【馬国】過去の事実が政財界に激震を起こす2024年

馬国

この記事は日本で知られていない馬国のトップニュース情報の詳細記事です。

日本では2023年末から2024年の正月にかけて自民党派閥のパーティー券の収益キックバックの不正運用や、大物芸人の性加害疑惑が大きく報道されていますが、

馬国とシンガポール(以下「星港」)においても、大物代議士や大富豪の汚職疑惑が相次いで全国紙のメインページを飾っています。

馬国に関する限り、政治家の汚職問題はひっきりなしに浮上して来ます、2018年には残念なことに一国の首相が断罪される事案まで出てしまいました。

この国に関する腐敗防止を困難にしているのは、単なる不正・違法行為だけでなく、政治家や有力者同士の「闘争手段」としての冤罪事案が混在していることです。

最近では青年実業家である Sayed Saddiq 氏が政治活動資金を不正使用したという嫌疑や、元財務大臣の不正疑惑などが社会問題になっていて、本当に不正だったのかよく解らないままの事例があります。

他国を大きく引き離して、世界でも「最も腐敗の少ない国のひとつ」として評価されてきているのが星港(シンガポール)ですが、今週になって、この星港の運輸大臣が大富豪の賄賂を受け取っていたことが明るみになり、同国の政済界に激震が走っています。

馬国では1月18日に各紙が揃ってマハティール元首相の子孫の不正取引疑惑を報じました。マハティール氏の長男 Mirzan Mahathir 氏(実業家)の不正疑惑です。

曰く、馬国の反腐敗委員会(MACC)が、複数の政治家や富豪の(過去の)不正取引を調査する目的で、Mirzan Mahathir氏が国内外に所有する「全資産の開示」を要請したということです。

相手が相手です。汚職の事実が「あやふや」なまま開示要請を出すことはしないはずです。つまり、今後「マハティール元首相の親族に関わる疑獄問題」が浮上する可能性を示唆しています。

折しも、マハティール氏が数日前に「インド系マレーシア人のマレーシア国への忠誠心は期待できない」といった発言をしたことで、政財界から相次いで強い非難を受けています。この機に反マハティール派の圧力が一気に馬国の「長老潰し」に動くかもしれません。

何が起きているのか調べてみました。

腐敗の無い国「シンガポール」で大型汚職事件

星港の現役運輸大臣であるインド系シンガポール人のSubramaniam Iswaran氏(61歳)は、去る2023年7月に星港の不動産王として知られるOng Beng Seng氏(王明星)の利害に関与して合計約29万ドルのキックバックを受け取ったという疑いで逮捕され、同国の政界に激震が走りました。

同氏は保釈されて減給処分を受けていたのですが、翌2024年1月18日、腐敗防止調査局(CPIB)の調査に基づき、一審で有罪判断が下りました。シンガポールにおいては歴史的かつ異例と言える大物政治家の汚職事件です。

Iswaran氏は罪状認否においてこれを否認したうえで、「今は自らの潔白の証明に努める」と表明。もし有罪で結審すれば、最大10万S$の罰金ないしは禁固7年を宣告されます。

同氏は即日運輸大臣を辞任、所属するPAP党からも辞任しています。

Star Online の記事

罪状にはIswaran氏に提供されたフットボール試合やミュージカルのチケット、王明星氏の自家用飛行機への招待、星港で開催されたF1グランプリのチケット等、総額で約17万S$の報酬が含まれていました。金銭的な賄賂を受け取ったような内容も報じられています。

Iswaran大臣はF1グランプリの運用委員会の会長であり、王明星氏は同グランプリでのレースの興行権を持っています。

去る7月の汚職調査時に王明星氏も逮捕された経緯がありますが、同氏は訴追されておらず、今回の大臣への有罪宣告についても何ら声明を出していないそうです。

Iswaran氏の弁護団の動きもあり、控訴審は3月に予定されているようです。

しかし、全てを合算しても百万ドルまでの汚職ではありません。後述する馬国要人の不正取引とは桁(けた)が違うようです。不正に厳しい星港らしい事象です。

マハティール元首相の親族に不正取引の疑惑

2024年は「60歳代の有名人」にとって受難の年になりそうです。

NSTで報道されてしまったMirzan Mahathir氏は筆者と同年代。

66歳のMirzan Mahathir氏(マハティール元首相の長男)が政府の諮問機関から国内外の資産情報の開示を求められています。全ての大手報道機関が先を争って報じました。

これは「司法」からの命令でなく、馬国の反腐敗委員会(MACC)の「協力要請」だそうです。

問題となるのは1990年頃の取引実績だそうで、もともとは世界的な「暴露資料」として知られる「パンドラ文章」が発端。

MACCは既に「パンドラ」がらみの要人10人を対象に資産情報の開示を求めており、Mirzan Mahathir氏はそのひとり。調査の対象として、同氏が過去に運用した企業買収が焦点になりそうです。

