この記事は本編「がちで起業してみた」の詳細記事(ぶら下がり記事)です。
採算が悪い自営業の特徴
独身で起業を計画している皆さんは別として、起業家には家族がいます。家業は自分だけのものではなく家族のものであり、家族が安定した生活を続けているから家業(自営業)が成り立つのです。
もし自営業主であるあなたの会社が一時的に不採算で、家計に入れられる現金が不足する事態があっても、あなたはそれを「一過性」として頭の中で解決できます。数ヶ月の生活費ぐらいは「何とかなる」という意識でいます。
しかし、あなたの家族はそういう整理はできません。毎月家に入ってくる現金が急に半分になったり、ある月は全く現金が入ってこないといった事態に遭遇すると精神的なショック状態に陥ります。あなたが「大丈夫だから心配するな」と口で言っても効果はありません。
かくして、せっかく苦労して立ち上げた事業も、文字通り「足元をすくわれる」事態に陥ります。
そのことの解決法をお話しします。(解決法は「がちで起業」の本編には書いていません)
脱サラ家族が陥る鬱(うつ)
筆者の実体験です。
事業が不調で家に十分な収入を持ち込めなかった時期がありました。「明日から食うものが無い」といった究極の状況には陥りませんでしたが、先行きがかなり不安になった時期もあったのです。大型商談で大失敗した2003年の出来事です。
筆者自身は一時的な生活費の目減りについては悲観的に思わず、常に前向きに生活していました。ところが、筆者の精神状態とは裏腹に家族の様子がおかしくなってきたのです。
家内は、朝からベットの上で白壁に向かってじっとしていることが多くなりました。何かに取り憑かれたような状態です。
ある日の夜、仕事から帰宅すると、家内が朝と同じように部屋の壁に向かってじっとしていました。食事の用意をしている様子もありません。
「これは大変だ」
ということで、その日は夜遅くまでの家族会議になりました。子供はまだ高校生でしたから会話には加わりません。家内と筆者の膝ずめの話になりました。家内の憂鬱の原因は毎月の生活費が安定しないことによる先行き不安でした。
事業はどうなるのか?収入はどうなるのか?子供の学費は?将来は?
様々なことで家内は私からの即答を求めます。私が答えられなくなると家内は塞ぎ込んでしまうのです。最悪の事態になることを恐れたのです。
その日は、不満の全てを声に出したので家内は落ち着きを取り戻しました。しかし、このように家族が精神的に不安定になるようでは、心配で仕事になりません。起業当初は考えてもみませんでしたが、このことは筆者の自営業体験の中でも最も重い課題になりました。
意外に単純な解決策
さて、あれこれ重い悩んでいたのですが、最終的にたどりついた解決方法がありました。それは
- 毎月「定額」が家族の口座に入るようにすること
- 定額の家族口座への入金は借金をしてでも必ず実行すること
これだけです。
毎月の金額は円換算で30万円前後としました。ここから光熱費やコンドミニアムの賃貸も支払う計算です。
これを家族に約束して数ヶ月続けただけで、家族はまた普段通りの生活に戻れたのです。
もちろん筆者の方は大変です。何しろ会社の収入が悪い月は借金をしてでも定額の現金を調達しなければなりません。自営業が定額で毎月30万円調達するのは、言うほど簡単ではない。
それがいかに大変でも家族が崩れてしまうよりはましです。そしてこの方法は筆者の自営業運営にもメリットのある運用方法でした。
月30万円(当時は1万リンギット)も稼げないなら自営業などはしないほうが良い。というのはもっともですが、ここでご理解いただきたいことは、自営業をする場合、精神的に折れてしまうのは、自分ではなく家族が先なのだと言う原則です。
これは自営業者向けのノウハウ本には載っていない注意点です。