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Touch ‘n Go (TnG) はマレーシアのフィンテック文化の先駆けでした。1997年に高速料金所に導入され始めて以来、筆者もハイウエイの利用者としてTnGは常に携帯していましたが、MM2H 期間を終えて改めて調べてみると TnG ブランドはあらゆる方面の取引に利用される電子マネーに変貌していました。
TnGカードが普及して、高速の料金所で小銭入れからコインを取り出す手間が無くなったのは、1999年から自営業を立ち上げた筆者としては大変助りました。
それが、2000年には SmartTAGというカードより一回り大きいプラスチックの箱が出回るようになると、車の窓を開ける手間も無くなりました。
当時は、携帯電話も充分普及していましたので、2003年頃には、携帯電話のハンズフリーで客先や関係者と会話をしながら、車を動かしながら料金所を通過するという、ある種の未来映画のようなビジネス環境になっていました。
まだiphone が充分普及していない時代です。
2010年以降の TnG の発展について、今回調べ直してみると、去る2003年の高速料金のための TnG は既に、馬国の日常の消費活動に深く関係するフィンテック・ツールに変貌していました。
西暦 | 沿革 |
1997 | Touch ‘n Go Card 販売開始 (TnG) |
2000 | SmartTAG システム導入 |
2008 | 電車とバスで TnG 導入 |
2011 | 全ての高速道路で TnG 導入済 |
2011 | 路上駐車料金システムに TnG 導入 |
2017 | TnG eWallet 販売開始 |
2019 | 一部の料金所で TnG RFIDを導入 |
2020 | Fintec 市場で G+導入 |
2022 | NFC付の Enhanced TnG Card 導入 |
2022 | Shell のガソリンスタンドでのRFID導入 |
2023年10月の現況として、TnG にまつわる技術革新をまとめてご紹介します。
eWallet (イーウォレット)の登場
TnGは当初は単なるプリペイドカードでした。
20年の歳月の中で、このカードは高速料金だけでなく、駐車場や、バス、市電、モノレール等、さまざまな交通機関に使えるようになり、
そして、2017年の中国の Ant Finance (日本ではアリペイで有名)との共同開発による eWallet の導入が実現したのです。
TnG のeWallet は最早プリペイドカードではなく、iphone などの端末にインストールして使うアプリです。
日本で利用者が増えている各種の支払いアプリと同じですが、eWallet は日本より早く、中国との提携でこのフィンテックを馬国市場に導入しました。
こうなるとプラスチックの箱の Smart TAG は最早時代遅れとなり、新たに TnG RFID というステッカーを車に貼り付けるだけで、料金所は素通りするだけで、eWallet のアプリから自動的に料金が引き落とされる仕組みに変ったのです。
筆者のような昭和世代は、Toll の通過時に「幾ら料金をとられたのか」わからないので不安に思えますが、そのあたりは、全部システム的に可視化されていて、間違いがあれば払い戻しされる機能もきちんと準備されているそうです。
しかし、eWallet の本質は、高速料金という限られた取引場面をはるかに凌駕して、馬国のあらゆる支払いポイントで使え、そして、TnG としての残高管理も、何時でもアプリの操作でトップアップできるという時代になりました。
現在、Touch ‘n Go eWalletは、QRコードを使用して280,000以上の加盟店で支払いを行うことができます。また、RFIDまたはPay Directを使用して、料金所、路上駐車、e-hailing、カーシェアリングアプリ、タクシーの支払いを行うことができます。さらに、公共料金の支払い、携帯電話のプリペイドトップアップ、eコマースウェブサイトまたはアプリでの購入、フードデリバリーの注文、P2P送金、自動車保険の更新、ユニークな保険プランの購入、映画、バス、列車、航空券の購入も可能なのです。
TnG カードも NFC機能を搭載して健在
eWallet があっても、TnGカードは、カードとしての利便性を保持したまま健在です。
そして、カードもNFCとう非接触型通信規格を搭載して、件の eWallet をインストールしたスマホから残高をトップアップできるようになっています。(個々のカードはシステム登録が必要)