MACCの匿名情報では、1990年代にMirzan Mahathir氏の所有する会社が、当時の「民営化」政策の一環で売りにだされた某企業(民営化企業)を買収しており、同じ年に別の企業(馬国政府が所有する所謂GLC企業)に民営化企業を売り渡したことで、推定数億RMの売却益を得ていた事実があるようです。

一国の政府が行政の一部を企業化した上で民営化する場合、事実上は民間会社への企業の売却を意味しますから、よほど業績の良い内容でない限り高額では売れません。とんでもない金額で民営会社に買収される場合が多いのだと思います。ところが、民営会社を政府が買い取るような場合は、逆に法外な売却額になる場合が有ります。政府側の買収金額の設定は、巨額の政府予算のごく一部の調整ですから、ちょっとした操作で実際の売却額の何倍にもなってしまいます。問題は、政府の誰がどんな目的で民間会社を買収したのか?という点にあります。

Mirzan Mahathir氏と政府側が不正に企業売買を運用したのであれば、行政の民営化施策を利用した数十億円規模の詐欺行為ということになります。つまり、マハティール元首相の関与も含めて大規模な汚職捜査に繋がる可能性がるわけです。

しかし、どの報道局も核心には触れず、Mirzan Mahathir氏に要請が出た「30日以内の資産開示」だけを報じています。名誉棄損を恐れているわけです。

「パンドラ文章」と民営化企業の運用利益がどのように関係しているかは不明ですが、MACCがマハティール家族の長男に情報公開を要請した事実を「公開」した裏には、かなり明確な汚職の事実があるとみられているのでしょう。

今回の要請内容は、「国内と海外の両方で所有している資産の開示で、固定資産および現金を含む流動資産の全ての開示」です。マハティール家がどのように対応していくのか馬国全体が注目しています。

マハティール元首相には7人の子供がいます。「パンドラ文章」を根拠に、家族全員の過去に探査が及ぶようなことになると、歴史的な大事件に発展する事案です。

汚職疑惑の先行き

世界の報道内容では、マハティール氏はどちらかというと清廉潔白な政治家で、One Malaysia Sdn Bhd の大規模汚職で投獄されたナジブ元首相や、アンワル首相が(過去に投獄された事例から)悪役メンバーのように見えていますが、

筆者が1990年代中盤から2000年代に馬国でさまざまな企業の下請け事業をしていた時点では、ドクターMの名をもつマハティール首相が大型プロジェクトなどで利権を得ているといった噂はよく耳にしました。

しかし、これは噂でしかありません。そして、実際のところは、首相でなく、その下の人間が首相の名前を使って利権を取っていたことも考えられます。残念ながら馬国にはそういう文化が有りました。

またMirzan Mahathir氏が馬国内の準大手の建設会社などを所有していて、国内外のプロジェクトを優先的に受注して利益を上げているといった噂も何度か耳にしました。

実際にマハティール家による不正取引が報道を通して明るみに出たことは無いようであり、同氏は全く汚職とは無関係の政治家として高い評価を受けています。汚職疑惑について厳しく記載を持つWikipediaでもマハティール氏の汚職疑惑についての記事は有りません。

但し、「敵が多い」ことは否めません。首相を引退した今でもマハティール氏の一挙一動は、批判や排斥の対象になりえます。

今回の星港での運輸大事の逮捕と一審での有罪勧告のように、「白」だったはずの政治家が突然「黒」判定に陥るという時代です。

しんがぽーるのメディアは Iswaranの一審の判決を非常に大きく報じている。この記事は c n a

過去の不正疑惑の解明も必要なのでしょうが、過去に拘って目の前の国政がゆらぐような炎上騒ぎにならないことを祈りたいものです。

参考資料

パンドラ文章 (Pandora Papers)

世界のジャーナリストが巨悪を暴く行動を起こしたことを記念するロゴマーク。出典はやはり Wikipedia です。

パンドラ文書は、1190万件の漏洩文書と2.9テラバイトのデータからなるもので、国際調査報道ジャーナリストコンソーシアム(ICIJ)が2021年10月3日から公開されました。

この情報は、現職大統領、元大統領、首相、国家元首など35名の世界各国リーダー、そして100人以上の億万長者、著名人、ビジネスリーダーの秘密のオフショア口座を暴露しましたものです。

ICIJの報道機関は、この文書漏洩を「これまでで最も広範な金融秘密暴露」と述べ、パナマ、スイス、アラブ首長国連邦など14の金融サービス会社からの文書、画像、電子メール、スプレッドシートを含んでいるとしました。

漏洩の規模は、2016年に1150万件の機密文書と2.6テラバイトのデータで公開された「パナマ文書」を上回りました。但し、ICIJは、文書の情報源を明らかにしていません。

ICIJは、オフショア(お金が稼がれた国以外)に保持されている全世界のお金の総額は、5.6兆ドルから32兆ドルの間であると推定しています。

1ドル145円で換算すると、812兆円~4.64京円です。この金額は、日本の2023年度の国家予算(約114兆円)の約7倍~41倍に相当します。

出典 Wikipedia “Pandora Papers”

