、公明正大を主張できるか知りたければ、テレサ・コックに関する新聞記事を参照すると良いでしょう。彼女は限界まで挑戦しつづけています。

イスラム寺院のスピーカー自粛事件

2008年、テレサ・コックは国内治安法(ISA)に基づき逮捕されている。マレー語新聞『Utusan Malaysia』は、彼女がセランゴール地区のあるモスクに「イスラム教の礼拝を行う際のスピーカーの使用を控えるよう助言」したと報じたからであるが、調査の結果、彼女は不起訴となり、同年中に釈放されている。 

同年9月27日、テレサの実家の敷地内に警告文付きの2本の火炎瓶が投げ込まれたが、幸い負傷者はいなかった。

扇動的発言

2014年5月、テレサは旧正月のビデオをYouTubeに投稿したことだけで、反政府の「扇動罪」に問われ、起訴されました。(動画に扇動的要素が含まれているとされた)テレサは、当時政府が取り組んでいた「全国規模の反政府運動捜査活動」において、最初に摘発された反主流派の一人だった。

警察への苦情

2022年のジョホール州選挙中、テレサが演説を30分延長させてほしいと警察に求めたが、当時のCOVID-19対策により選挙キャンペーンの演説が制限され、騒動となった。テレサは、当日の演説を遅らせて開始しており、8時30分から10時30分までの2時間枠を許可されるべきだと主張したが、警察はこれを拒否した。

彼女は「自分が所属する連立党派が政権を取れば、このような制限は課さない」と述べ、警察に「気をつけるよう警告」している。また「近隣で行われたマレーシア華人協会(MCA)のディナーが遅れた原因」と主張。「警察が演説の延長を拒否したのは私が野党だからだ」と非難した。

ハラル認証義務化に反対

2024年9月7日、テレサはマレーシア・イスラム開発局(Jakim)が、豚肉やアルコールを提供しない飲食店(全て)にハラル認証の義務化を提案したことに反対した。  この提案が小規模ビジネスにとっての無用な負担となり、消費者の自由を制限する可能性があると述べた。  

この反対意見は国内で激しい批判を招き、統一マレー国民組織(UMNO)の青年部長は、彼女を「年老いたニョニャ(中国系マレーシア人女性)」と揶揄し、政府に非ハラルのロゴを作って彼女の額に貼るべきだと皮肉を込めて発言。

与党連合系の政治家からも、「イスラム教に関する敏感な問題を煽っている」と非難された。テレサの発言に対して20件以上の警察報告が提出され、アンワル首相は、テレサの立場は所属政党の方針と異なると明言し、彼女の発言を「不要なもの」と述べている。

交通大臣で民主行動党(DAP)の書記長であるアンソニー・ローク、元首相府担当大臣ザイド・イブラヒム、元ペナン州副首席大臣ラマサミ・パラニサミなど、一部の政治家がテレサを擁護し、彼女は議員としての責任を果たし、非イスラム教徒の立場を代弁したものだと主張した。

その後、テレサは警察本部で事情聴取を受けたが、ここでは、DAP全国議長のリム・グアン・エンをはじめとする党指導者や支持者が同席し、記者会見でテレサへの全面的な支持を表明している。

パーム油産業に関する取り組み

テレサは、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国が、地域の主要産業であるパーム油を巡る外部からの脅威に対し、互いに支援しあうべきと主張した。また、COVID-19の流行中に、成人に対してパーム油を避け、オリーブ油などの代替品を使用するよう促す世界保健機関(WHO)のアドバイスにも反対している。

最近のオンライン記事から

DAPのテレサ・コック議員は、警察署建設用に確保されていた土地がコンドミニアム開発に転用された経緯について、クアラルンプール市庁(DBKL)と連邦領地土地鉱山局に説明を求めている。

下院議会での答弁によると、警察と内務省はこの売却に反対していましたが、DBKLと担当部局が民間企業の申請を承認した。コック氏は、政府に介入を要請し、警察署建設のために土地を返還するよう訴えている。開発によるインフラ負担の増大にも懸念を示している。

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