また、カードが煩わしい人は、TnG Charm と称する、キータッグ形式の小さな人形やロゴマークのタッグをカバンや衣服に付けて TnG カードとして活用できます。
非接触型通信規格(FNC)というのは、日本でいうスイカカードのように機械にカードをかざすだけで情報処理ができる技術仕様です。
利用者の加速度的な増大
以下は、eWallet、RFIDステッカーの利用者、そして、eWallet で支払いを受ける店舗の数の推移です。
西暦 | 歴月 | eWallet User | RFID User | eWallet 店舗 |
Year | Month | x1000 user | x 1000 user | |
2019 | 6 | 4,000 | 200 | |
2019 | 7 | 4,300 | 50,000 | |
2019 | 10 | 100,000 | ||
2020 | 1 | 7,000 | 120,000 | |
2020 | 2 | 9,000 | 1,200 | 135,000 |
2020 | 4 | 10,000 | ||
2021 | 1 | 15,000 | 1,500 | 180,000 |
2023年11月からは、eWallet にトップアップする電子マネーの運用の自由度が広がります。
11月1日より、Touch ‘n Go (TnG) eWallet(アプリ)へクレジットカードから手動チャージされるすべての残高の譲渡に関する自由度が拡大します。(月額RM1,000以上のチャージ金額には自動的に1%の手数料がかかる)
これからは、eWallet の残高で他の人への直接支払いが可能になるとのことです。
マレーシア国内の「寄付」の運用に貢献
COVID-19パンデミックと2020年の行動制限令の発令中に、TnGはTnG eWalletを通じて「寄付」ができるチャリティ募金プログラムを開始しました。
eWallet募金プログラムに参加した主なチャリティ団体には、慈済財団、メイク・ア・ウィッシュ財団、マレーシア赤新月社、ロータリークラブ、マレーシアエイズ評議会などがあります。
2020年5月1日現在、Touch ‘n Go eWalletはマレーシアの22の非政府組織にRM280,000以上(約US$69,000)の寄付を実現。2020年12月31日までの最新寄付取引額はRM5,432,319、合計取引数は215,314件です。
寄付を受け取っているチャリティ団体は、多数発表されています。
これは、Touch n’ Goの企業活動としての、大変な貢献です。
不正使用などのリスク
良いことばかりとは言えません。リスクもあります。
Touch ‘n Go に関する不祥事や事件は、主に以下の2つです。
1. 不正アクセスによるユーザー情報流出
2019年7月、Touch ‘n Go のシステムが不正アクセスを受け、約200万人のユーザーの個人情報が流出したことが明らかになりました。流出した情報には、ユーザー名、パスワード、メールアドレス、電話番号、生年月日などが含まれていました。
Touch ‘n Go は、この不正アクセスは外部からの攻撃によるものであり、社内のシステムに問題はなかったと発表しました。また、ユーザーに対してパスワードの変更を呼びかけ、セキュリティ対策を強化しました。
2. 不正取引によるユーザー被害
2022年1月、Touch ‘n Go のアプリから不正にユーザーのアカウントにアクセスし、現金を盗み取る事件が発生しました。この事件で、被害を受けたユーザーは少なくとも100人以上に上ったとされています。
Touch ‘n Go は、この事件はユーザーのパスワードの管理が不十分だったことが原因であり、社内のシステムには問題がなかったと発表しました。また、ユーザーに対してパスワードの管理を徹底するよう呼びかけました。
このほかにも、Touch ‘n Go のアプリの不具合や、システムの改修によるサービスの停止など、さまざまな問題が報道されています。
まとめ
TnG は今後も馬国内の取引ツールとして eWallet を介してサポート範囲を拡大していくと予想できます。
将来的には、ブロックチェーンのような隠し的技術などと連携する時代も来るのだろうとは思いますが、
技術革新はつぶさにネットに掲載される情報を注視してアップデートされていきますので、筆者も時代遅れにならないよう勉強して、分かったことはお知らせするようにします。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
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