MACC(マレーシア反腐敗委員会)

マレーシア反腐敗委員会 (Malaysian Anti-Corruption Commission略称 MACC または SPRM) は、マレーシアにおける公的および民間部門の腐敗の調査と起訴を担う政府機関。香港の汚職調査独立委員会 (ICAC) やオーストラリアのニューサウスウェールズ汚職調査独立委員会 (ICAC) など、トップレベルの汚職対策機関をモデルとしている。

MACC の公平性さを確保し、市民の権利を守るために、5 つの独立機関が MACC を監視している。これらの機関は、他の政府機関とは独立して運営されており、中立的な立場から監視を行っている。5 つの独立機関の日本語訳を試みると、汚職諮問委員会、特別汚職委員会、苦情委員会、活動審査委員会、汚職相談及び防止委員会、といった表現となる。

どんな機関にも必ずロゴがあります。これがMACCの怖いロゴ。SPRMと言うのはマレー語のからの略号。出典は 下記Wikipedia

出典:Wikipedia “Malaysian Anti-Corruption Commission”

このMACCという略語は、馬国のオンライン報道でおなじみの略語です。見ない日は殆どありません。

CPIB (シンガポールの腐敗防止調査局)

腐敗防止調査局 (CPIB) は、シンガポール政府の下で運営される独立機関で、あらゆる重大または複雑な不正行為や腐敗行為の調査・起訴を担っている。CPIB は、シンガポールの公的および民間部門におけるあらゆる形態の腐敗行為を調査する権限を持ち、その過程で、逮捕権限を含むあらゆる成文法に基づく犯罪も調査することができる。

以前はシンガポール警察隊 (SPF) 内の汚職対策班 (ACB) として知られていた CPIB は、1952 年に検事総長の監督下にある独立機関となった。

CPIB は、シンガポールを世界で最も腐敗の少ない国のひとつ、そして汚職認識指数 (CPI) などの指標に基づいてアジアで最も透明性の高い国に変革させたと評価されている。

出典: Wikipedia “Corrupt Practices Investigation Bureau”

Wikipediaに掲載されているロゴマークは転載や引用が禁止されていましたので、ここでは紹介できません。ロゴマークの管理まで厳しく統制しているというのは、ある意味では立派です。

Subramaniam Iswaran(元運輸大臣)

Subramaniam Iswaran(スブラマニアン・イスワラン、1962年生まれ、通称:S. Iswaran)は、2021年から2024年までシンガポールの運輸大臣、2018年から2024年まで貿易関係担当大臣を務めたインド系シンガポール人の政治家。人民行動党(PAP)の元党員であり、2001年から2024年までウェストコースト選挙区(ウェストコーストGRC)の選出議員(MP)を務めた。

Isuwaran  Photo by Wikipedia ”S. Iswaran”

政治の世界に入る前は、テマセク・ホールディングスや貿易産業省など、公的部門と民間部門の両方で様々な組織に従事。1997年の総選挙でPAPの4人組チームの一員として立候補し、70.14%の票を獲得して政界デビューを果たした。 2011年から2015年まで首相府大臣、2015年から2018年まで貿易産業省(産業部門)大臣、2018年から2021年まで通信情報大臣を務めました。今回の逮捕劇までは運輸大臣。

出典:Wikipedia ”S. Iswaran”

Ong Beng Seng(王明星)

c n a のオンライン報道から 右が王明星、左がIswaran元大臣、中央はF1の関係者

オン・ベン・セン(王明星、1946年1月生まれ)は、シンガポールを拠点とするマレーシア人の億万長者・実業家。シンガポールを拠点とする組織ホテル・プロパティーズの創設者。さまざまなビジネスの株主。

ロンドンのボンドストリートに拠点を置く数社を含め、多くの企業を支配しており、その投資額は数千万ドルに上る。

世界中で多くのホテルを購入・建設してきた実績のあるホテル業者。同時に、自動車レースのプロモーターであるシンガポールGPの会長として、F1レースをシンガポールに持ち込んだ人物。2008年には初のシンガポールグランプリが開催され、初のF1ナイトレースも行われた。

2022年1月、オンの会社とシンガポールの観光局は、2028年までの7年間、シンガポールグランプリのホスティング権を確保している。

2023年7月14日、シンガポールの運輸大臣S. Iswaran氏との汚職疑惑事件に関連して、汚職対策捜査局(CPIB)から逮捕状が出され、逮捕された。

オンのビジネスアプローチは、「家賃や不動産が安いときに買い、高くなったら売る」というもの。フォーブスは、2022年9月時点でオンとその妻クリスティーナ・オンの純資産を17億5000万ドルと推定しており、シンガポールで24番目に裕福な人物とされている。

出典:Wikipedia “Ong Beng Seng

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

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